3-7 城塞都市フォルトワース
~前回までのあらすじ~
デリーはドモンにフォルトワースの遺跡探索の仕事に協力してくれる様に頼む。
野盗に持ち物を殆ど取られてしまった彼女は、纏まったお金を得る為に探索の
仕事に参加しようとしていたのだ。
ナナリー達はそれに同意し、彼女を旅の同行者として雇い入れると共に進路を
フォルトワースへ向けた。
ナナリー達がナッシュを出発して数日。
一行はようやく城塞都市フォルトワースへ到着した。
フォルトワース。
大陸の南部に位置する大きな城塞都市である。
主要な交通路からは外れた位置にあるが、中心にある遺跡から採掘されるアンバー
結晶により、高い経済力を持ち発展している。
独自の教義を掲げたリコリス教団と名乗る組織が長年統治している都市であり、
教団独自の騎士団であるテンプルナイトを組織し、またギガンティアも多数保持し
ている事から高い軍事力を誇っている。
その為、ギルドナイトの力を借りずに完全な自治防衛を行っている。
教団内部の情報は秘匿される事が多く周辺の都市からの懸念の声もあるが、教主の
高い政治力により長年に渡り安定した統治を行っていると言われている。
都市の中心部にある城とその周辺は教団関係者以外は立ち入ることが出来ないが、
城下町の大半は特に制限はなく交易などで栄えている。
「わあ! 大きな城壁ですね」
キャリアーの窓から見えた巨大な城壁を見て、ナナリーは歓声を上げる。
その隣でレインとデリーは近づいてくる街並みを一緒に眺めていた。
「あの城壁は南の大陸でも最も高いらしい。
中心部には遺跡の入り口と教団の本部になっている城がある」
「あの城壁の向こうが中心部なんですね。
そういえば、あの大きな門に向かって進んでいないみたいですが」
「町の中心部に入れるのは関係者だけだ。
俺達の様な外部の人間が行くのは外周部の町だな」
レインが差した方向に外周部の城壁と城下町が見える。
「外周部は他の町と大して変わらないはずだ。
違うのはテンプルナイトの管轄下にあると言う所だろうな」
「テンプルナイト?」
不思議そうに尋ねるナナリー。
二人の会話にデリーが割って入った。
「教団の誇る騎士団がテンプルナイトですよ。
そして、その頂点に立つ教主はエル・ギガンティアを持っているとか」
「エル・ギガンティアですか」
「リコリス教団の名前は、教主が持つ機体の名前、リコリスから来ている。
昔、勇者が地から湧き出た悪魔を討伐した時に使ったのがリコリスであり、
その勇者の力を受け継ぐために作られたのがこの教団の始まりらしい。
だから教主は代々エル・ギガンティアを受け継いでいる…と言う話だ」
「そうなんですね。
教団と言うと神様を崇める団体だと思ったんですが…
なんというか少し毛色が違いますね」
「勇者の偉業を称えるの行為がそのまま教義になったのだろうな。
まあ、悪魔と言われてもな。
本当にあった事なのかは眉唾だがな」
教団の伝説について疑問を投げかけるレインにデリーはツッコミを入れる。
「レインさんは夢がないですね~
そんな事、テンプルナイトの前で言ったらダメですよ」
「大丈夫だ。無駄に喧嘩を売るような事はしない」
三人の会話が進む内に、キャリアーはフォルトワース外周部に設置されている
ガレージに到着した。
ドモンは操縦桿から手を離すと一息付く。
「ふう、やっと到着だ。皆お疲れさん」
「運転、お疲れ様でした」
ナナリーはシートに座ってるドモンに駆け寄り、いたわりの声を掛ける。
隣に座ってフォローをしていたライラも両手を上げて伸びをして体をほぐす。
「毎度だけど、キャリアーに乗ってるだけでも結構疲れるもんだな。
おやじ、今回も宿は取るのか?」
「勿論だ。町に居る時はぐっすり寝たいからな。
ライラ、すまんがナナリーと一緒に宿を取って来てくれないか。
俺らはガレージの契約をした後、役場に行って探索の件を確認してくる」
ドモンの話を聞いていたデリーが不思議そうに尋ねる。
「今日役場に行くんですか?
ドモンさんもお疲れのようですし、明日でもいいんじゃないですか?」
「探索に参加したいって言ったのはあんたじゃないか。
いつの間にか締め切られてました、とかなってても知らんぞ」
物事を後回しにしようとしたデリーにドモンは万が一の話を持ち出す。
こういう所が細かいのは、組織を率いて取引をして来た人間だからなのだろう。
デリーは指摘されると不安になり意見を翻す。
「あ… はい、そうですね。
すぐ行きましょう! お供します」
皆、それぞれの準備を始める。
ドモンがカレージの手続きを終えると、ナナリーとライラは町の繁華街に、
残りの三人は、役場へ探索の事を確認しに出かけていく。
同時刻。
町の中心地にあるフォルトワース城。
そのだだっ広い玉座の間。
厄災をも乗り越えた城の玉座には、教主フィオリア・ミスルトゥの姿があった。
彼女はゆっくりと玉座から立ち上がると窓へ向かって歩いて行く。
(凄まじいエネルギーの波動を感じる。
これは、一体何だ…)




