講師生活初日
今日は講師生活初日だ。
生徒たちに見限られないようにしないと!
昨日はしっかり教本を読み込んだし、魔法の詠唱も覚えた。
私はそんなに悪くない授業が出来るんじゃないかと思っている。まぁやってみなきゃ分からないけど。
「本日付で皆の講師になったミルです!これから一ヶ月よろしくお願いします!」
「うわ〜、先生超美人だね!」
「ああ、なんで先生なんかやってるのか分からないよな」
「先生、付き合って下さい!」
「あ、あはは……」
なんか思わぬ方向で話題になっちゃいそう……。
「えーと、早速授業を始めさせてもらいます。皆第三訓練場に出て下さい」
出だしは悪くないはず……これなら皆と仲良くなれるかも!
「皆は中級魔法までなら出来るはずだよね?じゃあ『ファイアーボール』の三節詠唱をやってみよう。一応言っておくと『精霊よ・我が意を糧に・炎球を為せ』だよ」
私が言うと、皆次々と詠唱していく。
流石に中級魔法までの三節詠唱は学園の実践魔法科の受講に必要な条件なので、簡単に出来ている。
「うん、皆流石だね。じゃあ次は一節詠唱をやってみよう。スキルを習得している人は簡単だと思うけどやってみて」
一節詠唱はスキルを習得していないなら『炎球を為せ』、習得しているなら『ファイアーボール』だ。
これも皆簡単に出来るようで、何でもないように発動出来ている。
「じゃあ、最後は無詠唱でやってみよう」
半分ぐらいの生徒はすぐに発動出来ているが、四分の一は少し時間が掛かっている。残りの子たちはそもそも出来ないようだ。
やっぱり私はかなり才能に恵まれていたようで、普通なら中級魔法の無詠唱でも半年弱ぐらい掛かるものらしい。
「うん、皆一旦止めていいよ。これは出来てる人にも聞きたいんだけど、魔法を発動するのに大事な事って何かな?」
「その魔法がどういう物かを強くイメージする事です」
さっき、私が無詠唱を指示したときに、殆どタイムラグ無しで発動した、優秀そうな男の子が言う。
「その通り!でもイメージしているのに出来ないってときはどうしたらいいと思う?」
「え、えっとそれは……」
「そんなときにやればいい事なんて、詠唱ありでもいいから魔法をひたすら使うしかない、これが答えだよ。個人個人に才能とか飲み込みの早さとかの差はあれど、結局は練習あるのみなんだよ、その練習をサポートする為に私たち講師がいる。だから遠慮なく私たちをこき使ってね。魔法が見たくなったり、練習に付き合って欲しかったりしたら、いつでも呼び出してくれればいいから。私、非常勤講師で暇だし。今日はとりあえずこれで終了!明日からはもっとビシバシいくからね!」
『はい、よろしくお願いします!』
「ただいまー」
「お帰り。結構遅かったじゃん。何かあったのか?」
「どうすれば魔法を分かりやすく教えられるか考えてた」
「へー、初日から真面目だなぁ。やっぱり尊敬するわ、ミルのそういうところ」
こういう事をぽろっと言ってよく恥ずかしくないな、といつも思う。
「ハヤトこそどうだったの?」
「いや、俺は何にも。まぁ才能有りの奴らが結構いたよ」
最初は嫌がってたけど、結構いい顔してるじゃん。
今のハヤト、楽しそうだよ、なんて言えやしないけど。
「じゃあ、私お風呂沸かしてくるね」
「いや、俺がやっといた。先入っていいぞ、俺は飯作るから」
やっぱり気分良さそう。今日は結構気が効くし。
「……ありがとう。じゃあ、先にお風呂頂くね」
「おう」
そして、お風呂に入り、ご飯食べ、寝ることになるのだが、私は今、ハヤトと同じベッドで寝ている。
私はハヤトが今度こそ変な気を起こすんじゃないのかと思っていたが、全くそんな事はなかった。
そんなに私は魅力がないのだろうか。
私はモヤモヤとした気持ちのまま眠りについた。
講師生活二日目が始まった。
「今日は二つのグループに分けるよ。昨日無詠唱で発動出来た人は『ヘルフレア』の五節詠唱をやっててね、出来る人は三節詠唱と無詠唱をやってていいから。ちなみに五節詠唱は『生は死に・全ては灰塵に・我は火を統べ・魔を為す者なり・彼の者を焼き尽くせ』、三節詠唱は五節詠唱の後半の三節だよ。中級魔法を無詠唱出来なかった人は今日中に使えるようにさせるから向こうに移動しよう!」
「お言葉ですが、先生、そんな簡単に出来るんですか?」
昨日の優秀な子、ライオス君が挑戦的に言ってくる。この子は賢そうだからまだ私を値踏みしているのだろう。
「私を誰だと思ってるの?天才魔法使いミル様だよ?」
「ハハハ、先生、それ自分で言います?」
「まぁとにかく!大丈夫だよ、最終手段も用意してるし」
「ふーん……じゃあ俺は練習始めます」
「うん、サボらずにしっかりやってね」
私はライオス君が練習し始めたことを確認して、無詠唱組の指導を始める。
「昨日は無詠唱が出来るようになるには魔法を使っていくしかないって言ったけど、ただ魔法を使うだけじゃ、効率が悪い。だから今日は効率いい方法を教えるよ」
とは言っても私は適当にやってたら出来たって感じだから本当に効率的かは分からないけど。
「まずは私の魔法を見ててね。『炎球を為せ』!」
私が唱えると私の手に大きな火の玉が出る。
「はい、これが一節詠唱だよね。私はスキルを習得していないけど『ファイアーボール』と唱えても発動出来る。これは何故だと思う?」
「先生がしっかりとしたイメージを持って、魔法を発動しているからです」
「そうだね。この考えで行くと詠唱を好きに弄っても、魔法が発動するってことになるよね。じゃあ試しに皆が一番分かりやすくなるように詠唱を弄ってみて」
しかし、生徒たちは困惑しているようで思うように詠唱を改変出来ていない。
「……じゃあ私が試しに詠唱してみるね。『炎よ・燃えよ・燃えよ』!」
もちろん魔法はしっかりと発動する。
「こんな変な詠唱でも魔法は発動する、だから皆がイメージしやすいように詠唱を作ってみればいいんだよ。引き続きやってみよう」
これでは無詠唱に繋がらないんじゃないか?と考える人もいるだろうが、大事なのは魔法について考え、どういう物か理解すること。
それさえ出来れば、どれくらいの魔力を使えばいいのか、魔力をどこに集めてどう出力すれば魔法になるとか、というのは自然に分かってくる。
その辺の細かい理論の説明は研究魔法科の先生に任せればいいのだ。
私は無詠唱組が試行錯誤し始めたのを見届けて、上級魔法組の方へ向かった。
只今立て込んでおりまして、更新が二日おきになることがありますが、ご了承下さい。
今回からミル視点の講師生活が始まりました。
これから何話かミル視点が続きますが、どうぞお付き合い下さい。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
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