私vs正宗
時間は『黎明人類』戦から一ヶ月前に遡る。
私、桐生刀香は正宗と訓練に励んでいた。
『ねぇ、まだ終わらないの?私もう休みたいんだけど』
冒頭からやる気のない刀で本当に申し訳ないのだが、これが万事なのだ。
この間は協力するとか言ってたくせにもうこれだ。
私の思った通りやはりダメなヤツだった。
「はぁ……じゃあ寝てていいよ。今は魔力と気を飛ばす訓練だから正宗は関係ないし」
『じょ、冗談だよ!そんな溜息つかないで!』
アンタがやる気ない態度取ったんでしょ。
「じゃあ槍になってくれない?」
『はーい、槍、槍……って槍?剣じゃなくて?』
「桐生流には槍術もあるの。相手に合わせて武器を変えていくっていう贅沢なことが出来る状況だし、これを機に迅速な形状変化も練習しておきたくて。まぁそれには正宗の協力が必須だけどね」
『……よ、喜んで協力させて頂きます』
もし正宗に顔があったとしたら、さぞかし引きつった顔をしているのだろう。
そんな事を考えているうちに正宗は槍に変形した。
「うん、いい感じ」
『そりゃそうだよ。トウカが思った通りに変形してるんだから』
私は試しに色々振ってみると、そんなに問題はなかった。
『トウカはすごいねぇ。剣術と槍術の他にはどんな武術が使えるの?』
「他の武術だと、徒手空拳での武術全般、中でも柔道は得意かな」
『柔道ってことは完全に私は用無しだね。空手とかとも違って、殴る訳でもないし』
「相手をなるべく怪我させずに無力化するには結構便利な体術なんだよ、柔道」
『そんなに柔道が好き?』
「まぁね。柔道は身長体重が無くても相手を投げ飛ばせる技もあるから体格差とかも関係ない気がしてきちゃうんだよね。実際は大いにあるけど。でも今のわたしにはステータスがあるから体格差なんて関係ないね」
『……大した自信ね……その自信私が打ち砕く!』
「は?」
この子は急に何を言ってるんだろう?
『私が今から人間の形になって、トウカと柔道で一本勝負する。トウカが負けたら、金輪際柔道は使わないで頂こう!』
というかそんな事が出来るのか。
「それ私がやって何か意味あるの?」
『ある!これにトウカが勝ったら、無際限の協力をすると誓うよ。もっと言えば、主従関係を結んでもいい!』
そこまで言うか。
しかし、私に武術で勝とうとするその慢心、ここからで叩き折っておくのが責めてもの情けという物……。
「……分かった。そのルールで行こう」
私が言うと正宗は一瞬で私と同身長程の女の子に変形する。
ちなみにシルバーブランドの超可愛い子だ。
「言っておくけど、私の柔道はトウカの世界で言うところのオリンピック優勝者と同じレベルのもの、勝とうとなんて思わない方がいいよ?」
「御託はいいよ。この金貨が落ちた瞬間にスタートだよ」
金貨が空中でくるくる回りながら落ちる。
「行くよ!……へぶッ!」
始まって二秒で方がつく。
「な、なんで……!?」
やはりこの子アホだ。
さっき私がステータスの事を言っていたのに、まだ気付いていない。
「だから、ステータスの差があるでしょ」
「あ」
ホントにアホだ。
「じゃあ、早速命令を聞いてもらうかなぁ……」
「ど、どうせ変な命令するんでしょ!?か、体は好きに出来ても、心まで好きに出来るとは思わないでよ!?」
正宗の頭の中で私はどんな命令をしてるんだか。
「まずはメイド服に着替えて下さい。カーミラさんみたいなヤツね」
「くっ……わ、分かった……!」
恥ずかしいのか、正宗の顔が僅かに赤くなる。
別にそんな顔される程の命令してないじゃん。
「じゃあ、それで皆に自己紹介しようか。『この度トウカ様に仕える事になりました、正宗です』って」
「そ、それは無理というか、普通に紹介して欲しいというか……」
流石に嫌なのか、顔を下に向ける正宗。
「ぷっ……冗談だよ!普通に紹介するって。だけどメイド服は着用ね」
「……本当にこれ着て紹介するの?」
くっ、超可愛い……じゃあ、いいか。
「……やっぱりそれもいいや。正宗はこれから私の訓練とかに付き合ってくれればいいからさ。今回のはそれでチャラね」
「やった!トウカありがとう!」
正宗マジで可愛い。
この後皆に正宗を紹介して驚かれるのだが、それはまた別の話。
兄さんが帰ってくる日が待ち遠しい。
更新が二日おきになることがありますが、ご了承下さい。
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