浮気発覚!?
転移先を聞いていなかったが、どうやら俺の家に設定してくれていたようだった。
しかし、エリノアさんには俺の家を教えていなかったはず……じゃあ、シャムさんが教えておいてくれたのか?
俺はとりあえず、リビングへと向かう。
しかし、今の時間はもう七時、リリーにはどう言い訳したものか……。
「ただいま……え?」
リビングには勿論リリーがいて、汚物を見るような目で下の方を見ながら、仁王立ち。
しかし、おかしいのはそこではない。
リリーが見る方にはシャムさんが正座していた。
……あの馬鹿はどうしてここを転移先に選んだんだ?
「お帰りなさい、ハヤトさん。正座」
「あ、はい」
もう完全に尻に敷かれてるね。もう体が普通に言う事聞いちゃうもん。
「さて、女性と二人で夜中に浮気、しかも私が居るとわかっている家に浮気相手を呼ぶ……お二人ともこれってどう思いますか?」
あ、なるほど。
リリーは俺が浮気していたと思ってるのか。
「それは誤解だ。俺達は人に見られると不味いことをしていただけで、やましいことは何もしていない」
あれ?これって少しおかしいかも……?
しかもシャムさんが口パクでバカ、と言っている。
「分かりました。この方に好きという気持ちはなく、体だけの関係ということですね」
あぁぁ!!?そう解釈したか!
「違う!違うのよ、リリーシャさん!もうこうなったら全部話しちゃうけど、私達は他の人間に渡ると危険な魔法書をスカーリア学園から盗み出してたの。だからこの人とは何の関係もない!ただの仕事仲間なのよ!」
確かに言っちゃうのが一番早いよな。
リリーは多分バラさないでくれると思うし。
「……で、でも、お二人は前にも空き教室で会ってました!」
み、見てたのか!?
「それは今回の作戦を達成する為に打ち合わせしてたんだ!」
た、頼む!これで納得してくれ……!
「そう、だったんですか。ごめんなさい、ええと……」
お、おお!納得してくれたか!
「シャムよ。よろしくね」
「えっと、シャムさん、今回はごめんなさい!自分勝手で申し訳ありませんけど、お帰り頂いて大丈夫です。本当にごめんなさい……」
リリーはおどおどしながらシャムさんに謝罪する。
誤解が解けて良かった。
「分かったわ。こっちこそごめんなさいね、こそこそ行動しちゃって。でもハヤトも魔王軍の一員だから仕方なかったのよ。だから許してあげてね」
え、何シャムさん。何か急に優しいんだけど。
「アンタはちゃんと話すのよ!?自分の婚約者心配させたんだから!」
「は、はい!」
前言撤回、俺には厳しいです。
そう言ったが最後、シャムさんは俺達を気遣ってか、さっさと退散していく。
「……あー、ごめんな。心配させるような真似して。今回のはシャムさんが言った通り、必要な仕事だったんだ。だからどうか大目に見て欲しい……あ、何か上から目線だ!そうじゃなくてだな……」
今度は俺がおどおどしているとリリーが急に笑い出す。
そしてひとしきり笑うと、
「もう大丈夫です。ハヤトさんはスカーリアに来ると浮気するのかと思っていましたけど、そうでもないみたいで安心しました」
割と信頼されてねぇ……。
「でも、ハヤトさんはもう少し女の子の気持ちを理解するべきです」
「と、言われますと?」
「例えばです。私が少し暗そうな顔をしていたら、何か聞いてみるとか」
そう言えば思い当たる節がありますね。
あれ、わざとですか。リリーさん、あざとっ!
「例えば何もなくても、何かするとか」
そりゃ、お前の願望だろ。
「……気づいたら行動します」
「そうしてください」
「…………」
「…………」
今日は一体何をすればいいんだろう?
仕事が終わって、糸が切れたように緊張感がなくなった。ちょっと喪失感だ。
「……とりあえず風呂入ってくるわ。外でて汗かいたし」
「じゃあ私は朝ご飯作ってますね」
こいつに飯を作らすのは不味い!
「いや、大丈夫だ!風呂から上がったらすぐに俺が作るから!リリーは休んでてくれよ」
「……分かりましたよ。私はじっとしてます!」
自分が料理下手なのを知ってか知らずか、リリーはプクッと頬を膨らませて言う。
すまんリリー。
料理だけはさせたくないんだ。俺が生死を彷徨うことになるから。
俺が風呂から上がると、なんと食卓には料理が並んでいた。
何処かで嫌な予感はしていたんだけど、まさか的中するとは……。
「驚きましたか?私だって、本気を出せばこれぐらい出来るんです!」
初見なら誰だってすごいと思うよ。
だって、見た目も香りもいいんだから。
しかし、残念なことに、どんな魔法が働いているのか、味だけがダメなのだ。
「……じゃ、じゃあ、食べようか」
俺は覚悟を決めて、スープを口に運ぶ。
「……え、美味い」
あれ?別に後から強烈な味が来る訳でもない……。
「本当ですか!?良かったぁ……お料理、カーミラさんから教わったんです。初めに作った時、皆さん倒れちゃったから」
リリーは最初から自分が料理下手だと気づいていたんだ。
味覚がバカだから、分かってないものだと思っていた。
「うん、ホントに美味しい。腕上げたな、リリー」
「本当に、良かったです。私、花嫁修行なんて何にもしないで飛び出してきたから、何だかずっと申し訳なくて」
へー、リリーも気にしてくれてたんだ。
別に俺がやればいいから気にしなくてもいいのに。
「……まぁ、嬉しいよ。ありがとう」
「そ、そうですか……」
俺は朝ご飯を食べ終えると、何をしようか考える。
「そうだ。久しぶりに二人で遊びに行かないか?」
「いいですね!久しぶりのデート!」
た、確かにデートですけど……。
「じゃあ、行くか」
こうして今日はデートの日となり、何とかリリーには機嫌を直してもらえたのだった。




