第三章 フォルトワースの悪魔 3-6 儲け話
~前回までのあらすじ~
王国軍特務隊の攻撃を退けたナナリー達。
彼女達と合流したデリーは、自分が原因で王国軍と戦闘になった事を詫びる。
ナナリー達は気にする様子も無く、彼女を温かく迎え入れる。
一方、作戦に失敗したケアンズ達王国軍は、意気消沈しながらも次の作戦を練る。
彼らは本隊と連絡を取り援軍を待ち、しばらくは追跡に専念する事を決めた。
王国軍特務隊の攻撃を退け、旅を続けるナナリー達。
彼女達は次の経由地であるナッシュの町へ到着していた。
食料などの物資を調達し、皆でキャリアーへ積み込んでいた時だった。
「ドモンさん、少しお話があるのですが…」
カトレア・デリーが遠慮気味にドモンに話しかける。
真面目な話と察したドモンは荷運びをレイン達に任せ、彼女と共に操縦席へ移る。
「何だい、改まって」
「貴方達の力を借りたいんです。
頼ってばかりで申し訳ないんですけど…」
縁虚気味に話すデリーに対し、ドモンはほほ笑んで言葉を返す。
「今更遠慮なんかするな。
まあ、内容を聞かない事には何とも言えんがな」
ドモンの優しい態度に安心したのか、デリーは話を続ける。
「あの、一緒にフォルトワースへ行って、探索の仕事に付き合ってくれませんか」
彼女が挙げた都市名を聞いて、ドモンは意外そうな顔をした。
「フォルトワースって、あの城塞都市かい?
リコリス教とかいう宗教組織が治めてるって言う」
「そうです。そのフォルトワースです!
ここからだとそんなに遠くないし、丁度良いかなと。
あの都市は、中心に巨大遺跡があるんです」
「遺跡からアンバー結晶を回収する仕事があるとは聞いたが。
それに参加したいのかい」
「いえ、それとは別で、遺跡の未探査領域を調査する仕事があるそうです」
「調査? あの都市は昔からあるのだろう。
遺跡の探索はまだ終わっていないのか」
「教団は結晶がある上層部を探索しただけで、放置している区画が沢山あるとか。
地中に作られた遺跡としてはあまりにも広すぎて、奥の階層はアストラルゲート
で繋がっているんじゃないかって噂されてます」
「捻じ曲げた空間に繋がっていると言われる、あのアストラルゲートか…
本当にあるのか? 与太話かと思ってたよ」
「まあ、その話が本当かは知らないんですが…
ともかく、教団が放置していた区域を再調査する為に外部の協力者を募集してい
ると言う話を聞いたんです。
危険もありますが、回収した物は教団と分ける事になるらしいので、上手く行け
ば結構稼げるのではないかと」
「何だ、あんたお金に困ってるのか?」
不意に儲け話が出て来たので、ドモンは不審に思い、デリーに探りを入れる。
彼女は少し戸惑いながらも話を続ける。
「それが…
例の人さらいに捕まった時に、持ち物殆ど取られちゃって…
隙を見てワーカーだけ取り戻して逃げて来たんで、キャリアーとか乗せてた機材
とか、全部無くしちゃったんです…」
しょんぼりしながら話すデリー。
ドモンは彼女の不幸に同情しつつも、そんな状況でも変わりなく過ごしていた彼女
に少し感心した。
「そ、そうか… それは災難だったな」
「商売道具も全部なくしちゃったので、ここは一発稼ぐしかないと。
それで、皆さんに一緒に探査に参加してもらえればと…
今の皆さんならガーディアンくらいは楽勝でしょうし。
私は回収品の運搬とか手伝いますので、分け前を頂ければ助かります」
デリーは期待の眼差しをドモンに向ける。
ドモンは少し考えた後答えた。
「なるほど、事情は分かった。
まあ、資産の大半を失くしたあんたには同情するし、やってもいいが…
とりあず皆の話を聞いてからな。
戦うのは俺らじゃないし、反対する者がいたらこの話は無しにしてくれ」
「ありがとうございます!
後で皆さんを集めて聞いてもらいましょう」
ドモンの言葉を聞いて、デリーは嬉しそうに笑う。
そんな彼女を見つめて、ドモンはふと何かを思いついたように声を掛けた。
「そうだ、その探索をした後、あんたはどうするつもりなんだ?」
不意に先の事を聞かれた彼女は、首を横に振って答えた。
「まだ何も決めていません。
とりあえず中古の小さいキャリアーが手に入れば移動はなんとかなるかな
と思っていますけど」
「なら、それなりの金額が貯まるまで俺らに同行したらどうだ。
雑務扱いでよければ給金も出すよ。
まずは、シャールへ行ってイーステンに戻るまでの間、でどうだ?
衣食住完備で心強い護衛もいる。なかなかの条件だろう?」
ドモンの提示した内容にデリーは目を輝かせる。
「本当ですか!
すごく助かりますけど… いいんですか?」
「俺らもな、四人だと運転やら警戒やらで結構忙しいんだ。
もう一人くらい居てくれると休める時間が増えて、皆にも余裕が出来るだろ」
「なら是非お願いします!
いやあ、捨てる神あれば拾う神ありですねぇ」
嬉しそうに笑うデリー。
その時、後ろの入り口からライラが顔を覗かせた。
「おやじ、荷物の積み込み終わったぜ」
「お、丁度良かった。ライラ、皆を集めてくれ」
それぞれの仕事が終わったナナリー達はキャリアーの控室へ集められた。
デリーは皆にドモンに話した件と同じ説明をし、皆に協力を求めた。
「あたしは構わないよ。
ていうかむしろやってみたいな。
仕事も覚えられるし、戦闘になったら、いい訓練にもなるしな」
ライラはデリーの提案に乗り気だった。
スカーレットセージを乗りこなそうとしている彼女としては、良い実戦の
機会になると感じたのだろう。
「私はデリーさんを助けてあげたいです。
でも、私にできる事は特には無いんですけど…」
ナナリーも提案には協力的だった。
だが、立場的に出来る事がない為か少し寂しそうに答えると、レインに話を
振った。
「レインさんはどう思います?」
レインはいつも通り素っ気なく答える。
「依頼主が行くなら付いて行くだけだな。異論はない」
特に反対する者もおらず、デリーはまたもや目を潤ませて感謝する。
「みなさん… ありがとうございます!」
「じゃあ、決まりだな。
フォルトワースへ行くのも初めてだし、観光も兼ねて向かうとしよう。
それとだ、デリーさんはイーステンに戻るまで、同行する事になった。
人手が増えるから、皆少し楽が出来るぞ」
「しばらくご一緒させてもらいます!
雑用に料理にがんばりますので、改めてよろしくお願いします!」
敬礼をしながらデリーは元気に挨拶をする。
旅に知り合いが増えて嬉しいのか、ナナリーはデリーに駆け寄り笑顔で手を握る。
デリーも嬉しそうにナナリーの手を両手で握り返した。
同行者が増えて賑やかになったナナリー達。
次の日の朝、彼らはフォルトワースへ進路を変え、ナッシュの町を後にした。




