四天王就任
『ついにCブロック決勝戦です!勝ち残ったのはやはりこの人、竜殺しのガイナス!しかし、一方は誰が予想したでしょうか、無名の剣士ハヤトです!』
ここですごい歓声が聞こえる。
『私から言う事はもうありません。ここで何かを説明するというのも試合を遅らせることになりますからね』
『そうですね、私も試合が見たくてうずうずしてます!皆さんも待ちきれないようなので、早速始めさせて頂きます!試合開始!』
「剣士ハヤト殿、貴君は実に素晴らしい身体能力とそれに劣らない技術を持っている。しかし、それだけだ。見たところ特殊な戦術などは一切使ってこないようだ。それなら私の敵ではないよ」
全身鎧で身を固め、剣と盾を持つ重装兵士は言う。
「……ふむ、私の強さを見抜けぬとは所詮それまでの者ということか……残念だ、ガイナス、私はお前を尊敬していたのだがな」
「……これ以上話すのも無粋というものだな。私たちは剣で語るしかあるまい」
「そこだけには共感するぞ」
私が言い終えるのと同時にガイナスは距離を詰めてくる。
恐らく、ガイナスの方がレベルは上だ。
こうなるとパワーでは吸血鬼の体を以ってしても、互角になる。しかし、だからといって私が技術で負けてるとも思えなし、さっきは挑発したが、それを見抜けないガイナスではないはず。
その状態で自分が上だと言うのだから、何か策があると見るのが妥当だ。
私はとりあえず剣で相手の攻撃を受ける。
やはりパワーは互角、いきなり鍔迫り合いになる。
「かかったな、『ヘルフレア』!」
私はガイナスが魔法を使うとは思わず、攻撃をもらう。
「今まで温存しておいた甲斐があった。お陰で上手くいった、これで終わりだろう」
「ガイナス、戦闘中によそ見は良くないぞ?」
私はガイナスを背後から斬りつける。
ガイナスはまともに喰らって、少し吹き飛ぶ。
「な、何故普通に動けている!?確かに当たっていたはずだ!炎の中に影が見えていた!」
「さぁ、どうしてだろうな?ほら、立てよ、ガイナス。戦いはまだ終わっていないだろう?私を退屈させてくれるなよ?」
「……舐めるなッ!」
ガイナスの剣はしっかりと私を捉えるが、私は煙のように消えてしてしまう。
私はそのまま背後に回って、同じ箇所を斬りつける。
流石に高い鎧を着ているようで、二太刀いれて、やっと穴を空けられた。
「何故だ、何故だ!何故攻撃が当たらない!?」
「どうしてだろうな?まるで化かされたようだろう」
この技を初めて見る相手に使うのは本当に楽しいな。
しばらくこの手でガイナスと遊んでいると、流石に気付き出す。
「ようやく分かった、気闘法だな!?しかし、その技は失われたはず、どうして貴君が使える!?」
名前はともかく、それは知らなかった。
私はユリシアに教えてもらっただけだからな。
だが、失われたというのは分からない話でもない。
この技の習得の仕方はユリシアが気を流し込んで、どういう物か分からせるという物だったしな。
常人が分からないない訳だ。
まぁユリシアもオルクス辺りに教わったのだろうが。
「……それは秘密だ。それに、そろそろ終わらせるとするか。私もいい加減飽きてきた。しかし、驚いた。この技がどういう物か言い当てたのはお前だけだよ」
「そうか……私もまだまだ修業が足りんな……降参する」
ふむ、潔い判断だ。
『ガイナス選手の白旗により、試合終了!Cブロック勝者は無名の剣士ハヤトだ!いえ、もう無名ではないですね、勝者は四天王ハヤトです!』
『いや、本当に驚きました。彼は圧倒的ですよ、ガイナス選手を相手取って、殆ど攻撃を喰らっていない、これは凄まじいですよ。気闘法という未知の技の存在もありましたが、それを差し引いても彼は圧倒的です。まさに四天王に相応しい方と言えます!』
『そうですね、私も惚れ惚れしてしまいました!それではハヤト選手にはこれより魔王城へ向かって頂きます。北口に馬車を用意しておりますので、ハヤト選手はお乗り下さい。観客の皆さんはどうぞそのままお待ち下さい。司会、実況は私、ヘリアが、解説はベルムドさんでお送りしました!』
私はとりあえず、馬車の中であいつと入れ替わった。
これからの事はどうせ面倒臭い、戦いを押し付けた、あいつに全てやらせる事にしよう。
俺は気付くと馬車の御者さんに起こされていた。
どうやらあいつは試合に勝ったようで、これから式典が始まるそうだ。
式典はつつがなく終了し、そのまま会食となった。
もちろんエリナも優勝したようで、今は一緒に飯を食っている。
「お疲れ、エリナ」
「あ、ああ、そうじゃな。お疲れ様じゃ」
なんだ?こいつ妙によそよそしくないか?
