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第一章 旅立ちのイーステン  1-10 迫る脅威

~前回のあらすじ~

レインとアモイの決闘が行われ、レインが勝利した。

その直後、謎の部隊がコロシアムを強襲する。

敵が王国の部隊だと知ったレインはナナリーを守る為、

コロシアムを脱出した彼女達を追う。

場面は少し前に遡る。

コロシアム内でギガンティアの戦いが始まる少し前。


コロシアムから脱出する為、東ゲートへ突入したライラとナナリー。

彼女達は東ゲート内の待機広場をワーカーで駆け抜けていた。

後部座席からナナリーが心配そうに呟く。


「レインさん、大丈夫でしょうか。

 あんなに激しい戦いした後なのに…」


「ギガンティアが来てるんだ。任せるしかないさ。

 あたしらは足を引っ張らないように早くこの場を脱出するんだ」


ゲートの出口が見えた時だった。

発砲音が鳴り響き、ライラの機体の周囲に着弾して土煙が上がる。

ライラは慌てて機体をターンさせる。


「待ち伏せか?! 発砲してきやがった」


ライラはワーカーを停止させる。

ゲートの入り口に灰色のワーカーが2機待ち構えていた。

肩に機関砲の様な物が付いている、明らかに軍仕様の機体だ。

そのワーカーから警告の音声が響く。


「停止せよ。さもなければ今度は威嚇では済まない。

 即刻、機体を捨てて投降せよ」


(参った。逃げ道が塞がれてるじゃねえか…)


出口を塞がれて焦るライラ。

その姿を見ていたナナリーは意を決したように言った。


「ライラさん。私を降ろして下さい」


「お前、何言ってんだ!」


「多分… 私が原因なんですよね」


ナナリーはライラを見つめて悲しそうな顔をする。


「私が捕まれば、皆は…」


「うるせえ!」


ライラは叫び、ナナリーの言葉を遮る。


「暴力を振りかざして人をさらう奴になんかに従うか!

 お前だけ差し出して逃げるなんて考えるかよ!」


「ライラさん…」


その時だった。


「うぉぉりゃああ!」


ゲートの出口を封鎖していた灰色のワーカーに、突然外から現れた別のワーカーが

突撃し、体当たりを食らわせた。

灰色のワーカーは不意を衝かれ転倒する。


「ライラ! 逃げろ!」


突撃して来たワーカーからドモンの声が響く。


「おやじ!」


「いいから早く!」


「貴様!」


もう一台の灰色のワーカーがドモンの機体に向けて発砲する。

ドモンは咄嗟にワーカーの左にある小さい盾を構えるが、銃弾を浴び盾や足が

粉砕されて行く。


「おやじ!」


「ボサっとするな! 今やる事はなんだ!」


ライラははっとすると、俯いてワーカーをダッシュさせる。


「逃がすか!」


灰色のワーカーがドモンに向けていた砲をライラたちに向けようとした

その時だった。


「ちょっちょ、どいてくださーーーい!」


ライラの脇を別のワーカーが物凄い勢いで通り過ぎていく。

そして、発砲しようとしていたワーカーの側面に全力で衝突した。

猛スピードで体当たりを食らった灰色のワーカーは吹き飛び、地面を転がる。


「どわわぁっ! だから退いてって言ったのにぃ!」


それは、カトレア・デリーの乗る機体だった。

デリーの叫びと共に、彼女の機体はその場で擱座し、動かなくなった。


「あんた、司会の…」


ライラが唖然としていると、通信機から声が響いて来た。


「早く、早く行って下さい!

 狙わているのはあなた達なんですよね?

 事情は分かりませんけど、早く!」


「あんた… 恩に着る!」


ライラは全速でワーカーを走らせる。

擱座したデリーとドモンのワーカーの間を通り過ぎていく。


「ライラさん! 二人が…!」


ナナリーは泣きそうになりながらをその姿を見送る。


「構うな!

