講師生活二日目
今回もミル目線です。
「皆頑張ってる?」
「あ、先生。やっぱり上級魔法は一節詠唱ですら難しいです……」
ライオス君が悔しそうに言う。
普通はそうだよね。私は最初から詠唱無しでやれって言われたけど。
ここで私は無詠唱組に教えた方法と同じ物を教え、実演して見せた。
一節詠唱が出来た人からこれをやってもらうことにする。
中級魔法も上級魔法も根本的には変わらない。発動するにはイメージの固定化が一番だ。
「詠唱を改変するってのはよく聞きますけど、あれって普通に無詠唱出来る人がやる事じゃないんですか?」
「そうだけど、自分が一番分かりやすい詠唱にするって事は、その魔法について考えるでしょ?それが魔法の理解に繋がって、最終的には無詠唱も出来るんじゃないかって思ってるんだよ」
「はぁ……何かもう俺の分からない領域ですけど、とりあえずやってみます!」
私は上級魔法組が練習を再開したのを見届けて、再び無詠唱組の方へ向かう。
早い人はもう自分で詠唱を組み上げていて、その回あってか、無詠唱も出来ていた。
ミシェーラさんという詠唱は組み上げられているのに、無詠唱で発動出来ていない子がいた。
私は魔力操作が出来ていないのではと思い、調べさせてもらう事にした。
「え?……これは……!?」
「あの、先生、どうかしましたか?」
果たして出来ていない原因は魔力操作だと思われるのだが、彼女の場合それは仕方の無い事だった。
彼女は詠唱で魔力を抑えることによって魔法を発動していたのだ。
そう、抑えているのだ。
本来なら魔力はかなり意識して出力するものなのだが、私のような膨大な魔力を保有する人間は魔力の蛇口が大き過ぎるので、細心の操作をしなければ魔法が発動しないのだ。
そして、恐らくミシェーラさんは自分が膨大な魔力を保有していることを知らずにとんでもない魔力を出力している。
つまり極めて高度に組まれた本来の詠唱でないと、彼女は魔法を発動することが出来ないのだ。
「ミ、ミシェーラさん。貴女、冒険者ギルドのカードって作ったことってある?」
「は、はい。親が厳しい人で外に出してくれなかったんです。それで学校に行きたいって言って、やっと許可をもらったんです。それまでは独学で魔法の勉強をしてたんですけど……な、何か間違ってましたか?」
これは人類の損失だね……。
「これから言うことをよく聞いてね。貴女にはとてもすごい魔法の才能があって、膨大な魔力を保有してるの。だから放課後になったら一緒に魔法の練習をしましょう」
「ぷっ、ふふふ……先生、不出来な私を慰めてくれてるんですね。前半はともかくとして、先生の個人指導は受けさせてもらいますね。じゃあ、引き続き頑張ります!」
全く信じてられてない……まぁ放課後になったら自分のすごさ加減が分かるからいいか。
私たちが話しているうちに無詠唱組の他の生徒は次々と無詠唱出来るようになっていた。
私の教えた方法は間違っていなかったようだ。
私は再び上級魔法組に向かう。
指導が足りなかったようで、一節詠唱を出来た人がそもそも少なかった。この時間で一節詠唱を出来た人はライオス君だけだったようだ。
そんな彼でも詠唱作りには苦しんでいるようだった。
一節詠唱の指導ならともかく、詠唱作りに関してはどうすることも出来ないので、頑張ってもらうしかない。
結局のところ今日はミシェーラさん以外の無詠唱組の中級魔法の無詠唱達成までしか出来なかった。
しかし、最終手段として私が作った中級魔法の魔導書の魔法陣は使わなくて済んだのだから、素人の指導としては良い成果なのだろう。
こうして二日目の授業は終了した。
放課後になると、自主練する生徒も多いようで、訓練場を占領することは出来なかった(別にする必要もないのだが)。
「じゃあ、始めようか」
「はい、よろしくお願いします」
「早速話に入るよ。貴女はまだ信じていないみたいだけど、本当に貴女はすごい魔力の持ち主なんだよ。そのせいで貴女は思うように無詠唱が発動出来ないんだ」
「よく分からないですけど、結局私は何をすればいいんですか?」
「貴女は今まで天才的な魔法の才能によって、自分の中の魔力を制御せずに魔法を使ってきたんだよ。だから貴女には自分の魔力がどれ程の物か確かめてもらうよ。具体的には私のこれから言う通りにしてくれればいいよ。ここまではいいかな?」
「まだ、信じられないですけど、先生がそこまで言うならやってみます」
ようやく少し信じてくれたか。
それにしても良く自分の魔力を把握せずにここまでこれたよね。普通だったらあり得ない。
「ではまず体の中で自分の魔力を循環させて見よう。今から背中に魔力を流していくから、そこを起点に循環させてね」
「わ、分かりました!」
あー、これ本当に魔力を操作したことないな。
私はゆっくりと背中に魔力を流していく。
それにしても本当にすごい魔力だ。
しばらく使われてなかった魔力が凝り固まってる。
普通は万遍なく使われる物だからこんな事はあり得ないのに。まるで巨大な岩を相手にしてるようだ。
「ん、うーん……か、感じます!魔力の流れっていうか、少しずつ流れていっている感覚があります!」
よし、ここからは一気に魔力を流してこの魔力の塊を砕こう。
「これから一気に魔力を流すけど、驚かないでね」
私は許可も得ずに、思いっきり魔力を流す。
「い、いやぁぁぁ!!?何これ、一気に魔力が……だめ……溢れる!?」
「ダメ!そこで自分の中で抑え込む!それが貴女本来の魔力だよ、しっかり向き合って!」
とは言っても結構キツそうなんだよね。
「せ、先生ぇ……もう、出てきちゃいそう……」
流石にいきなり過ぎたかな?今日はここまでか。
「分かった、今魔力を抜くから」
私は魔力操作で魔力を抜いていく。
普通は他人の魔力なんて操れないものなんだが、しばらく魔力操作を使っているうちに出来た。
「どうだった、自分の魔力は?すごい物だったでしょう?」
「はい、本当にすごかったです……私自分の魔力を操れるようになりたいです!」
「うん、私はミシェーラさんが満足するまで手伝うよ」
「ありがとうございます。これからよろしくお願いしますね、先生!」
こうして講師生活二日目が終わった。
またまた二日どころか三日になってしまいました、すみません。
次回もいつになるか未定ですが、早めに更新出来るよう頑張ります。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
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