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私の修業

 ハヤトさんが出て行って早一週間、私はいつもと変わらず生活して……いる訳もなく、テンションの低い日々を過ごしている。


 昨日から自分を変えようと、魔法の修業に打ち込んでいるが、全然身が入らない。


「でもこのままだと私、役立たずなんだよなぁ……」


 そう、私は戦闘面でハヤトさん達に劣っているのだ。

 元々神官は派手な役割ではないので、目立たないのだが、周りがああだと更に磨きがかかる。


 しかし、私はもうこれ以上能力は上げられないと考えている。

 現行の神官魔法の中で最高難度の蘇生魔法は使えるし、成功率もかなり高い。


 努力する余地があるとすれば、剣術はお父様から教わったアイゼナッハ流だ。

 これは護身程度に身につけたもので、完璧という訳ではない。


 こうなったらユリシア姉様に教わるしかないか……そういえば、トウカちゃんが何日か前から修業していると聞いたからそれに参加させてもらおう。


 思いついたらすぐに行動するのがいい。

 私はトウカちゃんの下にいって約束を取り付けた。


 これで私は変わる!



「あのぅ、リリーさん。申し訳ないですけど、その剣術完成されてますよ。もうこれ以上教えることはありません」


「え!?でも私にはハヤトさんみたいな動きは出来ませんよ?」


「いやいや、だってあれは化物でしょ。人間と化物が同じように戦えますか?」


「そんな事言ったら可哀想ですよ……でもそうなったら私はどうすればいいんですか?」


「えっと、リリーさんってレベルはいくつですか?」


 私はカードを見て確認する。


「三十二ですね」


「じゃあ、やる事は明確じゃないですか。レベル上げですよ、レベル上げ!」


 レベル上げですか……しばらくやってないな。


「でも神官のリリーさんだけじゃ、面倒臭いと思いますから、私も手伝いますね」


「ええっ!?そんな、悪いですよ!」


「いいからいいから!私も丁度、実戦訓練がしたかったんですよ」


「……じゃ、じゃあお言葉に甘えて」


「それじゃあ、適当なクエストを受けてレベル上げしちゃいましょう!」


 この日からレベル上げが始まった。

 トウカちゃんと過ごす時間は楽しく、あっという間に二週間が過ぎて行った。



「トウカちゃん!今、レベルが四十になりました!」


「やりましたね!これで私との差は五ですよ!」


「いえいえ、四分の三ぐらいはトウカちゃんのお陰ですよ」


 これはお世辞抜きに実際そうなのだ。

 私が敵を一体倒す間にトウカちゃんは三体を瀕死にする。

 その瀕死の三体にトドメを刺すことで、私は効率四倍でレベル上げをしていったのだ。

 私、お姉さんなのに本当に頭が上がらない。


「そうですか?そう言って頂けると嬉しいです」


 本当に礼儀正しいというか、ここまで来ると何某かの信念を感じますよね。それとも単に私が姉として受け入れられていないんでしょうか?

 私がこんな事を考えながら、喜びに浸っていると、背後の注意が散漫になったようで、敵に気付けなかった。


「リリーさん、危ない!」


 トウカちゃんは私の背後に回り、魔物の腕を掴み、投げ飛ばす。この時、妙な事に地面に凄まじい凹みが出来た。


「ふぅ……危なかった……」


「トトト、トウカちゃん!今の一体何ですか!?いくらトウカちゃんと言えども地面を凹ますほどの力はないはずです!なのに何故投げ飛ばしただけで、こんな凹みが出来るんですか!?」


 私もある程度の体術は知っているが、ここまでの力が出せる投げ技は知らない。

 それが単純な膂力だけで為せる技だとしたら、それはそれで凄いことではあるけど。


「今のはですね、桐生家に伝わる千の技能の一つです。私は常人より異常な反応速度をしているという話は前にしましたよね?これはどうやら遺伝からくるものらしくて、御先祖様にもこの異常が見られる人が少なからずいたらしいです。時は戦乱の世でしたから、この体質を生かして、桐生家の御先祖様は武術を極められました。今のはその中の一つという訳です。御先祖様は凄いんですよ?城に攻め込もうとする一万もの敵兵をたった一人で受け止め切った、なんていう逸話もあるぐらいで……まぁその人はその戦いの中で死んじゃったんですがね……とにかく、私の体質が前提となってくる技が多いので、そんな顔をしても習得出来ませんよ」


 え、私そんな顔してましたか?

 確かに力は欲しいですけどそれなら仕方ありませんね。


「それと、もし体質が関係ない技を教わるなら兄さんに頼んで下さいね。兄さんも少なからず技を継承してますから」


「本当ですか!?今度ハヤトさんに頼んでみます!」


「まぁ兄さんはちょくちょく、地味に使ってますよ。アイゼナッハ流とちゃんぽんにしてますけどね。本当は桐生流の武術と併用してこそ、使える技なのに」


 ちゃ、ちゃんぽんとは何でしょう?

 まぁでもこれでハヤトさんと一緒に居られる口実……もとい、理由が出来た!

 私個人としては口実が出来なければ会えないというのは寂しいことではありますけどね。


 ああ、ハヤトさんに会える日が本当に待ち遠しい!



 そして『黎明人類』との戦いが終わって、ハヤトさんとミルさんが帰ってくる日、私は衝撃の告白を受ける事になる。

 私はその事をつゆほども知らないまま、二人の帰る日を待つ事になる。

 更新が二日おきになることがありますが、ご了承下さい。


 この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。


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