グローズさんの正体
「ハヤト殿、ハヤト殿〜!どこですか!」
「ああ、グローズさん。どうしたんですか?」
「勇者一行が進軍を始めました。どうやら魔法騎士の魔力が少なくなってきたようです」
「エリノアさんの魔力はどうなんですか?」
「半分程再生に使われたようですが、戦闘に支障はないかと」
年下に対しても敬語を使うという丁寧さ。俺は同僚だと思ってるから敬語を使ってないけどなんだか申し訳なくなってくる。
やはり娼館に行くような人とは考えられないよなぁ。
「そうですか……話は変わるんですが、偵察の途中に娼館に寄りませんでしたか?」
「ああ、ええ、娼婦の方が外で怪我をなさっていたので、手当てをして送り届けていたのです。何故それをハヤト殿が?」
グローズさん、超いい人じゃん。疑った俺が間違ってた。
「……グローズさん、本当に申し訳ありませんでした。やっぱり俺が間違ってました……」
「え、え?それはどういう事ですか?ハヤト殿?ハヤト殿〜!」
最早合わせる顔もなし。
俺は準備も終わったので三人のいた大広間に戻る。
「おお、ハヤト、どこに行っておったのじゃ。既に聞いているとは思うが、敵が進軍してきたいる。儂等もそろそろ平原で待ち構えるとしよう」
エリノアさんは黒いマントをたなびかせて、玉座から立つと、威厳たっぷりに、
「魔王の領地に無許可で踏み入る不届き者を成敗する!お月様が許しても、この儂は見逃さないのじゃ!」
何故に金さん風!?
「「おお〜!!」
これを見て拍手をするエリナとグローズさん、本当に今回の戦争大丈夫か?
そして三時間後。
「魔王様、敵軍が目視出来る距離まで近づいて参りました!御準備を」
俺たちがグローズさんの報せを聞いた時、魔王城の時と同じような振動がした。
どうやらおっ始まったようだ。
「何じゃ、この振動は!?」
「上をご覧下さ〜い!」
俺が言うと、三人が上を見て声を上げる。
「なるほどのう。飛空挺か」
こいつのリアクションはつまんねぇなぁ……。
「あれが飛空挺か!?砲撃も出来るとは大したもんじゃのう……」
そうだよ、俺が求めてるのはこういうリアクションですよ!わざわざ隠した甲斐があったってもんよ。
「ハヤト殿は先程アレを仕掛けていたのですか?」
「ええ、まぁ。アレは自動操縦システムがついているので、砲撃も自動なんですよ」
「何とも便利な機能ですね!これで数は減ったと考えていいのでしょうか?」
「そうじゃのう……まともに当たれば一発じゃろう。あれは何発程撃てるのじゃ?」
「大体二十発ぐらいですね」
百人ぐらいは削れるかってところか。
「よし!シャムの分は削れると考えていいじゃろう!これならば余裕かも知れんのう……!」
いやいやいやいや、一人頭、百人倒せって、結構難しいと思いますよ?
「我々も前線を上げましょう!」
「そうじゃな!全軍、進軍せよ!」
あんたの他に三人しかいないけどな。
俺たちの進軍と入れ替わるように超弩級大型強襲飛空挺が引っ込んで行く。
敵の数は目算四百弱、飛空挺の砲撃でかなり気絶してしまったようだ。
「敵軍の将よ!前に出てこられよ!」
エリノアさんがすごい声量で言うと、相手側の敵将、つまりは勇者と思われる人が出てくる。
品行方正そうな女勇者さんだ。ユリシアさんタイプと言えば分かりやすいか?
「貴方が魔王ですか?」
「如何にも、儂が魔王エリノアである!」
「……それが魔王軍の全戦力ですか?」
「?そうであるが、何か問題でも?」
「私たちを侮辱しているのですか!?それにこの奇妙な仕掛けは一体何ですか?攻撃を受けた兵は気絶しているだけで外傷はない……これも侮辱ですか?」
「そうであるかどうかなど、どうでいいじゃろう。第一、儂に教えてやる義理はない。何でもかんでも人に聞くのではなく自分で考えられよ!」
いいセリフですなぁ。魔王感が出ていなくもない。
「くっ……分かりました。そちらがその気だと言うなら、恨みはありませんが、行かせて頂きます!」
恨みはありませんって事は国の命令か?
ウチの領地への襲撃といい、やっぱりレガリアは何かあるな。
「勇者ルシエナ・アストレアス、行きます!」
レガリアの方のアストレアス家か!?面倒臭い事になったな。
しかし、今そんな事を考えている暇はない。
勇者が突っ込んでくると、その後ろから騎士たちも突っ込んでくる。
「まずは私がお相手仕る!『色褪せぬ栄光の地!」
グローズさんが詠唱のようなものをすると、グローズさんの後ろに光の粒子が集まり、人の形を何人も作る。
「あれは何だ!?」
「グローズはリッチでな、どこで死んだかは覚えておらんそうじゃが、遠征で大部隊が魔物の大軍に襲われて壊滅して死んだ事は覚えているそうじゃ。その時の部隊長がグローズで、自分の無念、というより部下の無念を受けてリッチになったようじゃ。魔物に成り果ててまで、部下の無念を晴らそうとするとは誠、義理堅い奴よ。後ろに引き連れているアレはその時の部下たちだそうじゃ」
グローズさんはそんな思いでここまで生きて来たのか。俺はさっきまでなんて思い違いをしていたんだ。
こんなイケメンでいい人など他にはいない……!
グローズさんの魔法?のようなものによって戦況は楽観視は出来ないがかなりいい方向に向かっていった。
何せ、グローズさんの部下たちは何度倒されても復活するのだ。
これはリッチの膨大な魔力量によるものだろう。
勇者の仲間は魔法使い以外は変わっておらず、変身魔法の有り難さが実感できる。
エリノアさんとエリナの魔法も凄まじく、敵を蹴散らして行く。
こう客観的に見てみると、俺が一番働いてないように思えてくるが、気のせいだろう。
限界突破も使ってフルに体を動かしているから、断じてそんな事はないのだ。ないったらない!
二時間に及ぶ戦闘の末、魔王軍が勝利した。
魔力が尽きれば気絶してしまうので戦いは驚くべき速さで終了する事となった。まぁ魔力は回復する手段がないから当然と言えば当然だ。
魔力を回復といえば、魔王軍には魔族がいないよね。魔族の領地を守ってるのに。
こちら側の被害はグローズさんが気絶してしまった事ぐらいだ。
この後する事と言えばもう一つだろう。
気絶していない勇者を縛って、お話を聞くのだ。
俺たちは勇者を丁重に城内にご案内した。
更新が二日おきになることがありますが、ご了承下さい。
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