第一章 旅立ちのイーステン 1-13 レインの決意
~前回のあらすじ~
王国の部隊によるコロシアム襲撃は失敗に終わった。
帰還した王国の騎士ケアンズは、汚名を晴らすためにもがくハミルトンと共に
作戦続行を決意する。
その目的すら不明なまま、彼らはナナリーを追跡する事になった。
決闘の襲撃があった日から数日が経った。
イーステンではその間、レイン達やギルドの関係者は戦いの後始末に追われた。
彼らは巻き込まれた人達の治療、破壊された機体の回収など、忙しい日々を
過ごしていた。
戦いに巻き込まれたドモンも一時は検査の為に病院に収容されたが、大きな怪我
も無かった為すぐに退院する事となった。
ワーカーを含めた多くの機体を破壊されたギルドは、本部への救援要請等の対応
に追われていたが、ドモンの事務所は漸く落ち着きを取り戻していた。
そんなある日、レインとドモンは彼らの事務所内で話し合いをしていた。
騒動が落ち着くまで棚上げになっていたいくつかの要件を確認していたのだ。
その中には、レインが思いがけず手にする事になった、エル・ギガンティアに
ついての話もあった。
ドモンはレインから手渡された例の指輪をまじまじと眺めていた。
「これがアーティファクトか。一見普通の指輪と変わらんな。
こんなものを嬢ちゃんが持っていたとは…
嬢ちゃんの出自に更に謎が増えたな」
そう言うとドモンはレインへ指輪を返した。
レインはそれを受け取り、眺めながら言った。
「だが、これが彼女が執拗に狙われる理由の一つかもしれない。
もし他にも持っていたり、その在処を知っていたとしたら…」
「生身で複数の機体を持ち運ぶ、歩く格納庫って感じになるのか。
まさに帝国の魔女の再来ってわけだ。
王国が彼女を狙うのはそれが理由なのか」
「その可能性もある、と言うだけだな。
ナナリーがこんなものをいくつも持っているのかは確かめていないし、
もしそうだとしても、何故王国がその情報を知っているのか不明だ。
事情を知る第三者がいるのかもしれないな」
話を聞いていたドモンは少し難しい顔をする。
「だが… それが理由なら、再襲撃される事もありうるか」
「都市への軍事行動は条約で禁止されている。
王国が直接都市を攻撃してくる可能性は低いだろう。しかし…」
「絶対ないとは言い切れない、か。
下手をすると町中が戦場になるぞ」
「そうだな。
だから、万が一が起こる前に帝国へ出発しようと思う」
「そうか。
決闘も終わったし、予定通りではあるが…
だが、町から出ると相手も手を出し易くなるんじゃないか」
「確かにそうだが、連中の戦力だって無限じゃないだろう。
奴らは恐らく海上の船舶を拠点としているはずだ。
遠回りをして内陸の町を経由していけば、奴らも追撃が難しくなるだろう。
それに…」
レインは指輪を見ながら言う。
「こんなものが手に入ったおかげで、大型のキャリアーでなくても戦力を
持ち運べる。
定期船を乗り継いでの旅も出来ないわけじゃない。
ただ、下手をすると大勢の人を巻き込むから選択肢からは外れるがな」
「船か…
そういや、そのギガンティアは飛べるんだよな。
飛んで海を渡るなんてことも出来るんじゃないか」
レインはめずらしく小さなため息を付きながら答えた。
「そいつは無理だな。
機体の電子マニュアルを確認したが、こいつは実験機でな。
とんでもない欠陥品だ」
ドモンはレインの言葉を聞いて意外そうな顔をする。
「欠陥品だって!?」
「誤解を招くような言い方をしたが、機体の性能としては申し分ない。
空を自由に飛べる機能自体は驚くような完成度だった。
実際助けられたしな」
「それなら優秀な機体なんじゃないのか。
どうして欠陥品なんて言い方をする」
「機体自体は問題ないが、搭載されてる飛行機能は問題ありなんだ。
完成度の高い機能なのにそれがどうして他の機体に搭載されていない
