俺の講師生活
前回の投稿で総合ポイントが100を超えました!
二度目となりますが、これも皆様の応援あっての結果です。本当にありがとうございます。
引き続き頑張っていきますので、応援よろしくお願いします。
この度、非常勤講師となった俺ではあるが、俺が教えることは勉強ではなく、剣術なので、身構える必要はない……らしい。
今日は初日なので気を引き締めなければ!
とは言っても初日から屋外訓練場で剣術指導なんだがな。
「あー、この度、一ヶ月間実践剣術科の講師になった、ハヤトだ。よろしく頼む」
『よろしくお願いします!!』
うわっ、やる気あんなぁ。
まぁこの授業とる時点で騎士とか冒険者になりたいって奴ばかりらしいんだけど。
「じゃあ、早速屋外訓練場に出てくれ」
『はい!!』
マジで緊張してきた。これは間違ったこと教えられないわ。
「これからお前らには剣術の訓練をしてもらう事になるんだが、全員どれくらいできるのか見たいから、この時間は俺と一対一で戦ってもらう」
あー、皆さんも緊張してるんですね。僕もですよ。
これもカリキュラムの内だからやんなきゃなんだよね。
「じゃあ、端から本気でかかってきてくれ。ホントに本気でいいからな?殺す気でこい」
どうせ殺せませんけどね。
こうして、俺は順番に四十人分の太刀筋を見ていったんだが、もう皆さん本当に優秀で、先生びっくりです。
優秀なクラスだけあって、変なクセがついている奴もいなかった。
後は細かな修正と新しい型を教えれば、剣術としては完璧だ。
中でも一番強かったのは、これまたびっくり、ブリュードさんって女の子だった。
もう太刀筋がしっかりしてて、剣術もほぼ完成していた。しかし、まだ応用が出来ていなくて、型通りの攻撃しかしてこない、教科書みたいな子だった。
「はい、皆ありがとう。今日の授業はここまでだ。明日からは新しい剣術を教えるからよろしく」
『はい、ありがとうございました!』
こうして講師生活が始まった。
最初の一週間は剣術をとりあえず教える。
既に習得している生徒にとっては無駄でしか無いと思うかも知れないが、ここで細かな修正が出来ると剣術の完成度は一気に上がる。
次の一週は本格的な修正だ。
普通剣術はそれ通りにやれば、最も効率的な動きが出来るように考えられている。
ダメな剣術家は抜け目だらけの剣術を創始してしまうが、少なくとも俺が教えているアイゼナッハ流はオルクスが百年をかけて研鑽をした完璧な剣術なので、そんなことはない。
つまり、体にきっちり覚えさせれば、それだけで素人目には十分素晴らしい動きが出来るという事だ。
ここまでで、もう二週間が経ってしまった訳だが、少々面倒臭い生徒さんもいる。
先程話したブリュードさんだ。
まさかとは思ったが、どうやら彼女、メルシャの聖騎士団長のブリュードさんの娘さんだそうで、こっちも下手な動きが出来なくなった。
それに加えて、個人レッスンを頼むとまで言われてしまって、時間外勤務もいいところである。
「ブリュード、非常勤講師の俺じゃなくても優秀な先生方はごまんといるぞ?だから俺じゃなくて、他の先生方の所に行った方がいいんじゃないか?」
「いえ、そんな事ないです。先生って、アストレアス王国のキリュウ公爵でしょう?」
「なんで、そんな事知ってんの!?」
「噂になってますよ。新任の非常勤講師のハヤト先生とミル先生はすごいって」
どこから情報が漏れたんだろう……。
「まぁでも、ミル先生はすごい分かりやすく教えてくれるって評判ですけど、ハヤト先生はそこまで上手い訳じゃないですよね。あ、普通に上手いんですよ?そこまでじゃないってだけで」
褒めてんのか貶してんのか、一体どっちだ?
