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第三章 フォルトワースの悪魔  3-3 初陣

~前回のあらすじ~

ライラはスカーレットセージを使いこなす為、レインと模擬戦を行っていた。

そんな彼らにケアンズ率いる特務隊のキャリアーが迫る。

緊迫する中、交わされた通信の声がドモンであると気づいたデリーの発言から、

ケアンズは相手が作戦目標である事に気づき、攻撃を開始する。

王国軍特務隊による攻撃が始まった。


キャリアー001のコンテナが開き、ギガンティアが姿を現す。

ケアンズの乗る、ベイラム-5号機。

同時にナナリー達のキャリアーの上に光の柱が伸び、フリージアが出現した。


「敵が来るぞ。ハミルトン、準備はいいか」


「大丈夫です。行けます」


二機はキャリアーから飛び降りる。

ケアンズ機は剣と盾を、ハミルトン機はハンドガンと盾を装備していた。


フリージアが翼を広げ空中へ飛び立つとこちらへ向かって来た。

その向こうで、ナナリー達が乗るキャリアーは全速力で離れていく。


「目標はキャリアーに居るはずだ。

 俺があの鳥野郎を抑える。お前はキャリアーを追え」


「了解です」


ケアンズとハミルトンは二手に分かれる。

ハミルトンは離れながらもフリージアへ銃を向ける。

それを察知したのか、フリージアは上下に動き、狙いを定めさせない。


「くっ、飛行機能があるとは聞いていたが… とんでもない機体だ」


ハミルトンは援護射撃をするつもりだったのだが、全くままならない。

ケアンズはフリージアが向かってくるのを見て停止し盾を構える。


「さあ、きやがれ鳥野郎!」


だが、フリージアは高度を少し上げると、後退を始めたケアンズ達のキャリアーの

方へ進路を取る。

フリージアが予想を上回る速度で距離を詰めて来た為、特務隊のキャリアーはまだ

安全圏に離脱出来ないでいた。


「こいつ、直接キャリアーを狙うつもりか!」


ケアンズは焦ってブーストを吹かし、フリージアを追う。

ハミルトンはフリージアがキャリアーへ向かって行くのを見て焦る。


「隊長!」


「慌てるな! お前は目標を追え」


「しかし…」


「敵は複数いないはずだ。今がチャンスなんだぞ」


「了解!」


ハミルトンは振り返り、ナナリー達の乗るキャリアーを追おうとした。

だが、その目の先には信じられない物が立っていた。


真紅の装甲を持つ巨人。

スカーレットセージだった。

ハミルトンはいきなり出現した敵機に驚いたが、冷静にケアンズへ通信を送る。


「隊長、新手です。 紅い色の見た事も無い機体が!」 


「何だと」


ケアンズが後方のカメラを望遠して確認する。

確かに見慣れぬ機体が一機、ハミルトン機の行方を塞いでいた。


スカーレットセージの操縦席に座るライラは大きく息を吸い込んで

顔を両手でペチペチと叩いて気合を入れる。


「いきなり実戦か。緊張するな… 

 けど、ここは絶対通さないからな」


ケアンズは状況を確認しながらハミルトンへ指示を出す。


「ハミルトン、作戦は変わらん。不明機を突破してキャリアーを確保しろ」


「了解!」


ハミルトン機はスカーレットセージと距離を詰めながら、いきなり現れた機体を

観察する。


(しかし、仰々しい見た目だ。

 こいつ再生品じゃないのか。

 まさか、こいつもエル・ギガンティアなのか…)


あれこれ考えた所で、何も変わりはしない。

ハミルトンは覚悟を決めスカーレットセージに向かって行く。


「参る!」


ハミルトン機がハンドガンを打ち込む。

それと同時にスカーレットセージは左のシールドを展開する。

ガラスの様な盾が瞬時に形成され、弾丸を弾く。


「何…」


ハミルトンは続けてハンドガンを撃ち込むが、盾はビクともしない。

スカーレットセージは盾を構えたままハミルトン機の様子を伺う。


「盾を作り出す機能があるのか! 傷一つつかないなんて」


相手の機体の性能に驚くハミルトン。

対して、ライラは汗をかきながら相手の動きを見ていた。


「いきなり銃器を持ち出して来るのかよ。

 この機体で良かったぜ。

 さて、これからが本番だな」


ライラはじりじりとハミルトン機に近づいて行く。


ライラは剣術を習っていない。

スカーレットセージにも細身の剣は搭載されているが、ライラ自身、

これを振り回したところでたかが知れているのは分かっている。

その為にどうするか、それは彼女なりに考え出した結論があった。


苦手な事はしない、出来る事をする。


彼女は左のシールドを構えたまま突撃していく。

それを見たハミルトンは、ハンドガンを盾にしまい、腰の剣を抜き放つ。


(何だこいつ。

 剣を抜かずに突撃してくるなんて、何を考えている)


