告白
「やぁやぁ、皆、元気そうで何よりだ。あ、リリーちゃん初めまして、オルクスです。精霊界から見てたよ、色々電撃だったよねぇ、ホントに。僕が逝った後すぐに婚約するからびっくりしちゃったよ」
相変わらずよく喋る人だなぁ、と私が思っていると、ハヤトがオルクスさんに質問する。
「初めましてオルクス、私は裏ハヤトみたいな存在だ。馴れ馴れしいとは思うかもしれないが、私はあいつと記憶を共有しているから普通に行かせてもらう。それで、今回のコレは一体どういうことなんだ?何か知っているのだろう?」
「まぁね。今回の事件とこれから続くであろう出来事は少し複雑でね、精霊界も例外的に干渉することにしたんだよ。早速説明させてもらうと、『黎明人類』は古代に異端な研究をしたが故に奈落に追いやられた人間たちの祖先が中枢を担う組織だ。彼らの目的は究極的には自分たちを追いやった人間の祖先の中心たる支配階級の抹殺。普通はそんな小規模組織が国相手に勝てる訳ないんだけど、面倒な事に彼らは古代の魔法に加え、奈落の絶望的な環境に適応するために進化した驚異的なステータスがある。そして、もう一つ。これは精霊界が干渉する大きな理由なんだけど、僕の上司の精霊王たちの不始末が原因で、闇落ちした精霊王が組織のバックについているみたいなんだ。これによって『精霊魔法』の情報が流出してしまったみたいで、敵はさらに力を強めている。以上が僕の知り得る情報の全てだよ」
何かもう色々よく分からないが、私たちの世界が危ないって事だけは分かった。
しかし、それを知って私たちに何が出来るのだろう?
「そうか……大体は掴めた。積もる話も色々あるだろうが、まずは街の復旧作業だろうな」
毎度毎度戦うとこうなるんだよね。
「ハヤトさん、その前に私に少しだけ時間を下さい」
「ああ、別にいいが、何をするんだ?」
「供養です……街を守って下さった騎士の皆さんはもちろん、この方も話を聞く限り仕方のない境遇です、せめて安らかに眠ってもらうのが神官の使命ですから」
て、天使だ……!私にはリリーの背中に一対の羽が見える!
リリーは青年に近づいて、『神の息吹』を唱える。
「彼の者に祝福あれ」
この魔法は簡単に言うと僅かばかり、対象の運気を上昇されるものだが、死者の旅立ちの際にも使われる魔法だ。
リリーは大通りを進んで行き、どんどん魔法を掛けていく。
「ハヤト、それにしても、よく彼が呪殺具を持ってるって分かったね」
オルクスさんがハヤトに対して感心したように言う。
「それは私も思ったよ。あいつが先に気付いていて、しかも呪殺の対象まで見抜いていた。私はそれを基に行動しただけだ」
じゃあ、さっきの名前なんて口にする必要はないっていうのは私たちのためだったってこと!?
「それならそうと言ってくれればもっと確実だったのに」
「呪殺具の対象は『所持者が最期に聞いた声の主』、つまり私だ。しかし、どうも不死者というのは輪廻から外れているようで、呪殺は無効だったようだ。つまり、あいつは本当はお前を喋らせたくなかったんだよ。まぁ結果的には作戦成功だった訳だが」
言いたいことは分かるけど、このハヤトも随分素直じゃないなぁ。
私たちに喋るなって言えばそれまでなのに。
「そんなことはどうでもいい。リリーの供養も済んだようだし、街の人間も呼んで復興作業を始めるぞ」
こうして私たちは短期間だけではあるが復興作業に参加することになった。
シド襲来から三日後
大まかな復興作業は終了し、私たちはエドナに戻ることとなった。
皆は一足先に家に帰っていて、私とハヤトは『テレポート』の魔法陣を消すために寮の部屋に残っていた。
ちなみにハヤトは元に戻っている。
「床掃除だけとは言え、二度掃除してるのを考えると面倒臭く感じてくるな」
「まぁそう言わずに頑張ってよ。お金も一杯もらえるんだろうし、これも仕事だと思ってね」
「いや、別に掃除をすること自体はやぶさかではないんだが……何故こいつらを部屋に上げた?」
ハヤトが指差す方向にはハヤトの教え子であるヘーゼリッタ・ブリュードさんと私の教え子であるライオス君とミシェーラさんが優雅にお茶を飲んでいた。
「先生、そんな言い方ないじゃないですか。文字通り可愛い教え子がわざわざ部屋にまで来てるのに」
「ヘーゼリッタちゃんの言う通りですよ!ミル先生からもハヤト先生に言ってあげてくださいよ」
「う、うん……そうだね……」
個人的にはこんな状況でも平然としているライオス君の図太さというか、冷静さというか、そういうのに畏敬の念さえ覚えるんだけど。
「大体なぁ、いくら休校になったからって、ゆるりとしすぎなんだよ。まさかブリュード、毎日の訓練を怠ってはいないだろうな?」
「え〜?何ですか、その呼び方。この前はヘーゼリッタって呼んでたのに。もしかして本当は先生の中ではずっとヘーゼリッタなんですか?」
「よしお前、表に出ろ。ハヤト先生がどれくらい強いかその身を持って確かめさせてやる」
ハヤトって生徒たちにはこんななんだ。
なんだか、いつもは見られない一面で面白い。
こうして本当にスカーリア最後の時間が過ぎていった。
「先生、この前は本当にありがとうございました。今日はこれを言うために来たんです」