「ホントか?良かった、安心した。俺、お前のお父さんと面識があってさ、少し前に世話になったんだよ。そんな人のお子さんに粗相があっちゃいけないと思って結構頑張ってたんだよ」
「父は自分の方がお世話になったと言ってました。彼がいなかったら、街は壊滅してたって」
「それは俺の強さってよりも、飛空艇のお陰で戦闘員を早く輸送出来たって方だろうな。だから俺の強さにはそんな期待すんなって。あ、飛空艇って言っちゃいけないんだった、他言無用で頼む」
「そうだったんですか。でもハヤト先生は強いって父は言ってましたよ。私が見る限り、剣術も完成されてますし、体捌きも精錬されてました」
「あ、そう、ありがとう。無駄話はこれぐらいにして指導に戻るぞ。お前にはカリキュラム外の応用を教えてやるんだ、本気で取り組んでくれよ」
「もちろんです。よろしくお願いします!」
まぁこんな交流もあって、面倒臭かったが、思いの外楽しい毎日が続いていた。
三週目、四週目は二人組になって、やっと実践ぽい物になっていく。
二人で剣を交えて、どこが上手く行ってないとか、ここは自分にあってないから調整しようとか、そういう事を考える時間だ。
そして、俺は生徒に上手く行ってない点を指摘したら、調整してやったりする役割だ。
これが意外と大変で、俺も手探り状態だ。
「先生、最近速く剣を動かそうと努力してるんですが、先生みたいに速くは動かせないです。どうすればいいですか?」
また、ブリュードか。
しかし、俺は前から違和感を感じていたから丁度いい機会かもな。
「分かった。ちょっとこっちにこい」
「分かりました」
「なんでお前は剣が速く振れないと思う?」
「え、それは私がまだ未熟で訓練が足りないからです」
「うーん、それもそうなんだが、もっと根本的な理由がある。そもそも剣術って言うのは、男が使うためにあるからだ。だから体のつくりが違う女が普通に振ろうとしても、上手くいかないのは当たり前なんだ」
「じゃ、じゃあどうしろって言うんですか!?まさか、女は剣を持つなと言いたいんですか!?」
ブリュードはすごい剣幕で怒ってくるが、女性差別をする気は毛頭ない。
「い、いや、そうじゃない!まずは落ち着け。ふぅ……これから俺がすることは断じてやましいことではない。いいな?」
「?……分かりました。何をするんですか?」
「まずは構えろ」
俺が言うとブリュードは何も言わずに剣を構える。
「うん、綺麗だな。これから調整のために体をベタベタ触るが、いいか?」
「は、はい、大丈夫です……」
「じゃあ、ごめんな」
女には男ほどの筋肉がない。
だからどうしても剣を振る速さはおそくなってしまう。
しかし、女は男とは違って、関節がとても柔らかい。
剣術でもそれを生かせば、上手い具合に速く、しなやかになっていく。
そうすれば、女性でもパワーは出ないが、手数に優れた優秀な剣士になれる。ユリシアさんなんかはいい例だろう。
「ほい、終了だ。そのまま動かないで、剣を貼って見てくれるか?」
「わ、分かりました……何これ!?前より全然速くなってる!?」
よし、成功!案外上手く出来るもんだな。
「じゃあ、その姿勢を忘れるなよ。ほれ、お前も皆のところに戻って訓練だ」
「先生、本当にありがとうございます!先生もやっぱりすごい人です!」
「やめてくれ、そんなに褒めても何も出ないぞ」
やっと分かってくれたか。
それにしてもオルクスに人体の構造を教わっといて良かった。本当に無駄じゃなかったみたいだ。
「皆、今日までありがとう。俺はこの一ヶ月楽しかった」
「先生、本当にもう言っちゃうんですか?もっと色々教えて下さいよ!」
「いや、俺そもそも非常勤講師だから、毎日お前たちに教えてるこの状況はそもそも異常だったんだよ。つまりは他の先生が来るまでの繋ぎなんだ」
「えー、先生普通にすごい人じゃん。もっと俺たちに教えてくれよ」
「お、お前ら、俺のことをそこまで……」
『あ、そういうのはキモいんで……』
「やっぱりお前ら大っ嫌いだ!……まぁでも一ヶ月間本当によく頑張ってくれた。来月からも頑張れよ」
『先生、本当にありがとうございました!!』
「……おう!」
こうして、俺の講師生活に幕が降りた。
只今立て込んでおりまして、更新が二日おきになることがありますが、ご了承下さい。
今回、ハヤトの講師生活を書かせて頂きましたが、次からはミルの講師生活を書かせて頂きます。
ミルの講師生活が何話か続くと思います。ハヤト目線より、色濃く書いていきたいと思っておりますので、ご理解の程よろしくお願いします。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
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