 おやじ達の行動を無駄にすんな!

 みんな、理不尽な暴力にはもうウンザリしているんだ。

 そんなやつらの言いなりになんかなってたまるか!

 お前を逃がす、それがうちらの意地なんだよ」


意地だとライラは言った。

ライラもドモンもデリーも、自分を助けようとしてくれている。

でもそれはナナリー自身の為だけではないのだ。

理不尽な暴力を振りかざす者への抵抗。

荒廃した南の大地を生きて来た者達が持つ反骨精神だった。


「それに、標的はあたしらだ。離れた方がおやじ達も安全だ。

 心配すんな、とにかく離れるぞ!」


機体を走らせるライラ達に再び灰色ワーカーが迫る。別の一台の様だ。


「畜生、まだいんのかよ!」


ライラは機体をジグザグに走らせ、狙いを付けられないようにする。


ナナリーは追いかけてくるワーカーを見ていたが、その機体の側面に突然爆発

が起きて横転した。

ライラもナナリーもいきなり起こった事態に訳が分からず戸惑う。


「ライラさん、追っ手が…」


「何だ、何が起こった?」


ライラ達に近づいてくる1台の機影があった。

長い砲塔の付いた大型のワーカー。

その胸にはギルドナイトのマークが付いていた。


「あれは…ギルドナイトか!」


大型ワーカーの操縦席内で、操縦桿を握るシズカ・アマギは後ろのシートを振り

返りながら言った。


「支部長、あのワーカーはナナリー様が乗っている機体の筈です」


操縦席の後ろの砲撃用シートには、ギルド支部長、トゥールの姿があった。

彼は砲塔の標準システムを覗きながらアマギの言葉に頷く。


「なんとか間に合ったか。

 敵のギガンティアが見当たらないぞ。レックスはどうした」


支部長は決闘の宣誓の後、一度イーステンに戻っていた。

町の防衛の為残っていた部下のギルドナイトであるアイ・レックスにも、万が一

に備えてギガンティアの出撃準備をさせていたのだった。


結果、決闘の中継が途切れるという異常事態が発生した為、レックスをコロシアム

に先行させ、自らも武装したワーカーで出撃して来たのだ。


(装備からして野盗ではない… とすると、やはり王国の部隊か。

 しかし、奴らがここまでして来るとは思わなかったぞ…

 それほどあの少女を確保したい理由があるというのか)


支部長も、最近港町サンディの周辺で大型の艦船が目撃されているという情報は

聞いていた。

王国が何かしらの活動をしている事はギルドも把握はしていたのだ。

だが、ここまで本格的な襲撃が起こるとはさすがに想定外ではあった。


支部長達の機体の脇にライラ達の乗るワーカーが止まる。

すかさずアマギは通信の設定をする。

支部長はそれを見ると通信機に話しかけた。


「無事か、二人共」


「助かったよ。マジで死ぬかと思ったよ」


「ありがとうございます。支部長さん。

 でも、ドモンさんとデリーさんが…」


「そうだ、おやじの機体も巻き込まれて… 頼む、助けてくれ!」


心配そうに訴えて来る彼女達の声に支部長は頷く。


「判った。アマギ、我々は二人の救助だ。

 お前達を町へ逃がしたい所だが、奴らを町に入れるわけには行かん。

 悪いがどこかに身を潜めていてくれ」

 

