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大人になる

「大袈裟ですよ。少し階段から落ちただけです」


「でも心配ぐらいさせてくれ」


「心配、してくれたんですか?」


「そりゃあもう。先生の話聞いて、飛び出して来た」


 結局リリーにはそこまでの怪我はなく、軽い打撲程度のものらしい。

 今は一応、ベッドに寝ている。


「ふふ、ありがとうございます。私、迎えに来てくれるの、少し期待してました。ちゃんと来てくれて嬉しいです」


「え、あ……ど、どういたしまして」


 急に変なこと言うから驚いて、詰まってしまった。


「では帰りましょう。スカーリア最後の日ですから」


「それだと言い方が悪い」


 言っておくが、断じて滅びの一日前ではない。



 俺は夕飯の準備を再開する。

 もうかなり出来上がってはいたので、リリーが風呂から上がる前に準備を終えてしまった。


 風呂、風呂かぁ……。

 思えばリリーの風呂って覗いたことないよなぁ。


 日本にいれば健全な男子高校生、そんな俺には今、婚約者がいる。

 この状態で覗くなという方が実は無理な話なのでは!


 ここは一つ、大きく出てみましょう!

 なに、これもスキンシップの一環。

 さぁ行け、足の向くまま、気の赴くままに!いざ、お風呂を覗かん!


 勿論、ぶん殴られました。色々見ることができたけど。



 えー、俺の軽率な行動により、スカーリア最後の晩餐がお通夜と化してしまいましたが、些細なことです。

 覗きによって得られたものは大きかった……。


 そして一言も喋ることがないまま、夕飯が終了し、更には就寝の時間になってしまった。


 流石にこれは予想外というか、やり過ぎたというか……よく考えてみれば、俺謝ってないじゃん。


 俺に背を向けたままリリーはベッドに横になっている。


「ごめんな、リリー。覗く気はなかったとは言えないし、やましい気持ちがなかったとも言えないんだけど……とにかくごめんなさい。俺が悪いです」


 時計の針の音さえ聞こえない沈黙の時間。

 そして、それを破ったのはリリーがこっちを向いてくれた時に起きた音だった。


「……ハヤトさんは私の裸が見たいんですか……?」


 え、これってもしかして……。


「……み、見たいです」


「……じゃ、じゃあ……!こ、ここ、この間の続きをしませんかっ!?……前は邪魔が入って出来ませんでしたし……」


「い、いいのか?」


「ハヤトさんさえ良ければ……」


 こ、これは本当に……!


「ほ、本当にいいの?」


 リリーは何も言わずに頷くだけだった。


 そして俺はとうとう大人の階段を登ったのだった。



 朝になり、二人して顔を赤くしてしまう俺達だったが、今日には出発したかった為、荷造りを済ます。


 掃除も済んで、家を出られる状態になった俺達は戸締りをして、家を出る。


「スカーリアでの生活もあっという間だったなぁ」


「そうですね。でもかけがえのない思い出もできました」


「そうだな」


 仕事も無事に終えられて、いい思い出までできた。

 今回の仕事、存外にいいものになった。

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