「そういえば、お前、なんか変わったと思うか?」
「ああ、ステータスのことか。実感はないが、カードの数値は確かに二倍になっておる。無事にあの儀式は成功したという事なのじゃろう」
そうなんだよ、実感が全くないんだよ。
力が漲ってくる、とか、筋肉がもりもりになったとかは全くないのだ。
そのくせして、しっかりと数値の上では二倍になっているのだから不思議だ。
レベルが上がった感覚とも違う。そもそも何も感じないんだから。
「帰りは今日でもいいな。『テレポート』でちょちょっと帰ろうぜ」
最近は飛空艇のカッコ良さで忘れていたが、行きはともかく、帰りはテレポートで帰った方が速いのだ。
「わしはすっかり忘れておった。よく『テレポート』を覚えておったのう」
俺たちが他愛もない話をしていると、エリノアさんが近付いてきた。
「二人とも、四天王就任おめでとう!儂は嬉しいぞ、優秀な部下が沢山出来た」
「あ、その事なんですけど、俺たちが基本は魔王領にいなくてもいいですよね?」
「うむ、居てくれなくとも問題ないぞ。今の時代、四天王など形だけ置いているに過ぎん。しかし、有事の際には来てもらうがな」
これで給料が出るんだから驚きだ。税金の無駄遣いとしか思えねえ。
「じゃあ、ウチにテレポート先として魔法陣描いておいて下さい。俺たちも城内に描かせてもらいますけど」
「その手があったのう!飛空艇のカッコ良さですっかり忘れておったわ」
あんたも俺たちと同じかよ。
「では、会食が終わったら、お時間頂きますね」
「ああ、了解した」
こうして、会食が終わった後、作業をして、俺たちはエリノアさんを家に帰った。
エリノアさんも魔法陣が描き終わると帰っていった。
「あ、お帰り。どこに拉致られてたの?」
どこに拉致られたとか、そんな話を『どこに散歩行っての?』みたいな感じに話すのは異常だと思うのは俺だけだろうか?
「……魔王領に行って、四天王になってきた」
「へー、それはおめでたですね」
いや刀香、おめでたってなんだよ。後もう少し驚け。
「トウカ、聞いて驚け!わしらは四天王になった影響で、ステータスが二倍になったのじゃ!」
「エリナさん、本当ですか!?じゃあ、ハヤトさんの脳筋に更に磨きがかかったいうことですか!?」
「おい、自分の婚約者を脳筋呼ばわりは酷すぎじゃないか?」
「ふーん、自分の婚約者に何も言わずに一週間姿を消すのはいいんですか?」
「いや、あれはエリノアさんに拉致られて……」
「……どうせ、エリノアさんの胸でも見て油断してたんでしょう?」
そんな事は断じて……無いとは言い切れない自分が嫌になってくる。
「でもとりあえず、お帰りなさい、ハヤトさん」
「うん、ただいま、リリー」
只今立て込んでおりまして、更新が二日おきになることがありますが、ご了承下さい。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
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