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魔王の再来

 皆さんは『理不尽』という言葉をご存知だろうか?

 かなり一般的な言葉というイメージが俺にはあるのだが、俺とエリナはまさしく、その『理不尽』に襲われていた。


 事は何時間か何日か分からないが、とりあえず遡る。



 俺たちは無事にサイトリアから帰ってきた。

 そして、そこから一週間経ったころ、かなり迷惑と思われる訪問者が来た。


「お久しぶりですね、エリノアさん。一体今日はどんな面倒事をお持ちになったんですか?」


「魔王に随分なご挨拶じゃのう」


「あ、魔王に就任したんですね。当選おめでとうございます。個人的にはかなりの八百長っぽいと見てますけどね」


「ハヤト殿、何故だか分からんが、儂に当たりが強くないか?……まぁいい、実はな、四天王にならないかと誘いに来たのだ」


「……ふざけんな」


「……おお、そうか、そうか!四天王になりたいか。ではまず眠ってもらおうか」


「いや何を言って……ちょ、マジで……何して……」


 ここで俺は眠りに落ちた。



「という感じで現在に至るんだが、お前はどうだ?」


「わしもお前と同じ感じじゃ。一体何を考えておられるのか……」


 というかここは一体どこなんだ?

 この物々しい感じ、まさか、魔王城だったりして。

 まぁそんな事はあり得ない、ここまで来るのに一体何日かかるか考えるとすぐにそういう結論に至る。


「おお、二人とも起きたか。ようこそ、我が魔王城へ!」


 人の家の飛空艇使ったんすね。


「言っておきますけど、俺は四天王になんかになるつもりはありませんからね。人間の国の貴族が四天王って、冗談になってないですからね」


「私もそういう明らかに面倒臭そうな事は遠慮させて頂きたいのですが……」


 自分を拉致った相手にまで猫被りするとか、お前どんだけエリノアさん好きなんだよ。


「そうか……四天王となって儂の配下になれば、ステータスが今の二倍になるのじゃが、嫌なら仕方ない、無理強いは良くないからな」


「「その話詳しく!」」


 聞けば、近々、四天王決定戦が開かれるようで、四天王になりたい者はそこでその座を勝ち取るのだと言う。

 前まで四天王は魔王の指名制だったようだが、『チャンスは平等に』というのがエリノアさんの主義らしく、決定戦が開かれることになったそうだ。

 肝心のステータス二倍は魔王パワーによって為せる技だそうだ。


 いやー、これで俺の火力不足が解消できる。

 最近はミルが高い火力を出して、俺の立つ瀬がなかったから困ってたんだよね。


「試合は明日から三日間、お主らの力があれば、勝ち残ることも難しくないはずじゃ。まぁ頑張ってくれ」


 向かってくるやつは全員倒す!俺は何としてでも力を手に入れるんだ!


 こうして、短い期間ではあるが、戦いの日々が始まった。



『皆さんこんにちは!こちらは四天王決定戦Cブロックが行われる会場です。私は司会兼実況のヘリア、こちらは解説のベルムドさんです!本日はよろしくお願い致します!ベルムドさん、今回の試みは有史以来、初めての出来事ですよね。今大会をどう見ますか?』


『四天王とは魔王様の側近であるため、自分の信頼がおける相手を選ぶというのが慣例でした。これをぶち壊して、強者を選ぶというのは一見合理的に見えますが、危険な選択だったと思いますよ』


 なるほど、信頼できるってのが重要なのか。だから俺とエリナを引っ張ってきたんだな。


『なるほど、確かにそうですね。しかし、今代の魔王様は冥界の最高神ハーデス様直々のご指名で、しかも、元勇者という現世最強の人物のように思えますが、これはどうでしょうか?』


『私も魔王様のお力はそれはもう信じております。しかし、魔王様は大陸中の国と平和条約を締結されました。これも近年には見られない施策の一つで、魔族は不安定になるでしょう。これによって様々な思惑が交錯することが予想できます。こうなると魔王様の単純な力だけでは解決できない領域に入っていくことになります。ですから今代の魔王様には戦闘能力というよりは政治手腕が問われてくるでしょう』


『貴重なご意見ありがとうございます。ではそろそろ試合に移っていきましょう。ベルムドさん、注目の選手はズバリ、どなたですか?』


『そうですね、無名の選手から有名な選手まで色々いますから迷いますね。ですが、やはりイチ押しはガイナスさんでしょうか。彼は「竜殺しの魔剣」の持ち主で今まで数多の竜を屠ってきた強者です。対人戦ではどのような戦い方をするのか気になります』


 ガイナス、ガイナス……お、当たるとしたら決勝か、ラッキーだな。

 ちなみにエリナとは違うブッロクになったので、唯一の懸案事項は解消されたと言っていい。


『ガイナスさんは有名ですから、どんな戦いを見せてくれるか楽しみですね……おっと、第一試合の準備が整ったようです!それでは行きましょう、東の門から入場するのは剣士ハヤト、西の門から入場するのは「業火の魔女」ブレゼリカです!これはいきなりすごい選手が出てきましたね』


『ええ、そうですね。「業火の魔女」は火魔法を好んで使う魔法使いですね。上級魔法はもちろん、応用をした独自の魔法も習得しているそうなので、楽しみですね。対して剣士ハヤトは全くの無名です。しかし、不思議ですね、剣士であるはずなのに、防具の類を全く付けていません。これは蛮勇なのか、何かの作戦なのか全く読めませんね』


 勝手に色々、言ってくれちゃって。

 しかし、俺はこんなことで心を乱さない。

 まずは『明鏡止水の境地』もイングリッドの不可視の能力も使わない。もちろん『限界突破』もだ。

 使うのは身体強化の魔法と撹乱程度の中級魔法までだ。

 パワーとテクニックだけで圧倒してやるぜ。


『では、Cブロック第一試合開始ですッ!』


 怪しい雰囲気の姉ちゃんだな。

 しかし、気配で分かる、こいつは俺より弱いと。

 我が愛剣を抜くまでもなし!


 俺は身体強化をそこそこに魔法を的確に避けながら、一気に距離を詰める。

 こうなれば魔法使いは基本無力だ。近接戦を得意とする魔法使いなんてあまりいないからな。


「四天王には俺がなるから今回は諦めてくれ、『業火の魔女』さん」


「くっ、若造が!」


 セリフが安っぽいねえ。

 これは俺のスーパーパンチで方を付けてやろう。


「喰らえっ!スーパーパーンチ!」


「ぐぅっ、はぁっ!?」


 ブレゼリカさんとやらは俺のパンチで吹っ飛んで、壁に体を強打する。


『だ、第一試合終了!勝者は無名の剣士ハヤトです!』


『す、凄まじい身体能力ですね。剣士であるはずなのに終始剣を抜きませんでした。所謂ダークホースというヤツですね。これからの試合が楽しみです』

 只今立て込んでおりまして、更新が二日おきになることがありますが、ご了承下さい。


 この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。


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