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戦争の目的

「それで今回はどのような御用件かのう?」


「…………」


 口を割ろうとしない勇者。愛国心が強いのかな?


「エリナ、装置を切って奴等を殺しに行くか」


 俺には分かる。この人、本気で笑わせにきているつもりなのだ。今に魔王ジョークとか言い出すぞ。


「そ、それだけはやめて下さい!!」


「魔王流の冗談が通じん奴じゃな。儂は無用な殺生を嫌う。そのために各国と条約なんぞというかったるい物を結んだのじゃ。残念な事に其方の国とは結べておらんがな」


 エリノアさんは物憂げな顔で溜息を吐き、言葉を切る。


「じゃから儂は穏便に事を済ませたい。魔王としては勇者の挑戦を受けるのは当然の事だと思うておるし、今回の戦いを仕掛けてきた事にはとやかくいうつもりはない。しかし、行軍の理由が聞きたいのじゃ。これは今後の儂等の行動方針に関わるもので、改善するべきものならこちらも善処するつもりじゃ。ここまでご理解頂けたかのう?」


 俺もこれは是非聞きたい。

 前からきな臭いとは思っていたが、これだけの騎士が動いたという事は勇者の一存ではなく、もっと上の人間からの意思だと思った方が納得が行く。

 自意識過剰と思われるかも知れないが、俺は俺を中心とした周りの人間が狙われていると思ってしまうのだ。


「……私自身何も知らされていないのです。ただ魔王を討て、と」


「どこからの命令じゃ?」


「……軍務大臣殿です……」


 やはりおかしい……レガリアで一体何が起きているんだ?

 今代の魔王が強力無比である事は大陸中に知れ渡っている筈……そんな魔王にわざわざ喧嘩を売ってくるというのはとても得策だとは思えない。

 だとすると……全く分からん。


「まぁやはりと言ったところじゃな。あれ程の数の兵を動かすとなると大臣クラスの承認が必要じゃろうからな。しかし、目的が見えん。お主は何か知らんのか?」


「いえ、本当に何も知らないのです。ただ魔王を討てと言われてここまで来ただけなのです」


 これ以上勇者さんに何かを聞いても有力な情報は得られないと判断したエリノアさんは早々に勇者さんを釈放して、お帰りいただいた。


「これにて状況終了じゃ!各自好きにしてくれてよいぞ!」


 とりあえずこの疑問は俺の胸の中にしまっておこう。今はとにかく家に帰りたい。


「それとハヤト。お主には新たな任務を言い渡す」


 おいおい、今度はどんな面倒臭い任務をふっかけられるんだ!?


「学術都市スカーリアのスカーリア総合学園に潜入し、伝説の魔法書を奪取してくるのじゃ!」


 おいおいおいおい!それは流石に御免被りたいたいぞ!


「ちょっと待って下さいよ!流石にそれは無理でしょう?すごい厳重な警備の元、管理されているって聞くじゃないですか」


「そんな事は知っておる。じゃから一ヶ月という長めの期間をとってやろう」


 時間とかそういう問題じゃないと思うんだが。


「第一なんでそんな物が必要なんですか!?」


「あれは人間の為の本ではないのじゃ。あれは魔族用に著された物で数世代前の勇者との戦いで戦利品として持ってかれたのじゃ。それが流れに流れてどういう訳か学術都市に落ち着いたという訳じゃな」


「いやでもね。いくらなんでも流石に無理でしょう。そこら辺の貴族の屋敷に忍び込んで掻っ払ってくるって訳じゃないんですよ?帝都の城の宝物庫から物を盗むくらいの難易度ですよ、多分」


 今回ばかりは捕まる気しかしない。これが表沙汰にでもなれば俺は社会的立場を一気に失う。


「そうか……でも困るのう。あの魔法書には破壊魔法というどんな魔法でも相殺する事が出来ない魔法が記録されていて、もしあれを読める人間の手に渡ったら大変な事になるのじゃ」


 そういう言い方はずるいと思います。

 そこで俺は一つの折衷案を出す。


「…….分かりました、やりましょう!ですが、シャムさんを連れて行かせて下さい。彼女は暗殺のエキスパートでしょう?それなら気配操作は俺より上手いはず、俺はシャムさんの補助という形で行かせて下さい」


 これなら俺は比較的安全に仕事が出来る。こういうのはやっぱり本職じゃないと。


「それもそうじゃな……分かった。シャムに伝えておこう。シャムを呼び戻すのにも時間が必要だから、出発の日は追って伝える」


 という事はとりあえずは家に帰る事が出きるという事だ。あー、助かった。さっさとエリナの『テレポート』で帰ってしまおう。


「じゃあ、そういう事でよろしくお願いします」


 俺はダッシュで部屋を出て、入り口にいたエリナと『テレポート』で家に帰還する。


「ただいまー!」


「お帰り……ってその格好どうしたの!?」


 俺はミルに言われて自分の姿が女のままである事に気づく。


「あー、やっちまった!ミル、この魔法解除できないか!?」


「その魔法、変身魔法でしょ。それなら出来ると思うけど……」


 そう言ってミルは一旦言葉を止め、ニヤッと笑う。


「しばらくはそのままでもいいんじゃない?どうせなら皆に見てもらおうよ!」


 あ、終わった……。

 パーティーメンバーに俺には女装癖があると勘違いされた瞬間だった。

 またまた更新が大幅に遅れてしまいました。申し訳ございません。


 この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。


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