支部長がそう言った時だった。

コロシアムの脇からギガンティアが猛スピードでバックして出て来た。

ギルドナイトのレックスの乗るキガンティアだった。

それを囲むように2機のギガンティアが現れる。


襲撃者である王国部隊長、オリオン・ケアンズとローゼル・パトナの機体。

どちらもコロシアムに現れた機体と同じく、グレーの装甲を被せて偽装が

されている。 

レックスはコロシアムの周囲を回り込んで来たケアンズ達のギガンティアと

遭遇し、交戦中だったのだ。


三機共にライラ達のワーカーに気づく。


「支部長! 危険です、下がって下さい!」


レックスは支部長のワーカーを見つけると、通信で支部長に向けて叫ぶ。

彼は二機のギガンティアを相手にしていてワーカーを守る余裕はなかった。

一方、パトナはライラ達のワーカーを見つけるとケアンズへ通信を送る。


「隊長、二時方向に二台のワーカーを確認。

 片方は目標のワーカーと思われます」


「何? 何故コロシアムから外に出ている。

 ワーカー部隊は足止めも出来なかったのか」


ケアンズはワーカーをズームで視認すると、パトナへ指示を出す。


「パトナ、目標を捕獲しろ。こいつは私に任せろ」


「了解しました」


パトナの機体がスラスターを吹かしライラ達のワーカーへ迫る。


「行かせるかっ!」


レックスが左腕に持っているハンドガンをパトナへ向けようとした瞬間、

ケアンズがレックスの機体へ切りかりそれを阻止する。


「君の相手は… 私だ!」


事態を把握した支部長はすかさず指示を出す。


「ここは任せて行け! ライラ君。

 アマギ、出せ。 我々は囮になればそれでいい」


「…悪いが、頼む!」


ライラ達の乗ったワーカーが全力で走り出し、コロシアム脇のにある林の中に

突っ込んでいく。

それと同時に支部長の乗ったワーカーは後ろ向きに走り出すと、背中から弾頭を

パトナの機体に向けて発射する。


「そんな物が効くとでも?」


パトナはワーカーから発射した弾頭を気にもせずに突っ込んで来た。

弾頭はパトナの機体に直撃すると爆発して煙幕をまき散らす。

それに合わせて支部長は大砲の引き金を引く。


ガーディアンの装甲すら貫くアンバー結晶製の弾丸が発射され、パトナの機体の

頭部に直撃した。

だが、多少の焼け焦げの様な物が付いただけで、機体はビクともしなかった。

アマギが冷静に指摘をする。


「支部長、ワーカーではやはり無理です」


「おのれ、ギガンティアさえあれば…」


「邪魔です、貴方」


パトナの機体の肩から光弾が発射され、支部長達のワーカーを襲う。

アマギは必死の機体さばきでそれを躱しながら後退する。


「雑魚は引っ込んで下さい。さて」


パトナはライラが逃げ込んだ林を見つめる。

彼女は機体が持っている剣にエナジーを集中する。


「隠れんぼは嫌いでしてね」


そう呟くと思いっきり剣を振った。

剣に込められたエナジーを飛ばす剣技、エナジーブレイドだった。

エナジーが綺麗な弧を描いて打ち出され、林の木を次々と切断していく。

その衝撃波は林の中に潜んでいたライラ達のワーカーの傍を木をなぎ倒し

ながら通り過ぎていった。


ライラもナナリーも、初めて見る剣技に驚き、言葉を失う。


「見つけた…」


パトナは見晴らしの良くなった林の画像を解析してライラ達を見つけると、

スラスターを吹かして上空へジャンプする。

そしてワーカーの周囲に向けて光弾を発射する。

ライラ達のワーカーの周辺に爆発が広がる。


操縦席内で爆発に怯え頭を抱えるナナリー。

ライラは盾を構えながらも逃げる先を見つけるために周囲を見回す。

が、その瞬間、巨大な剣が盾ごとワーカーの手足を貫く。

パトナのギガンティアが一瞬で間合いを詰めて来ていたのだ。

操縦席が激しく揺れ、ナナリーが悲鳴を上げる。

ライラ達のワーカーは足が損傷し倒れ、移動出来なくなった。


冷たく冷静な声がギガンティアから響く。


「死にたくなければ、動かないでね」


ライラとナナリーは眼前の灰色の巨体を見つめる。

その威圧感に絶望し、二人共声を発する事が出来なかった。

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