のかわかるか?」
ドモンは質問に質問をぶつけられ、少し考え込んだ後に答えた。
「…何か欠陥があるから正式採用されなかったって事か」
「そうだ。
正確には機能の不全じゃなく、燃費が悪すぎるんだ。
まともに使えるレベルじゃない」
「燃費? 操縦者の気力が持たないって事か」
「そうだ。
実際、俺は戦闘中に2回程気を失いかけた」
「おいおい…まじか」
他人事の様に話すレインにドモンは呆れた表情を浮かべる。
「ギガンティアは搭乗者の気力をリヴァースエナジーに変換して動作する。
ギガンティアが飛行する際にスラスターから噴射する粒子は、エナジーを
変質させた物だ。
飛行するためにそれを噴射し続けるのは多くの気力を多く使うんだ。
それはこのフリージアでも変わらないし、改善もされていない。
そしてフリージアは背面に搭載されているバックパックと翼によって、
気流、重力等の制御を行う事で、空中で機体の方向を変えたり急制動を
掛けたりできるんだが…
もちろんこの制御にも莫大なエナジーを使う。
つまりこいつの飛行機能を使っている間は、噴射と制御で膨大なエナジー
を消費する事になるんだ。
操縦者は常に全力疾走を強いられている様な状態になる」
「機能自体は便利だが、常時使えるレベルではないって事か」
「そうだ。しかも、このフリージアと俺は適応率が高いんだ」
「適応率って、確かエンジンに使われているコアと操縦者の気力の
相性みたいなものだったか。
高いとエネルギーの変換効率が良くなるんだろ」
「そうだ。
コアは規格品でないから個々にバラツキがある。
大抵の場合、適応率は20~30%位になるが、俺とこいつは50%を超えてる」
「へえ… 偶然とは思えないほど高いな。
まさにあんたの為に用意された機体って感じじゃないか」
「それ自体はいい事なんだが、その適応率でも飛行機能はあの燃費だ。
普通の適応率の人間が使ったらさらに酷い事になるだろう」
「なるほど。
機能自体は完成したが、とても一般的に搭載できる代物じゃなかった
という事なんだろうな」
「技術自体は本当に凄いんだがな。
燃費問題が解決できなくて実験段階で終わった機能なのだろう」
「とてつもない技術を持つ古代文明人でも上手く行かない事もあるんだな」
「実際、そこまでして飛び回る必要があるか、という結論になったのかも
しれないがな」
「昔ならあったんじゃないか。でも今はな…」
「そうだな。
黒雲があるかぎり、空を長距離飛ぶのは現実的じゃない」
黒雲。
それは、太古からある厄災の一つである。
空に浮かんだ浮遊大陸にも使われていた宙に浮く物質、通称浮遊石を含んだ
岩石や破片がその力を失わず今も空中を漂い続け、雲の様な靄を作る現象だ。
それは霧の様な薄い物から積乱雲の様なあからさまに危険に見える物までが
存在し、一般的に黒雲と呼ばれている。
大災害で浮遊大陸が砕けた時にも大量発生したと言われているが、太古から
存在し、古代文明人が空を汚染し続けた結果だとも言われている。
黒雲は風や気流に乗って世界を移動し、空の一部を現在も黒く染めている。
基本的には人々が活動する地表には来ないが、高所などで黒雲に突入すると
岩石の破片等によるの物理的な干渉、強力な電磁波、酸素濃度の低下など
様々な影響を受け危険である。
燃料などの燃焼反応の機械は動作しなくなる場合がほどんどで、これが主な
理由となり、この世界では航空機械の類は全く発展して来なかった。
「結局、空を飛んで行くってのは無しか。
旅をするならいつも通りキャリアーで移動していくのが無難というわけだ」
「そうなるな」
「で、話は変わるが、元々旦那が使っていたガーベラの方はどうする。
ガーベラの部品は回収できる物は回収したが…
胸から上がバラバラになっているから、専門の所に出さないと修理は無理だな。