ハミルトンも盾を前に出して突撃する。

二機の盾が正面からぶつかり、押し合いが始まる。

するとハミルトン機はぐいぐいと押し込まれる。


「な、なんてパワーだ。

 やはり普通の機体じゃないな!」


ハミルトンは一旦後ろへ飛び退くと、スカーレットセージに斬りかかる。

ハミルトンの斬撃をスカーレットセージは盾で受け流す。

操縦席の中でライラは冷静に相手の動きを見極めていた。


(何とか目で追える… 旦那に感謝だな)


そう考えながらハミルトン機の動きに合わせて防御を行うライラ。

一方、ハミルトンは相手の動きに違和感を感じていた。

相手の動きが硬い、そう思った。


(何だ… 何故斬り返して来ない。

 まさかこいつ、素人なのか…?)


ライラは緊張しながらもなんとか敵の剣撃を捌き、チャンスを窺う。

ハミルトンは相手が斬り返して来ないのをいい事に斬撃を繰り返し、

相手を追い込もうとしていた。


ハミルトンの連撃の三度目を受け流した時だった。

少し単調になった斬り込みの隙をライラは見逃さなかった。


(今だっ!)


四度目の剣撃に合わせ、シールドを押し返し相手の剣を弾く。


動きを合わせられ、ハミルトン機は体勢を崩す。

その瞬間、ライラは機体の右腕のシールドを展開する。


スカーレットセージは、エナジーを変異させて強固な盾を生成する機能がある。

そしてそれは両手に備わり、展開できる盾のサイズと形は調整が効く。

体全体を守るサイズから拳程度の大きさまで自由自在である。


彼女が右腕に展開したシールドは小さく、拳を覆う程度の大きさだった。

そう、それは拳を覆う硬いナックルガードの様な形になっていた。


ライラはその右拳をハミルトン機に叩き込む。

ハミルトンは急に殴りつけて来た相手の動きに驚きながらも何とか反応し、

左腕の盾を引き上げて胴体を守った。


強烈な拳の一撃がハミルトン機の盾に炸裂する。

ハミルトンは拳の強烈な一撃を盾で何とか受け止めたものの、盾は歪み、

機体はその衝撃で後ろに吹き飛ばされる。

彼はなんとか機体を制御し、倒れないように持ちこたえた。


だが盾が変形する程の衝撃は、盾を保持する左腕にも影響を与えていた。

強烈な衝撃を受けた腕の内部が歪み、異常が発生する。

ハミルトン機の左の肘から下はだらりと下がり、まともに動かなくなった。

左腕に装着されていた盾は歪んで外れ、地面に落ちてしまった。


ライラは相手のダメージを見て、笑みを浮かべる。


「どうよ。

 剣は使えねえが、拳で殴るならあたしだって出来る。

 しかも超硬い盾の強度をもつ拳だ。効いただろ」


奇襲の様な戦法でもあったが、ライラの一撃は十分な効果を上げていた。

ハミルトンは予想外のダメージに戸惑う。


「くそっ、やられた!

 左腕は駄目か。

 無茶苦茶な戦い方をしやがる。騎士じゃないのかこいつは」


ハミルトンの表情に焦りが浮かぶ。

左腕はもう使い物にならず、盾も使えない。

更に盾に収納していたハンドガンも失い、射撃攻撃も出来なくなった。

あの強力な拳を避けつつ、右腕の剣だけであの強固な防御を突破しなければ

ならなくなったのだ。


ハミルトンはけん制も、迂闊に相手の間合いに踏み込む事も出来ず、じりじりと

近づいてくるスカーレットセージに手こずっていた。


ライラにとって、この膠着状態はまさに望む所であった。

彼女は自信過剰でも楽観主義者でもない。

自分の状況はよく理解しているつもりだ。

いきなりエル・ギガンティアを手にしたからと言って、レインの様に手際よく

敵を倒せるなどとは一切思っていない。

だからたとえ一機でも敵を自分に引き付ける事で、レインの負担を減らせれば

それで良いと考えていた。


敵を倒すのは二の次。

足止めさえできれば役割を十分果たせている、それが今の彼女の考えだった。

それはレインに対する熱い信頼でもあった。

不利な状態でなければ、彼なら何とかしてくれる、ライラはそう思っている。


「こいつは引き付けておく。頼むぜ、旦那!」


彼女は早くもこの父の形見であるスカーレットセージを使いこなしつつあった。

ケアンズにとって、彼女とこの機体出現は大きな誤算だった。

彼らの数の優位は消え、優先的にキャリアーを確保しようという彼らの目的は

遠のいて行く。


それでも、一度振り上げた拳を簡単に降ろすわけには行かなかった。

ケアンズとハミルトンは状況を打開するためにもがくしかなかったのである。

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