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闖入者

 シャムさんとの話が終わり、俺はそのまま家に帰る。


「ただいまー」


 俺が家に入るとすぐにリリーが出てくる。

 なんかこの感じ……イイ!


「あ、お帰りなさい」


 しかし、出てきたリリーの表情は少し暗い気がする。あの後何かあったのだろうか?


「ハヤトさんはどこに行かれていたんですか?」


「ああ、ちょっとな」


 『流石に泥棒大作戦の会議です!』とは言えないのではぐらかす。


「そうですか……私は先にお風呂頂いちゃいますね」


「どうぞどうぞ」


 俺はその間に夕飯でも作りますか。


 リリーが風呂から出てくるとすぐに夕飯だ。

 いつも通り何でもない話をしながら過ごすのだが、今日のリリーはやっぱり少し変だ。


 夕飯が食べ終わると皿洗いをリリーに任せ、俺は風呂に入る。


「ふぅ……」


 今日も一日色々な事があったが、シャムさんと話した事以外は概ね日常となりつつあった。

 しかし、リリーの思わぬ一面をまた知ってしまった。

 あそこまで漢気溢れる子だと俺の立つ瀬がない。いや、かっこいいんだけどね。


 風呂から出るとリビングでリリーと話す。

 そして、ネタが尽きてきたら一日が終了、寝室に行きます。勿論同衾しちゃってます。


「ハヤトさん、もう寝ちゃいましたか?」


「いや、起きてるよ。どうしたんだ?」


「……私、ミルさんに聞きました。男女が布団に入ったらする事、それと……あ、赤ちゃんの作り方……!」


 ま、まさか……ミルがリリーの教育をしてくれたというのか!?アイツはなんて有能なんだ!


「えっと、つ、つつ、つまりそれって……」


「はい……少し怖いですけど、よろしくお願いします……!」


 キターーー!ムードもへったくれもないけど、何故かリリー全く気にしてない!ここからはワイの時代や!


「じゃ、じゃあ、行く、ぞ?」


「は、はいっ!」


 俺は徐々に胸の方へ手を運んで行く。俺は今日、今まで越えられなかった一線を越えるッ!

 お父様、お母様、俺は今、大人の階段を一つ登ります。

 と、ここまで行った所で俺達の愛の巣の戸を叩く悪魔が現れた。


「ハヤト先生〜!いませんか?入れて下さい」


 この声は……ブリュードォォォ!

 俺は跳ね起きて、玄関に一直線。


「こんな夜に何考えてんだ!」


「あ、こんばんは」


「こ、こんばんは……じゃねぇ!お前は一体何を考えてんだ!……というか一番気になるのはなんで家を知ってるのかだけど……」


 本当に情報の流出元をはっきりさせないと大変な事になるぞ。


「ごめんなさい……少し入れてもらえませんか?」


 俺は露骨に嫌な顔をしてしまうが、元生徒をそこまで邪険にする気は無いので一応入れてやる。どうやら訳ありのようだしな。


 リリーもすぐに降りてきて、一緒に話を聞く気のようだ。

 俺は紅茶を出して、話を始めさせる。


「で、どうしたの?」


「えっと……その、ルームメイトの子と喧嘩しちゃって、そのまま飛び出してきちゃいました」


 思いの外しょうもな!そんなん自分でどうにかしろよ!


「今の俺はお前の先生でもないし、特に何かを言う気は無い。そんなもん自分でどうにかしてくれ。ダチと喧嘩なんて多かれ少なかれ皆通ってきている道だ」


 これくらいガツンと言ってやらんといつまでも大人に頼る人間になるからな。俺は概ね正しいはずだ。


「ハヤトさん、この子、ハヤトさんを頼って来てくれたんですよ?もう少しお話を聞いてみましょうよ」


 そう言われると弱る。


「……ブリュード、なんで喧嘩になったんだ?」


 俺が言うとブリュードはパァっと明るくなって再度話し始める。


「キリちゃんが、ルームメイトの子が私のプリンを食べたんです!私も謝ってくれればそれで良かったんですけど、その子は別にいいじゃんって感じで……」


 俺は思わずリリーと顔を合わせて笑い出してしまう。


「お、お前は小学生かよ!いや、今時小学生でもそんな喧嘩しないか」


「小学生って単語は良くわからないですけど、バカにされてるってことは分かります!」


「ま、まぁまぁ……それはね、ブリュードさん、貴女かそのルームメイトの子が大人になるしかないんですよ。こんな大人になるのは嫌かも知れないけど、妥協したり、迎合したりして解決していくしかないんです」


 ごもっともな正論でございます。

 一番楽な生き方だわな、迎合主義。


「で、でも……」


「それなら喧嘩すれば良いじゃん。キリも確か実践剣術科だろ?古来より意見がぶつかり合うときは勝負と決まってる」


 子供の内は喧嘩すれば良い。俺達だってこの間ガチの勝負をした。

 面倒臭いが、立派な解決法の一つだろう。


「ハヤトさん、そんな事言っていいんですか?」


「いいんだよ。俺はもうこいつの先生じゃない。友達ってのが一番近い」


 既に結構ナメられてるしな。


「という訳で話は終わりだ。出て行け」


「「流石に酷い!」」


「待て待て。俺は個人の都合だけで言ってるんじゃない。部屋に置いて来たルームメイトがお前が帰ってこないことを心配するだろ?」


 まぁ個人の都合九割だが。


「た、確かに……」


 リリーには若干見抜かれているようでジト目で見られているが、今は無視だ。


「だろ?さっさと帰ってやれって。それで明日にゃ、仲直りか勝負だ」


「そう、ですね。私寮に戻ります……だけどその前に一つだけ」


「何だよ?」


「お二人の関係って何ですか?」


 あ、全く頭になかった。これどうしよ。本当の事を言うべきなのか?


「私、ハヤトさんの婚約者です」


 リリーさん躊躇いねぇ……まぁやましいことは……さっきまではなかった。


「えぇ、そうなんですか!?前はミル先生といい感じだったのに」


「ミルさんもハヤトさんの婚約者です」


 マジで躊躇いねぇ!重婚ってのは世間体的にどうなんだ!?


「あ、そうなんですね。それなら納得です」


 あ、倫理的にもセーフなんですね。

 少なくとも俺がブリュードだったら驚かざるを得ないな。


「じゃあ、私帰りますね」


「おう、仲良くやれよ」


「はい、ありがとうございました……また来ます!」


「来んな!」


「いつでも来てくださいね」


 リリー、お前はそれでええんか?またさっきみたいに邪魔されたら、俺はもうどうなるか。


 ブリュードを見送った後は何も致さずに寝た。

 もうアレな事が出来る雰囲気は微塵も残っていなかった。

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