結構金もかかりそうだぞ」
「あんたさえ良ければ預かってくれないか。
直せるなら直して使ってくれても構わない」
使っても良いという話を聞いて、ドモンは意外そうな、そして少し嬉しそう
な顔をした。
「そりゃ、願ってもない話だが… いいのか」
「とりあえず、今はこいつがあれば問題ない」
レインは指輪を眺めながら言う。
「…短い間だが、あんたには世話になった。
万が一俺が戻って来なかったら、そのまま使ってくれて構わない」
「…つれない事言うなよ」
少し寂しそうに言うドモンに対し、レインはいつも通り淡々と答える。
「ギガンティア乗りなんて、いつ死ぬかわからんさ」
ドモンは少し沈黙した後に言った。
「なあ、そこまで言ってくれるなら、一つ頼みがあるんだが」
「何だ」
「折角だし、ガーベラを修理するためにシャールへ行きたい。
それに同行してくれないか」
「内陸の工業都市シャールか…
確かにあそこなら大破したギガンティアを直せるだろう。
でも紹介がないと高く付くんじゃないのか」
「以前内陸を拠点としていた時期もあってな。
何度かガーディアンのパーツ等を卸して取引した事はあるんだ。
話は通せるはずさ。
あそこの技師は腕がいいし、金さえ払えばパーツも用意してくれる」
「伝手はある、という事か」
「そうだ。
その点は問題ないと思うんだが、そこまで行く過程が問題なんだよ」
少し回りくどい言い方をするドモンの意図をレインは理解する。
「…貴重なギガンティアの残骸を積んでいるという情報がもし洩れれば、
野盗の格好の標的になるというわけか」
「そうだ。
だからやはり護衛が欲しい。
内陸へ行くなら途中まであんたと一緒に行けば手間も省ける」
「なるほどな。遺跡調査の方はどうする」
「権利は他に渡してもいいと思ってる。
どうせウチはしばらくはガーティアンの解体の作業で手一杯だからな。
作業の指揮はエレバンに任せれば大丈夫だし、その間にガーベラの修理を
してくればいい。
ギガンティアが動かせるようになれば、活動の選択肢も増える。
サルベージャーとしては1ランクアップできるってわけだ」
ドモンは嬉しそうに計画を話し終えると、付け足す様に言った。
「それに、しばらくナナリーと旅できるとなれば、ライラも寂しくなくて済む」
その言葉にレインはドモンの親心を感じたが、今回の旅には危険が伴う可能性が
高いのは事実だ。
彼は一応覚悟を確認する様に聞いた。
「彼女も連れて行くつもりか? 危険な目に会うかもしれないぞ」
「今更さ。この間の決闘だってそうだったろ。
それより遠出はあいつにとっても良い気分転換になるだろうしな。
話を振れば、二つ返事で付いて行きたいと言うだろうさ。
腐れ縁はもう少し続くが、それも良くないか?
旦那が嫌でなければな」
ドモンの問いにレインは考える事も無く答えた。
「構わないさ。ナナリーも喜ぶだろうしな」
「旦那ならそう言ってくれると思ったよ」
ドモンはレインの顔を見ながら嬉しそうに笑った。
そうして旅の話が纏まった丁度その時、事務所のドアがノックされエレバンが
事務所へ入って来た。
「おやっさん、客が来てます」
「客? 今日誰か来る予定はあったかな。 誰だ?」
「カトレア・デリーと名乗っている女の人です。会いますか」
「ああ、あの司会やってた… 通してくれ」
「わかりました」
エレバンはそう言って出て行くと、デリーを連れて来た。
エレバンと入れ替わりで事務所に入った彼女はは元気に会釈をした。
「ドモンさん、しばらくぶりです!」
「あんたも元気そうで何よりだ。
あの時は世話なったな。ささ、座ってくれ」
デリーは再びペコリと頭を下げるとソファーに座った。
「で、今日は何の用だい?
まあ、あんたは娘の恩人だ。用が無くても歓迎するよ」
その言葉を聞いて、デリーは嬉しそうに笑う。
「おやじさんはいい人ですね!
