またしても襲撃
二日間の休みが明け、心機一転、講師生活後半戦がスタートした。
今日から二週間は魔力についての授業に入っていく。
いくら無詠唱が出来たと言っても、魔力調節はガバガバでまだまだムラがあると言わざるを得ない。
そのための授業という訳だ。
「はい、今日からは魔力についての授業です。まずは体の中で魔力を循環させて、魔力を感じてみましょう」
こればかりは正直言って、楽する方法はない。スパイラル的にやって魔力操作に慣れていくしかないのだ。
「次は魔力を指先に集めて、魔法を発動してみましょう」
魔法の手順は大まかに三段階だ。
一、魔力を集める。
二、使いたい魔法を強くイメージ!
三、魔力を使って、魔法を出力、ドッカーン!
って感じだ。
これを刹那の間に行って、より早く発動するのが、戦う魔法使いの目標だ。
そして、私の生徒は二段階目が出来始めていて、何とか三段階目に漕ぎ着けている。
つまり、今はほとんどフィーリングで、一段階目をまともに教わっていないという状況なのだ。
実際に生徒たちは一から三段階目までに約二秒掛かっている。
私で、コンマ四秒、オルクスさんで、コンマ二秒というようにベテランの魔法使い(私は精々一年修業しただけだが)なら一秒以内に発動できるのだ。
「はい、よく出来ました。だけどそんなにノロノロ魔法を発動していると、私が皆の敵になったときに皆は殺されてしまいます。だから魔力操作の訓練をして、そうならないようにしようってのが今日から二週間掛けてやる授業の内容だよ」
『…………』
あちゃ〜、怖がらせすぎちゃったかな?
「ま、まぁこれは一朝一夕でどうにかなる事でもないから在学中はずっと頑張ってもらえればいいかな。これから二週間は訓練方法を教えるってことだね。二週間の技術的な目標としては異なる攻撃魔法を同時に二つ発動する事だから皆頑張ってね」
『は、はい……』
「じゃ、じゃあ早速始めよう!今回重要になってくるのは精密な魔力操作だよ。魔法を早く発動しようとするのは一旦やめて、しっかりとイメージしてから発動するようにしよう。二つの魔法を同時に発動するときは右手と左手に魔力を集めるといいよ」
まぁ魔法の同時発動のミソは同時に魔法をイメージする事にあるのだが、何でも先に教えてしまうのは良くないので、そこは自分自身で気付いてもらう。
「うーん……やっぱり難しいですね、同時発動」
「申し訳ないけど、これに関しては右と左で別々に魔力を集めるのを意識してやるしかないんだよね。それ以外は各々で頑張ってもらうしかないの。ごめんね」
「あ、いえ、先生に文句があるとかじゃなくて……あ、そうだ!先生の同時発動みたいです!」
何か気を使わせてしまったみたいだ。ここは優しいミシェーラさんに応えて、演示しますか!
「分かった!見ててね……まず二つ同時!」
『ファイアーボール』と『ウォーターボール』が私の前に現れ、飛んでいく。
『おお!』
「次に三つ同時!」
『アースウォール』を発動し、最初の二つを撃ち込む。
『おお!!』
「最後に四つ同時!」
最後は巨大な『アースウォール』に残りの三属性の上級魔法を撃ち込む。
『おおっ!!』
やろうと思えば、同時に六つの魔法を操れるのだが、属性的にキリがいいので、四つまでにしておいた。
久しぶりに集中して魔法を使ったが、感覚は鈍っていないようで安心した。
「皆も頑張ればこれくらいは出来るようになるかもね」
『はい、頑張ります!』
「よろしい!じゃあ、訓練を再開しよう!」
結局最後は二週間は特に何もない、つまらない授業をしてしまった。
まぁ魔力に関する訓練だから仕方がない部分ではあるけど。
「皆、一ヶ月間ありがとう!素人の私も皆のお陰で楽しい時間を過ごせました。本当にありがとう」
「先生、本当に行っちゃうんですか?」
「そうですよ、先生の授業すごく分かりやすかったのに」
なんていい子たちなんだろう。私にはもったいない生徒を持った。
「ごめんね。私本職は冒険者だし、仲間を待たせてるんだ。だから行かなくちゃいけないの」
「……そうですね。ごめんなさい、困らせちゃうこと言って……じゃあ皆、せーの!」
『先生、本当にありがとうございました!』
「……うんっ、ありがとうございました!」
久しぶりにうるっと来てしまった瞬間だった。
しかし、講師生活は平和なままでは終わらなかった。
明日スカーリアを発つというところで事件は起きてしまった。
私とハヤトは明日の帰国に向けて、荷造りをし、部屋を掃除していた。
今はそれが終わって、ティータイムとなっていた。
「ハヤト、この二週間どうだった?」
「ん?まぁ意外と楽しい日々ではあったよ、色々新鮮で」
「そうだよね、私も楽しかった。でも最後はあんまりいい授業が出来なかったな……」
「ぷっ、あははは!お前の授業がいい授業じゃなかったら、俺の授業は一体何なんだよ。お前はすごい先生が来たって話題になるぐらいにはいい授業をしてたんだよ」
確かに前半は中々良いアイデアを思いついたとは思うが、そこまでかな?
