黎明人類
ここは任せろ的な発言をしておいた難なのだが、正直マジでヤバいんだよな。
ミルと二人ならいざ知らず、俺だけでは何分持つか分からない。
しかし、やらないことにはスカーリアがめちゃくちゃにされる。それに俺の生徒だってどうなってるか……。
とにかく皆が来るまで、繋がなければならないのだ。
『おいキザ野郎、勝算はどれくらいある?』
『それは私のことを言ってるのか?まぁそれは置いとくして、勝算なら無い。逆に言えば、負けることもない、吸血鬼だからな。体のカケラも残らないような広範囲高威力の攻撃魔法なんかを喰らったら分からんがな』
じゃあ、アレを使えばいいか。
本当はオルクスが帰ってくるまで預かっておこうと思っていたんだがな。
『ふむ、確かに「魔断の魔剣」を使えば、魔法攻撃で死ぬリスクは減るが、あれはさっき言ったような魔法を防ぐことは出来んぞ?面積的に』
『いや、まぁそうだけどさ。やるしかないだろ?』
『そうだな。なんなら前みたいに私が代わってやってもいいぞ?』
『バカ言え、お前は良くも悪くも吸血鬼的なんだよ。仲間との協力に向かないだろ?』
『そう言われればそうだな。まぁ死なない程度に頑張ってくれよ、お前が死ぬと私も死ぬからな。くれぐれもそんなことにはならないように』
『へいへい、お前は黙って寝てな。後は俺がどうにかしといてやる』
『全くお前は勝手だな。起こしてきたのはお前なのに』
『別にいいだろ?どうせあの気配で起きてただろうし、俺とお前は一蓮托生だろ?』
『フフフ、それもそうか。では、いい報告を待ってるよ』
自分と話していると、遂に敵が見えてきた。
俺は魔法の袋からオルクスの形見の剣を抜き、二刀流で構える。
「ふぅ、今日はいい日だなぁ。君もそう思うでしょ、剣士さん」
見たところ、刀剣の類の装備はなし。恐らくは魔法使いだろう。
「いや、最低な部類に入る日だよ。お前の相手なんてしなきゃならないからな」
「別に相手なんてしてくれなくてもいいけどね。僕を黙って通してくれれば、それで終わりだよ」
「そりゃあ、無理な話だろ。お前ここに来るまで、何人殺した?」
「そんなの覚えてやしないよ。それに敵を殺すのは当たり前だろう?昔君達が僕達にしたようにさ」
「何を言ってるんだ?俺達がお前達に何かしたってのか?」
「厳密に言えば、君達の祖先が僕達の祖先にしたように、かな。まぁ細かいことはいいや。どうせ君もここで死ぬんだし」
「やれるもんならやってみな?」
俺が相手を挑発したとき、小さな声が聞こえた。
「え、先生……?」
「バカ、何でお前が!?」
「へー、その子君の生徒なんだ。じゃあ、戦いの邪魔だし、殺すね」
俺は素早く、ブリュードの前に立ち、飛んで来た、岩のような『ファイアーボール』を『魔断の魔剣』で斬る。
すると『ファイアーボール』は簡単に消えて無くなる。
「行け、ヘーゼリッタ!学園の方に逃げろ!」
「は、はい!」
「あーあ、逃げちゃった。まぁいいか……それより君のその二つの剣、どっちも魔剣だね。右は不可視化、左は……ああ、伝説の『魔法使い殺し』の魔剣か」
ほう、そんなにすごい魔剣だったのか。
「よく知らねえけど、お前をこれ以上進ませる訳には行かねえからな。相手して貰うぜ」
「……いいよ、相手してあげるよ。あ、話の流れをぶった斬るようで悪いけど、君はしぶとそうだから名乗っておくよ。僕は『黎明人類』のシド、これからこの世界を変える組織の幹部さ」
また出たよ、面倒臭そうな奴ら。
あー、思い出すわ。エギルと会ったときもこんなこと考えてたっけ。
まぁどうでもいいや。今はこいつを殺すことだけを考えればいい。
「俺は名乗んないぜ。これから死んでいく奴に名乗るのも面倒臭いからな」
「その勇気だけは褒めてあげよう。耐えてよ、新人類!」
シドはそう言うや否や、八発同時にデカめの『ファイアーボール』を撃ち出して来る。
全てを斬る訳には行かないので、適当に躱そうとする。
しかし、瞬間、体がグッと押さえつける感覚に襲われる。
すんでのところで『ファイアーボール』は躱すことは出来たが、かなり危なかった。
「どうだい、今じゃ残っていない『重力魔法』と『弱体化』の混合は?味わったことない感覚だろう?」
「そうだな、マジで危なかったよ。だけど俺のステータスを持ってすれば、そこまででもない」
「その威勢、どこまで続くか見ものだね!」
『弱体化』というのがどうやら持続的な魔法のようで、俺は防戦一方という程ではないにしても防戦を強いられる。
しかし、これは思ったよりキツい。シドは回復魔法も心得ているようで、斬っても回復されてしまう。
魔力も切れる様子は無く、ミルと同程度の魔力を保有してると思われる。
「ふふふっ、アーハッハッハッ!それそれ、どんどん行くよ!」
俺は適度に魔法を斬ったり避けたりしながら、反撃の機会を窺うが、一向に隙が見えない。
しかし、本当に魔力の羽振りがいい。ミルでもここまで魔力を使いまくる事はないだろう。
「ん?君は吸血鬼なのか。じゃあ、あの魔法が使えるな」
今度は何を撃ってくるつもりだ?
「『魔封じ結界』!」
シドがそういうと同時に、半径百メートルぐらいの結界が形成され、俺の動きは更に鈍る。
「これは効くでしょ?この魔法は高位の魔物を狩る時に使われた物でね、吸血鬼退治にも使われたらしいよ」
こりゃ本格的にヤバいわ。
『おい、やっぱりお前の出番だわ』
『フッ、言うと思った。作戦は?』
『作戦なんてねえよ。「限界突破」も使って全力全開で相手しろ。とにかくあいつらが来るまで持たせろ。俺の体にどれだけ負担が掛かってもいいからやるんだ。俺には「限界突破」の制限時間を超えられねえから、戦闘特化のお前に後は任せる』
『ふむ、俺に「狂戦士化」をしろと言うのか?』
『何だその名前。どうでもいいから後は任せたわ。不甲斐ねえけど俺には荷が重すぎたみたいだ。まぁ謹んで受けてくれよ、この「大いなる時間稼ぎ」をな……』
俺の意識そのまま切り替わっていく。
「承った」
「ん?なんか言った?」
「いや?……さぁ、続きをしようか!」
選手交代で第二ラウンドを始めよう。
只今立て込んでおりまして、更新が二日おきになることがありますが、ご了承下さい。
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