皆こんな優しい人ばっかりだったらいいのにと思いますよ!」
「世辞は止してくれ。背中がかゆくなる」
照れながら答えるドモンを見て、レインが言う。
「仕事の話なら、俺は席を外した方が良いか?」
そう発言したレインを見て、デリーが慌てて止める。
「すみません、実はそちらのレインさんの方にお願いがあるんです。
ドモンさんの所に居ると聞いたもので」
「俺にか?」
「そうです。
その… あのエル・ギガンティアを取材させて欲しいんです」
その言葉にドモンの顔色が少し曇る。
(そうか、この人はあの場にいたから、アレを知っているのか…)
レインはいつも通りの淡々とした表情で質問を返した。
「何故だ?」
「そりゃあ、珍しい機体だからですよ。
エル・ギガンティアなんて、サルベージャー垂涎の的じゃないですか。
映像が撮れれば、絶対ウケルと思うんですよね~」
デリーは笑いながら言う。
それは、一応金目当てではあったのだろうが、悪意のある感じではなかった。
深い事を考えずに発言した、彼女なりの思い付きである事を二人共感じ取った。
ドモンは少し呆れ顔をしながら言う。
「デリーさん、言いたいことは分かるが、そりゃあ無理だよ」
「え、何でです?」
「何でも何も、旦那がエル・ギガンティアを持っていると周りに触れ回る事
になるだろう。
下手するとガラの悪い連中に着け狙われる事になりかねないぞ」
「あ! ああ…言われてみれば…」
デリーはその言葉を聞いて、バツの悪そうな顔をする。
レインはその様子を見て淡々と話を続ける
「そういう事だ。悪いが断らせてくれ」
「そうですよね、ごめんなさい…
私ってそういう所までいつも頭が回らなくて。
いやあ、次のいい撮影物ないかなって考えたらつい…」
「そういや、映像撮っているって言ってたな」
「そうです。まあフリーなんでその日暮らしみたいなもんですよ。はは…」
デリーは少し困ったように頭を掻く。
「そうか。力になれなくて悪いな。
代わりにというわけじゃないが、今晩うちで食事して行かないか。
礼も兼ねて御馳走するよ」
「いいんですか!」
「今夜、旦那の決闘勝利を祝って宴会をする予定なんだ。
娘たちはその買い出しに出てる。
もうすぐ帰って来るはずさ」
「…俺はそんな事しなくていいと言ったんだがな」
やれやれという感じでポツリとこぼすレインを見て、デリーはにこやかに
返事をする。
「わあ、パーティですか! ぜひご一緒させて下さい!
せっかくなので手伝いますよ。
私、料理は得意なんですよ!」
「あんたは客だ。そんな事しなくても」
「いえ、任せて下さい。
むしろドンと来い、です。
料理するのは好きなんで、期待してもらってもいいですよ!」
「そうか、じゃあせっかくだから頼めるか?
娘が戻ってきたら相談して進めてくれるか」
「勿論ですよ!
へへ… 私、いいタイミングで来ちゃいましたね」
デリーは満面の笑みを浮かべる。
事務所の外に車の止まる音が聞こえた。
「おっ、帰って来たな」
ドモンのその声に反応する様にデリーは立ち上がる。
「では早速、お二人と相談に行ってきますね!」
そういうと彼女は事務所の扉を開けて車に駆け寄っていく。
「お二人さーん!」
「あっ、デリーさん!」
そんな彼女を、荷物を抱えて降りて来たナナリーが満面の笑みで迎える。
やがてライラを交えて三人で話がはずんでいる様だった。
ドモンとレインはその様子を事務所の入り口から眺める。
「明るい娘だな。見ていて何だかホッとするよ」
「どうしても俺達はまず相手を疑ってかかるからな。
ああいう純粋な奴を見るとそう感じるのかもしれないな」
その後、彼女達三人は宴会の食事の準備に取り掛かった。
レインの他、ドモンの元で働いているメンバーも集められ、日が暮れる
頃に宴会は始まった。
ガレージの前には机が並べられ、沢山の料理や酒が用意されていた。
ドモンは集まった皆の前にレインを伴って立った。
「さて、今日はレインの旦那の決闘勝利を祝って宴会を行う!
