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二人の覚悟

「リリー……その、重大なお知らせがあるんだ。俺とミルとリリーの三人で少し話せないか?」


 帰ってくるなり、私にお知らせがあるというお二人。

 一体どんなお知らせだろう?


「いいですよ。こちらにどうぞ」


 私は自分の部屋に二人を案内する。

 しかし、さっきからなんだろう。二人の視線が下に下がりがちで、気まずそうな顔をしている。

 こういう時は大体後めたい事情がある。私もなんだか嫌な予感がしてきた。

 勿論顔には出さない。


「それでどんなお話何ですか?」


 私は部屋に着くと、椅子に座ってもらい、話を始める。

 それにしても何故この配置なんだろう。

 配置というのは私がハヤトさんとミルさんの向かい側ということだ。

 つまり二人は並んでいるのだ。丸テーブルなのに。

 これが表している事を推理すると……一体何なんでしょう!?


「あの、落ち着いて聞いて頂きたいんですけど……俺たち婚約してもよろしいでしょうか?」


 ああ、幻聴がする……仕事で疲れてるんだな、私。


「……差し支えないようでしたら、もう一回言って頂けると有り難いです」


「……俺たち婚約してもよろしいでしょうか?」


「げ、幻聴じゃない!?」


 久々に受け止めきれないヤツ来たぁぁぁぁぁ!!?

 それってつまり私との婚約は無しって事!?

 私飽きられちゃった?嫌われちゃった?私は捨てられちゃうの!?


「つまり私との婚約は白紙に、と……」


「え?何でそうなるんだよ。この国って重婚ありだろ?」


 あ、そうだった。


「そうでしたね。それなら大丈夫ですね……ってそんな訳ありません!」


「見事なノリツッコミ!」


 と、ミルさん。ミルさんも当事者ですねよ!?


「えっと……本当、何ですよね?」


「うん、本当の事。私からハヤトに告白したんだ。お嫁さんにして下さいって」


 ハヤトさんからじゃなかったんですね。

 ここでほっとしてしまう私。


「それで俺がOKしたんだ。ミルにはこの世界に来た頃から世話になってきたし、俺も少なからず意識してた。だから軽い気持ちとかじゃなくて、本気なんだ!両方好きっていうのは俺の国じゃ、倫理的にダメなんだけど、この世界に来て俺も少しずつ価値観が変わってきてる。だから婚約を認めて欲しいけど、リリーが嫌だったら、俺たちは婚約しない。俺との婚約も見損なったんだったら解消する。俺とミルにはそれだけの覚悟がある」


 私はハヤトさんとミルさんが婚約する事自体は嫌ではない。というか暖かく迎え入れてあげるべきなのだ。第一夫人となる私としては。

 だけど、心のどこかでハヤトさんを独占したいという気持ちがある。

 ずっと私の側にだけ居て欲しいっていう気持ち。


 ハヤトさんの価値観の変化というのは往々にしてある話で、環境が変われば考えもそれに影響される。

 今回の二人の講師生活っていうのが、もしかしたら何か影響を与えたのかもしれないが、それに対してとやかくいう権利も……なくはないのだろうけど、言うつもりはない。


 だけど、この件はしばらく考える時間が必要そうだ。


「……お二人のお気持ちは分かりました。今日一日考えさせて下さい。明日の朝までに答えを出します」


「分かった……よろしく頼む」


「私も、私もハヤトと同じ気持ちだよ!だ、だから好きになっちゃった事を悪いとは思ってない……よ……」


「分かってますよ。なのに、何でそんな今にも泣きそうな顔をしてるんですか。別に誰も悪い事はしてませんし、これはそういう次元の問題ではないでしょう?だから……そんな顔しないで下さいね?」


「ゔ、ゔん……ありがとう……」


 そう言って私は部屋を出る。

 そう、これは誰も悪くないのだ。あの二人からしたら女の子を複数人娶るというのは不義理な事なのかも知れませんけど、この世界の貴族の人間からしたら普通の事だ。


 ましてや私は本来なら政略結婚をさせられるはずだった身、こんな素敵な日々本当は訪れるはずがなかった。

 そこにただもう一人お嫁さんが加わるだけのこと。

 しかし、しっかりと区切りは着けておきたい。


 うん、朝までなんて必要ない。今夜ケリをつける!

 更新が二日おきになることがありますが、ご了承下さい。


 この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。


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