「いや……まぁ、気にすんな。先生としては当然だろ?」
あらあら、意外とこれは……しばらく放っておこう。
「ミル先生、本当にお世話になりました。お陰で自分の才能にも気付けました!」
「僕もこの一ヶ月間、色々なことが学べました。魔力の訓練も毎日続けますから安心して帰って下さい!本当にありがとうございました!」
「うん、ありがとう……あ、あれ、おかしいなぁ。こんなつもりじゃなかったのに……なんで涙が出ちゃうんだろ……」
やっぱり皆と離れるのは寂しい。
最初は私に人を教え導くなんて出来るのか分からなかったけど、生徒の皆に支えられながらでも、先生をやるってこんなに楽しいことだったんだ。
だから、皆と離れるのが余計に寂しくなる。
『ミル先生本当にありがとう!』
別れは寂しいことであると知っているはずなのに、寂しい。
これは何回経験しても慣れなさそうだ。
「あ、ハヤトもお別れした?」
生徒が帰ってから、しばらくするとハヤトも戻ってきた。
「おう。最後まで生意気な奴だったよ、ヘーゼリッタは」
そう言いながらもハヤトには哀愁が漂ったいる。やはりハヤトも別れが寂しいのだろう。
「へぇ〜、ブリュードさん離れ出来るの?かなり入れ込んでたみたいだけど」
「は?俺があいつに入れ込んでたって!?お前どこに目付けてんだ?確かに個人練習には付き合ってやったが、別に入れ込んでた訳じゃない。単に聖騎士のブリュードさんが怖かっただけだ」
その理由も威張れる訳じゃないと思うけど……。
「怪しいなぁ……手とか出してないよね?」
私はハヤトを挑発するように微笑を浮かべながらそう言う。
「んなもん出すか!!」
あらら、怒らせちゃったみたい。
でも私はさっきから何を言ってるんだろう。
別にこんなことを言いたい訳じゃない……もしかして私、あの子に嫉妬してる!?
ま、まさかね。自分よりいくつも年下の子に嫉妬するなんて有り得ない。
ましてやハヤトとブリュードさんは教師と生徒の関係なのに。
……いや、でもこれは……もう無理かも、抑えきれない!
「……ミル、今度はなんの冗談だ?また、俺をからかってるのか?流石の俺でも本気で怒るぞ?」
後ろから抱きついた私に若干怒気を孕んだ声でハヤトは言う。
「冗談なんかじゃない」
「じゃあ、なんだってんだ」
「…………き……」
「だから何だよ?よく聞こえない」
「…………私、ハヤトが好き」
「ほら、からかってるじゃん」
「違う、本気の方、だよ。人間的とかでもない、恋愛の方の好きだよ」
「はいはい、その辺で勘弁しておくんなまし〜」
ハヤトはまだ冗談だと思っているのか、顔をこっちに向けてくれない。
「……ねぇ、私の顔見てよ」
「いい加減に……すごい演技力だな、マジで」
「……だから違うって言ってるじゃん、この鈍感!!」
私はハヤトに対してここまで大声を出したことはなかったからか、ハヤトはポカンとしている。
「私は本気だよ、ハヤトが大好き!あの時、ハヤトの言ってくれた言葉で救われた。もう少し何かしてくれてもいいかなとも思ったけど、そんなぶっきらぼうな所もハヤトらしくて大好き!料理が出来て、家庭的な所も、面倒臭がり屋な所も、全部、全部大好き!!……だから二番目でも三番目でも、もっと後でもいいから私をお嫁さんにして下さい!」
「…………え、え〜と……本気なんですか?これで後で『嘘でした〜、思春期可愛い〜』とか言われたらもう立ち倒れないぞ、俺」
ホントに鈍感だなぁ。
あんなこと言ったのに。なんか冷静になってきて恥ずかしくなってきた。
「だから、本気だって言ってるじゃん……それとも行動して示さなきゃダメ?」
「い、いや結構です!……それでその、返事とかは……」
「うん、今してくれると嬉しい。あんまり待たされてもアレだし……」
「そ、そうだよな!それにしてもホントに情けないな、俺。こういう事は女の子にやらせるもんじゃないよな」
ここの一ヶ月間一緒に寝ていて、何もない感じだったから心配だったけど、私のこと女の子だと思ってくれてるんだ……!
「うん、決めた……これからよろしくお願いします」
「……え?本当にいいの!?」
「あ、ああ!この世界に来て、右も左も分からない頃に一番世話になったのはミルだし、今でも俺を支えてくれてるからな……あ、でも帰ったら一緒にリリーに怒られような。もしかしたら婚約解消されちゃうかも知れないけど、その時はその時だ!俺が何とかする!」
思い切って告白しちゃったけど、リリーのことがあったんだった。
「……うん、ありがとう!ア・ナ・タ」
「……ッ!?」
ふふっ、すごい照れてる。
「じゃあ、掃除も終わったし、帰ろうか」
「あ、ああ、そうしよう。あんまり遅くなってもあいつらに申し訳ないからな」
「これからよろしくね、旦那様!」
こうして私の婚約成立と相成った。
そして、家に帰って、リリーが泣いた事は想像に難くないだろう。
しばらく更新できず、申し訳ありませんでした!
次回もいつになるか未定ですが、早めに更新出来るよう頑張ります。
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