皆、大いに飲み、食らってくれ。
それと旦那は、数日後にはナナリーちゃんを送り届ける為に遠方へと
旅立つ事になった。そのお別れ会も兼ねている。
決闘で旦那に稼がせて貰った奴は、きちんと礼を言っとく様に」
会場から笑い声が起こる。
ドモンの隣に立たされたレインも半ばあきらめた感じでグラスを掲げる。
「では乾杯!」
参加したメンバも大声でそれに答え、宴会は始まった。
ライラとデリーが腕を振るい作った料理の数々は皆から好評で大いに
盛り上がる事になった。
参加した皆は、日々の労働を忘れ大いに楽しんだ。
そんな中、ナナリーも大勢での宴会を新鮮に感じ楽しんでいた。
彼女も短い間ではあったが、雑務を通じて多くの人達と交流していた為、
色々な人から別れを惜しまれた。
彼女にとって、皆優しく接してくれたここでの生活は良い思い出だった。
彼女は終始笑顔で皆の元を回った。
そして、楽しい時間はあっという間に過ぎ宴は終り、夜は更けた。
「ナナリー、話がある」
宴会の片付けも終わり、部屋に戻ろうとする彼女をレインが呼び止める。
レインはナナリーをガレージの脇へ連れて行くと、これからの事を説明する。
「シャール、ですか?」
「そうだ。内陸にある工業都市でな。
近年はワーカーの製造で発展した町だ。
技術の高い職人もいて、ギガンティアの修理も行える。
まずはそこへガーベラを直しに行く。
その後、帝国を目指す形になる」
「ガーベラ…壊れちゃいましたしね」
彼女はガレージの隅に回収されたガーベラの姿を思い出す。
彼女にとって、ガーベラは二度も窮地から救い出してくれた機体だ。
それが倉庫の隅に積み上げられている姿は彼女にとっても何か悲しさの様な
物を感じる所はあった。
だが、レインはそれほど機体に愛着を持っている訳ではなさそうだった。
いつものように淡々と話を続ける。
「今はお前から受け取った機体があるから問題はない。
今後ガーベラはドモンに預けようと思っている。
だがそれは、このフリージアが俺の物なら、という前提だ」
「…? どういう事ですか」
ナナリーは対価として渡したはずのフリージアを自分の物で無い様に話す
レインを不思議に思った。
「俺はお前から護衛の対価にこれを受け取った。
知らなかったとは言え、対価としては高すぎるだろう」
レインの言葉にナナリーはほほ笑みながら答える。
「いえ、渡す時にちゃんと伝えました。
私を守ってくれる人に渡すものだと。
貴方はそれを使って私を守ってくれました」
ナナリーはレインの目を見つめて言う。
「それは貴方に相応しい物です。貴方が持つべきです。
そして、その子は私だけでなく貴方自身をきっと守ってくれます」
レインは自分を覗き込むナナリーを見つめる。
純粋に見える彼女。
だがレインの心の中には疑念が渦巻く。
この娘が自分にフリージアを託したのは偶然なのだろうか。
この機体と自分の適応率が高いのも偶然なのか。
彼女はわかった上でこれを手渡したのか。
全て知った上でやっている事だとしたら。
彼女に記憶がないというのが嘘だったら…
「お前はこれ以外にも…」
そう言いかけてレインは目を閉じる。
そしてゆっくりと瞼を開くと再びナナリーを見つめて言った。
「わかった。
ありがたく頂戴しよう。
俺とフリージアが、お前を必ず守って見せよう」
「はい! よろしくお願いします」
ナナリーは嬉しそうに笑う。
その笑顔を見て、レインは思う。
信じてみよう。
結果としてどの様な事になろうとも。
全てが何かの掌の上の出来事だったとしても。
運命やめぐり合わせという物を信じてみたい、と彼は初めて思った。