「ムカつくなぁ、そんなにいい授業はしてなかった気がするって顔。まぁお前がそう思ってるんだったらいいけどさ、素人がここまで出来るってのはすごいことだと思うぜ、ホントに」
ふふふ、多分これ褒められてるんだよね?
やっぱりハヤトに言われると嬉しいや。
こうして、二人でこの街最後のひと時を過ごしていると、けたたましくて、うるさい、けれどこの世界に来て、一回聞いたことのある嫌な音が鳴り響く。
そして、それに続いて、
『緊急警報、緊急警報!正体不明の人物が街の北門を破壊し、侵入!現在、大通りを進行中!騎士及び戦闘可能な教員は直ちに戦闘配置に付け!全ての生徒及び一般人は至急スカーリア総合学園に避難!繰り返す……』
という警告音声。
……デジャヴだね。
まぁ来ることは分かっていたけどね。
「うわっ、本当に来たよ。アレスさんの言ってた通りだな」
「そうだね。狙いはこの学園の禁書保管室の更に奥にある、古代の魔法書だね」
「そんな物さっさと燃やしちまえばいいのに。魔法陣を使用した人間が廃人になったって噂だろ?」
「ところがどっこい、その魔法書はあらゆる物理及び魔法攻撃が効かないという訳だね。そんなんじゃ、『次元斬』ですら通るか分からないね。そんな物を一体何に使うんだろう?」
「知らね。どうせ俺たちが考えても仕方のないことだろ。さっさとお仕事……おいミル、感じるか、これ」
「う、うん……今私も捉えられたけど……これ本当にヤバいね。私たちで倒せる相手かな?」
「いや、マジのマジでやって、行けるかなって奴だな、これ。いや〜……これ逃げね?」
「さ、冗談は程々にして行こうか」
「あー、怖い怖い!もう自分より強い相手と戦うってのが怖いね」
「そんなこと言って、本当は引けないこと分かってるんでしょ?」
今も自分の生徒がどうしてるかでそわそわしてるんだろうし。
「は?何の事だし。別にお前が『テレポート』さえしてくれれば……あ、皆呼ぼうぜ」
「そうだ!そうだった!私たち何故か忘れがちだけどその手があった!改良してあるから、ここから家までの消費魔力ってそこまででもないんだよね」
「じゃあ、何で寮住まいしようなんて言い出したんだよ」
そこの切り込んで来るか!?
「そ、そりゃあ、寮生活がしてみたかったから?」
「何故に疑問形……まぁとりあえずさっさと『テレポート』の魔法陣を描いてくれよ。お前が皆を呼びに行ってる間に俺が奴を食い止めておくから」
ほら、気になってるんじゃん。
なんだか妬けるな。
「それなら初日に描いてあります!描いたことさえ忘れてたけど」
「……お前実はバカだろ?」
あのオルクスさんをして天才と言わしめた私になんて失礼なことを言うんだろう。
「細かいことは気にせずに行ってきます!それっ『テレポート』!」
「行ってこい。そんでもって、さっさと帰ってこいよ」
私は『テレポート』の光に包まれて、家へと転移した。
只今立て込んでおりまして、更新が二日おきになることがありますが、ご了承下さい。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
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