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破壊光線

 私は家にいた皆をかき集めて、スカーリアに舞い戻った。


 学園を駆け抜け、大通りに出る。

 そこには片手を無くしたハヤトと敵と思われるほぼ無傷の青年の姿があった。


「お、ようやくおでましか。待ちくたびれた……」


「ハ、ハヤト、大丈夫!?何で腕が……」


 私はそう言ったところで奇妙な結界が張られていることに気付く。

 リリーも気付いたようで、一瞬で結界を破る。


「……ハヤト、これ程の相手に良く持ち堪えました。ここからは私たちに任せて下さい」


「ふぅ、また新手かな?まぁいいよ、何人で来ようが相手してあげるよ」


 青年は微笑を浮かべて、余裕そうに言う。


「貴方一体何者ですか?」


「二度も名乗る気はないよッ!」


 青年は『ウィンドカッター』を何発も撃ち込もうとしているようだ。

 ようやく、()()()()を活用できる!


「霧散せよ」


 私がそう詠唱した瞬間、『ウィンドカッター』は次々と消えていく。

 『魔法破壊』成功だ。


「へぇ、面白い魔法使えるんだね。それなんて魔法?」


「私のオリジナル魔法だよ。名付けて『魔法破壊』」


「じゃあ僕もすごい魔法を見せちゃおうかな」


 その時、少年の周囲に何本もの『雷』の槍が現れた。

 雷魔法というのは古代魔法の一つとされていて、今の魔法体系には存在しない属性だ。

 遺跡の資料で見たことがあるが、どのような魔法であるかは載っていなかったので、現在研究所で解析中だ。


 通常使えるはずのない魔法に驚いている私たちに雷槍が襲いかかる。

 私の『魔法破壊』は相手の魔法を知らないと使うことが出来ないので、役に立たない。

 私たちは散開して雷槍を躱す。


「あれ?あの魔法は使わないの?じゃあどんどん行かせてもらうよ!」


「いつまでも受けているつもりはありませんよッ!」


 リリーの支援魔法を受けたトウカちゃんとユリシアさんが斬りかかる。

 しかし、近距離転移で攻撃は躱され、更に雷槍を出現させられる。追撃は不可能だ。


「エリナ、これを使え……オルクスの形見だ」


 その時、倒れているハヤトから剣がエリナに手渡される。いつもは使っていない、見慣れない剣だ。


「確かに受け取った!」


 ハヤトとエリナは一ヶ月程前、四天王になったため、大幅にステータスが上がっていて、身体能力に更に磨きがかかっている。

 これによってエリナは『剣士のセンス』持ち以上の動きが出来るようになったようだ。


 エリナは青年に、というより雷槍に斬りかかる。すると雷槍に剣が触れた瞬間、雷槍が消失する。

 どうやら魔法を斬ることが出来る剣のようだ。


「チッ……またその魔剣か」


「能がなくて申し訳ないが、これが一番効率的じゃろう?」


 私も皆に負けじと上級魔法を撃つが、ことごとく魔法障壁に阻まれる。

 魔法使いとの戦闘はこれが面倒臭いのだ。

 障壁は『魔法破壊』で壊しても瞬時に再生出来るため殆ど壊す意味もない。


「君たち、本当に鬱陶しいね。流石にこの人数を倒すのは骨が折れる。次の魔法で終わりにしてあげる!」


 青年はブツブツと詠唱を始める。

 そんな隙を見逃さない私たちではないが、どこから取り出しか分からない宙に浮く二十本の短剣が行手を阻む。


 これだけの量の物体を動かすのにどれだけの集中力を使うのか想像しただけで嫌になるが、その上にヤバそうな魔法の詠唱までしているのだから、この青年は『本物』だ。


 私は詠唱を妨害することを皆に任せ、相手の魔法に対抗することにする。


「『我は世界の代行者・魔を滅する者なり・万物は流転し・因果の輪廻の元に存在する・されば四元より成る物、全ては我が手で四元に・森羅万象等しく分解せよ』……皆離れて!」


 私は現時点で最強の魔法の詠唱を終える。


「いいよ!真っ向勝負と行こうか!?相伝魔法・改『オルドレアン・バースト』!」


 相手の白い光がこちらに向かってくる。


「『レイ・オブ・デストラクション』!!」


 私も赤黒い光線で対抗する。


「ぐ、ぬぅぅぅ!!?」


「はあぁぁぁ!!」


 両者の魔法は拮抗していたが、私の魔法が微かに押し始める。


「使い過ぎたとはいえ、僕の魔力の上回るか!?」


「……いや、違うよ。皆が私に力を貸してくれてるからだよ!」


 私の背中に魔力が流れてきている。

 皆が私に魔力をくれているのだ。


 私の魔法はとうとう青年の魔法を押し切り、青年の体をごっそり抉る。


「……ハハ、新人類がまさかここまで強いとはね……最後に名前を聞かせてもらってもいい?」


「……私は」


「これから死に行く者に名乗る名など、持ち合わせてはいない」


 ハヤトが少し離れたところから横槍を刺してくる。

 さっきから思っていたが、いつもと口調や雰囲気が違う。

 恐らくこれが入れ替わった姿というものなのだろう。


「いやいやいやいや!何でそんな悪役みたいなこと言うの、ハヤトは!?」


「ミルこそ何を言ってる。こいつは何人も騎士を殺しているんだぞ?」


「……やはり新人類(君たち)は倒すべき怨敵のようだ……」


 そう言ったところで青年は息を引き取る。

 最後までお互いに名乗ることはなかった。


「こっちのセリフだ。時代の遺物となった貴様らはすっこんでてもらうのが一番だよ、旧人類」


「ハヤト、死者に対してそんな言い方は流石に酷いよ……」


「ふむ、気を悪くしたのなら謝罪しよう、すまなかった。しかし、恐らくシドのような『黎明人類』はまだいる筈だ。また何か仕掛けてくるだろうから、対策はしておくに越したことはないだろう」


「何故お前にそんなことが分かるのじゃ?」


「シドの言動からして、最終的な『黎明人類』の目標は現在の全ての国の支配階級の抹殺だろう。そこまで過激にならないかも知らないがな。奴等は古代魔法を使っていたし、俺たちを新人類と呼んでいたから、奴等の正体は古代人と見て間違いない。恐らく過去に何らかの理由で虐げられたのだろうよ。動機はそんなところか?」


 私にはいきなりすぎてよく分からない。

 『黎明人類』という単語さえ、初耳だ。


 私が頭の中を整理していると、懐かしい声がした。


「へぇ〜大した推理だなぁ、ハヤト。しばらく見ない間に何か変わった?」


「オ、オルクスさん!?」


 ふと振り返るとそこには間違いなく、私たちの師匠オルクス・アイゼナッハがいた。

 またまた二日どころか三日になってしまいました、すみません。

 次回もいつになるか未定ですが、早めに更新出来るよう頑張ります。


 この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。


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