アジト判明
エドナに帰るや否や、俺とリリーはすぐにリビングに呼ばれた。
俺達がソファに座ると、すぐにオルクスが話を始めた。
「ついに『黎明人類』のアジトが判明した」
つ、ついにか……まぁそろそろだと思ってはいたけど、こんなにすぐになるとはな。
「精霊王達の必死の捜索で見つかってね。場所はエリス博士の遺産がある君達が言っていた遺跡だよ。どうやら防衛機能のレベルが最高になっているようでね、前に君達が赴いたエリス博士のおじいさんの遺跡より探索難度は上だ」
俺達はまたあの地獄のような環境に放り込まれるのが嫌で、国に調査するように進言しておいたはずだ。
あれからもう結構経っているけど、まだ調査は終わっていなかったんだ。
前回のようなトラップがあると面倒臭いから、慎重なんだろうか?
「国にはもう伝えたのか?」
「いや、これは君達だけに伝えている情報だ。僕の上司達はどうやら身内の失態を極力外に晒したくないようでね、出来れば僕達だけで処理して欲しいそうだ」
まぁ気持ちは分かるが、『黎明人類』のことはもう世の中に知れ渡っている。
民衆の意識としてはちょっとしたテログループぐらいの認識だろうが、あいつらは本物だ。
舐めてかかると返り討ちに遭う。
そんな状況でこの一件を安請け合いしていいのか?
第一俺達にはメリットがない。
そんなことを考えている俺を見透かしたようにオルクスは言う。
「勿論タダでとは言わないよ。『黎明人類』壊滅の暁には精霊王達の所持する資産の一部を譲渡する、という約束もできる。時価にしておよそ白金貨五千枚分の財宝らしいよ」
白金貨五千枚か……孫の代まで安泰な気がするが、別に金はそこまで欲しくは無いんだよなぁ。
自分の命と天秤にかけると怪しい。
しかし、それでもまだ何かあるようで、オルクスはニヤッと笑って、続ける。
「それに、どうやら『黎明人類』は色々なことに噛んでいるようだよ?例えば、強硬派の魔王軍残党を操っていたのも彼らだし、各国に洗脳した高官を送り込んで、政治にも少し絡んできているようだ。君達に関わりのある事件を例に挙げると、エドナ襲撃事件なんかがそうかな?」
なるほど。オルクスもよく考えている。
これで俺は引き下がれなくなった。
自分の街を荒らしに来た奴らの黒幕が奴らのと知ってはもう見て見ぬ振りはできない。
人が何人か死んでいるのだ。奴らの罪は重い。
「……分かった。『黎明人類』討伐、俺が引き受ける。他の皆は自由でいい。ついて来てくれる奴は二日後にここに集合だ。オルクス、お前は勿論参加だ」
今回はかなりヤバめの仕事だから、皆に命は張らせられない。
「カッコつけてるんですか、兄さん?そんな言い方してもここにいる皆は参加しますよ?」
確かに一理あるな。
「じゃあ言い方を変える。カーミラは待機だ。だって戦闘要員じゃないし。リリーにも待機しておいて欲しいところだけど……」
「私は嫌です」
ですよねぇ……。
「普通はそうなりますよね。私も行かせてもらいます」
ユリシアさんが来てくれるならもう楽勝だな。
「勿論私も行くよ!エリナも行くよね?」
「勿論じゃ。わしらのこの間の戦争にも一枚噛んでそうじゃからな。駆り出された側からしたら、恨みしかないのじゃ」
魔王軍に差し向けられた勇者軍がエドナ襲撃の時と同じ口と考えると、完全にレガリアの軍務大臣は洗脳されてるよな。
「つまり戦闘要員は全員参加、ということですね。わざわざカッコつけなくても大丈夫ですよ、兄さん」
中々にグサッと来る言葉を次々に吐いてきますね。
「すいませんね、カッコつけちゃって。まぁしかし、これだけの人数がいれば、『黎明人類』討伐も不可能じゃないだろう」
ちょうど、その時家のベルが鳴った。
カーミラが小走りで玄関に向かう。
「マスター、マスターにお客様です」
こんなクソ忙しい時に誰だ?
「はいはい、はいっと。どなたですか?……ってグローズさん!?」
「おお、ハヤト殿。お久しぶりです。お仕事ご苦労様でした」
そこには魔王軍随一の伊達男、グローズさんの姿があった。
「ご丁寧にどうも……それで今回はどんな御用ですか?」
「魔王様がハヤト殿の助太刀をして来いとおっしゃりまして。ハヤト殿の問題が解決するまで帰ってくるなと」
エリノアさん、ナイスタイミングだな。
魔王城で話してからすぐにグローズさんを送ってくれたんだろう。
まぁ何にしても大きな戦力だ。ここは協力して頂こう。
「じゃあ、お願いします。今、作戦会議的なものをやってるんで、参加してってください。なんなら泊まってってくれても結構ですから」
「分かりました。お言葉に甘えて泊まらせて頂きます」
グローズさんが話し合いに混ぜて、煮詰まって来たところで丁度夕食の時間になった。
大人数になってしまって、カーミラだけにやらせるのは気が引けて来たので、俺も久しぶりに夕食の準備を手伝った。
「ハヤト殿はお料理も出来たのですね!しかもどれも美味しい!」
確かにあってますけど、今食べてるのはカーミラが作った物です。
というか馴染むの早っ!
「僕も久しぶりにハヤトの料理が食べれて嬉しいよ」
それもカーミラが作った物です。
男共から褒められても嬉しくねぇ……。
「それよかお前の力って今どれくらい何だ?」
俺の中じゃ、オルクスは一番の戦力だ。
それが人間の時より弱くなりました、では困るのだ。
だから予め戦力の確認をしておく必要がある。
「人間の時よりは結構マシになったと思ってくれていいよ。まず魔力が殆ど無尽蔵だし、純度100%の上級精霊になったから、魔法の威力も上がっているはずだ」
更にパワーアップしたということか。それは心強い。
オルクスには期待しておこう。
そして二日が経ち、各々準備を万端にして俺達は飛空艇に乗り込む。
「じゃあ、カーミラ、家の事頼んだぞ」
「はい、お任せください、マスター」
俺達はカーミラに見送られ、遺跡へ出発した。




