第十話 家族
神社からの帰り道、紅葉のスマホが鳴った。
紅葉がスマホを見るとそこには母という文字があった。
「出ないの?」
「うん。どうせ心配してないだろうし。本当に心配してるなら昨日の夜に電話するよね。」
紅葉の顔は少し悲しそうだった。
恐らく母となにかあったんだろうと僕でもわかった。それを無理やり聞こうとはしなかった。紅葉もそうしてくれたように。
「わかった。紅葉がそう思うなら。」
「ありがとう。櫻。」
「うん。」
ちょっと不満そうな顔をされた
そのうち電話の着信音が消えた。
二人の間に沈黙が流れていたが紅葉がそれを破って話し出した。
「私、お父さんがいないんだよね。」
突然の告白だったが、正直告白の内容自体には驚いてはいなかった。
詳しく聞くべきなのか迷ったが紅葉の言葉を待つことにした。
「お父さんが浮気したんだよ。それが原因で離婚した。それでお母さんが私のことに敏感になって、それが当たり前になってたんだけど中学に入って反抗し始めてそれから仲があまり良くないんだよね」
「紅葉はそれでいいのか?たった一人の家族と喧嘩したままで。僕が言えたことじゃないけど。僕は昨日父のことをちゃんと見て、それで分かったことが沢山あった。だから相手をちゃんと見ることが大事だと思う。」
自分でもびっくりするくらい勝手に言葉が出た
「だから、何かあったら相談乗るよ。僕で良ければだけど。」
紅葉は少し笑って、何かを決めたような顔をした。
「ありがとう。頑張ってみるよ。」
そんな会話をしていると家に着いた
父さんが朝食を作って待っていてくれた。
テーブルには6人分の食事が用意されていた。
「2人ともおかえり。帰ってきてすぐで悪いけど母さんと結菜と大樹を起こしてきて貰っていい?」
「わかった。」
返事をして3人を起こしに行った
三人が一緒に起きてきた
継母は眠そうにしながらも紅葉の存在に気づき状況を何となく察したようで台所にいる父に詳しく聞いに行った。
血の繋がっている結菜は僕のことを好いてくれている。連れ子である弟の大樹も僕のことを尊敬してくれている。結菜は大樹のことをいつも見てくれていて兄としてはとても助かっている。
「...お兄ちゃんおはよう...。」
小五の大樹は紅葉と目が合った
「...お兄ちゃん、この子誰?」
中一の結菜も続けて聞いてきた
「...もしかしてお兄ちゃんのお嫁さんですか...?」
紅葉の顔が赤くなった
「違うぞ、ただの友達だ。」
紅葉の顔が悲しくなった
「そうなんだ。...良かった...」
結菜が少し安心したように答えた
「くれはちゃん!よろしくね!」
大樹は元気に返事をした
紅葉のことを2人に説明した。
みんながテーブルに着いたところで全員で食事を始めた。
紅葉は少し感動していた。
それに気づいた父は少し心配そうに声をかけた
「こんな大人数で、家族で、食事してるのが久しぶりで、いつも母と二人で、しかもあまり仲が良くなくて、だから嬉しかったです。」
父が答えた
「いつでも来ていいから。自分のうちだと思ってゆっくりしていって。櫻もいいよな?」
「あ、うん。」
そうとしか言えない
紅葉は少し嬉しそうだった。




