私たちの休日
講師生活が始まって、二週間が経とうとしていた。
授業の進捗としては、クラスの全員に上級魔法の無詠唱までを習得させるに至った。
習得が一番早かったのはやはりライオス君だった。その次に早かったのはとんでもない追い上げを見せたミシェーラさんだった。
ミシェーラさんの成長の早さには目を見張るものがあり、私自身も教えていてとても楽しかった。
そして、今日と明日は学園がお休みの日。
詰まるところ、とても暇なのだ。
私は寮の自室で目が覚めた。
自室と言っても、隣では寝息を立てて、ハヤトが寝ている。
そして、私はこう思うわけだ、『何故ハヤトはここまでいつも通りに寝られるのだろう』と。
そりゃあ、私も慣れてきて今は平気だが、最初は結構緊張していたのだ。
しかし、ハヤトは何の問題も無いとでも言うように初日から隣ですやすやと寝ていたのだ。
ここで一応カミングアウトしておくと、私はハヤトが好きだ。ライクじゃなくて、ラブの方で。
前に一緒に寝たときはハヤトも結構ドキドキしていて、これは私も『ワンチャンあるんじゃない?』なんて期待してしまっていたのだが、リリーとの仲が親密になってからはそういうのが全くない。
これでは妾にもならないじゃないかと思っている。
もしかして、もう色々シちゃったのだろうか?
「はぁ……」
ついつい、ため息なんてついてしまいながら、一時間ぐらい悶々としていると、ハヤトが起きた。
「おはよう、ハヤト」
「……おはよう……やっぱりこの感じ慣れないな。お前もそうなんじゃないのか?」
これは意外と意識してくれてるってことでいいのかな?
「ううん!私はもう慣れたよ」
「そうかぁ?嫌になったら言えよ?俺はソファで寝るか、布団持ってきて敷くから」
そんな事には絶対になりません。
「じゃあ、朝ご飯作るからちょっと待っててくれ」
普通に家庭的なところもポイント高いよね、個人的に。
私たちはご飯を食べて、散歩に出掛ける。
この世界では暇になると本当にやる事が無くなるのだ。
ハヤトは遊び道具を持ってきたようだけど、それはもう先週やり尽くした感があるのでなしだ。
見方によればこの散歩もデートみたいなモノ、何だか、ワクワクしてしまう。
「それにしても本当にこの街は広いよな。本当に何でもある」
「何でもないと学生が不便になっちゃうからね」
「それもそうか」
しばらく歩いていると、ハヤトの生徒に会った。
「よう、ブリュードも買い物か?」
ブリュードさんの娘さん可愛いな。
何か嫌な予感がする……!
「あ、先生。先生も買い物で……お隣の方はどなたですか?」
これは怪しいな……ブリュードさん、ハヤトに気がある気がする。私を見る目に敵対心が垣間見える。
「実践魔法科の講師のミルです。ハヤトとは同じパーティーで、一緒に赴任して来たの、よろしくね」
「あ!あの名講師のミル先生何ですか!?学校中で話題ですよ。優秀なクラスを担当しているとは言え、上級魔法の無詠唱を二週間で可能にしたって」
話題になってるんだ。嬉しいような、恥ずかしいような、よく分からない。
「そんなに大した事ないよ。ブリュードさんが言う通り、皆が優秀だっただけ。それに単体の無詠唱なら才能がなくても努力すれば、出来る事だよ」
「そ、そうなんですか。魔法のことはよく分からないんですけど、お仕事頑張って下さい!先生もミル先生に負けずに頑張って下さいよ!それじゃあ、また」
そう言って、ブリュードさんはさっさと歩いていってしまった。
「あいつ俺に対しては特に何もなしかよ……」
「ふふふ、挨拶してくれるんだから悪い子じゃないよ」
「お前は褒められたからいいけどよ、俺にはなんかこう、上からなんだよな。俺のことを講師だと思ってるんだか、さっぱり分からないよ」
ハヤトはもうちょっと人心について知った方がいいね。
あれは誰がどう見たって、信頼してる感じでしょう。
こんな感じで散歩をしがてら、外のレストランで食事をして、部屋に帰ってきた。
別に何も変わったことはなかったが、私はそれでいいと思ってる。
私はこんな代わり映えしない日常が好きなのだ。
ハヤトと一緒にいられるだけで私は割と幸せだ。
もっと先を求めてはいるけれど、早急に進める必要はない。ゆっくり自分のペースで、と言うヤツだ。
「明日は何しようかねぇ……」
「また、ゲームで遊べばいいんじゃない?」
「そうだな。今は俺が一勝勝ち越してるから、ここからもっと引き離さないとな」
「え?私が勝ち越してるんだよ。最後のスピードで私が勝ったんだよ!」
「は?あれはそうだけど、その前のヤツで俺が勝ってるだろ」
「じゃあいいよ!一旦仕切り直して明日やり直そう!」
「望むところだ!ボコボコにしてやんよ」
「頭脳派の私に勝とうなんて百年早いよ!」
幾ばくかの沈黙の後、私たちは顔を見合わせて、
「「…………あははは!!」」
「何か俺たちバカみたいだな。ゲームの勝った負けたで一喜一憂してさ」
「いいじゃん、それで。じゃあ、今日は明日に備えて寝ようか」
「そうだな、おやすみ」
うん、私たちはこれでいい。
だけどやっぱり一つだけ聞いておきたい。
「ねぇ、ハヤト。私のこと好き?」
「は?急に何だよ。そりゃ、好きだよ。それに尊敬もしてる」
「そう……私はハヤトのこと、大好きだよ!」
只今立て込んでおりまして、更新が二日おきになることがありますが、ご了承下さい。
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