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カーミラの思い

 サイトリアでの日々は風のように過ぎていった。

 三日目は山に登り、滝を見たり、頂上からサイトリアの街並みを見たりした。

 四日目と五日目は街の名所を巡った。

 そして一日目一杯遊べるのは今日だけとなってしまった。


 しかし、ネタはもう尽きてしまって、行くところがないので、俺は朝っぱらから風呂に入っていた。

 四階と屋上は裸のままでの行き来出来るようになっていて、結構便利で、行ったり来たりしている。

 俺は少しのぼせてきたので、一旦上がって休憩してから、サウナを経由して、水風呂に入る。

 この順番を踏んだ方が気持ちいいのだ。


「今日は何すっかなぁ……」


 こんな事をぼやいてしまうぐらいには本当にやることがなかった。

 やっぱり宴会?俺はそれでもいいけど、ムードがないよなぁ……。


 うーん、まだどこか行ってない場所があるような気がする……あ、プールだ。

 だけど、海に行った後にプールってのも、何だか変な感じがする。

 まぁ一応流れるプールみたいだから新鮮味はある。

 皆に言ってプールでいいようなら今日はプールで遊ぶか。


 行動の指針が決まった俺は風呂から上がって、リビングへ向かう。

 しかし、俺はリビングでプールで遊ぶことを諦めた。

 何故だか分かるか?答えは簡単だ、女性陣が朝から飲んだくれていたからだ。

 こうなれば、俺も混ざる他ない!

 しかし、腑に落ちない。ミルやリリーはこんなとき絶対に一緒になって飲んだりしない。

 一体何があったんだ?……まぁいいや、とりあえず飲むぞ!


「おいおい、お前ら、朝から飲んだくれるたぁ、いいご身分じゃねえか!俺も混ぜろ!」


「いいよぉ〜、ハヤトも飲みなよ。はい、どうぞ」


 ミルの酔った顔なんて初めてみた。率直に言おう、すげー色っぽい。


「ハヤトさん、私もお酌してあげますからね、こっちも飲んで下さい!」


 おお、おお、リリーもいい感じに酔ってんな!


「二杯同時に飲んでやるわ!」


 あー、うまい!俺もすっかり酒好きになってしまった。


「兄さぁん……私のお酒も飲んで下さいよぉ」


 あらら、刀香もお酒飲んじゃったかな?

 まぁいいか、もうすぐ刀香も十五歳、この世界じゃ、成人だ。

 それにそもそもこの世界にお酒の年齢制限ない。

 こいつも結構酔ってるな。


「おう、じゃあもう一杯」


 それにしても真面目連中が昼間から飲みだすとはどういうことだ?

 おそらく、何か原因があるはずだ、俺はそれが何なのか突き止める事にした。余興じゃ、余興。


 しかし、果たしてその答えは簡単に分かってしまう。


「おお、カーミラ!お前は無事だったのか。流石最高の自動人形だな、アルコールなんか敵じゃないか」


「はい……それで何でこんなことになったか気になりませんか?」


「ああ、気になる、気になる」


「実はですね、ハヤトさんがお風呂に入っている間に私たちはゲームをしていたんです」


「ふーん……で、どんなゲームをしていたんだ?」


「ミルさんとエリナさんが面白い魔法が発動する魔法陣をいくつか描いて、それが何の効果か分からないようにして発動するというゲームを……」


「それで、エリナが描いた、人を酔わせる魔法か何かでこいつらが酔ってしまったと」


「は、はい……」


 でもなぁ、俺とカーミラにはこれを打開する方法はないんだよな。

 これはこのまま酔いが醒めるまで待つしかないか。


「カーミラさん、突然ですが、この旅行は楽しかったですか?」


「はい、もちろんです!皆さん、私はにとても良くして下さいました!」


「そうか、そりゃ良かった。これからもよろしく頼む」


「こちらこそよろしくお願いします、マスター!」


 良かった、良かった、休養と親交を深めるという当初の目的を両方達成できた。

 ああ、俺は今幸せの絶頂にいる気がする。

 こんな日常がいつまでも続けば他に望むものはない。


「よし、カーミラ、皆に混ざって飲もうぜ。それに、こいつらも飲ませる気満々だぜ?」


「え?」


「カーミラさん、私の酌を断るとは何事ですか!私はこれでも一国の姫なんですからね!」


 リリーが暴れてるわ。これは大人しく飲むしかない。


「そうです!兄さんとばかり話してないで、私たちとも仲良くしましょう!」


「ハヤトは私と思う存分飲みましょう?」


 ユリシアさんは先程のミルとも違う妖艶さで俺を誘ってくる。しかし、やっぱり邪魔が入る。


「ユリシア姉様、あまりハヤトさんを誘惑しないで下さいね。ハヤトさん、もし姉様の誘惑に負けるようなら私何するか分かりませんからね……」


 リリーさん、俺が誘惑に負けたら、俺のこと殺すでしょ?顔がそう言ってるよ、マジで。

 というわけで俺はユリシアさんを適当にあしらって、昼寝をすることにした。

 ここにいると何されるか分かったもんじゃない。

 こういうのも俺たちらしいわ。



「マスター、起きて下さい。もう夕方ですよ」


「……ん、ああ、ありがとう。皆はどうした?」


「皆さん騒ぎ疲れて寝ちゃいました」


 マジか、折角美味しいレストランに行こうと思ってたのに。


「あ、そう。じゃあ、俺たちだけで夕飯食べに行こうぜ」


「え!?……でもいいんですか?」


「ハハハ、遠慮するなって、ずっとあいつらの世話をしてくれたんだろ?だからその労いってことで」


「いえ、メイドとしては当然のことですので……」


「そう、それだ!その使用人意識をやめろ。仕事を押し付けている俺が言うのも変だが、仕事が嫌にやったら、誰でもいいから押し付けろ。そうすれば絶対……多分やってくれるからさ、嫌なときは嫌って言ってくれ」


「仕事が嫌だなんてとんでもありません!私は戦闘が出来ない分、働かせて頂いてるんです。だから家事が嫌だなんて思ったことは一度もありません!これでも私はこの仕事をさせて頂いてることに誇りを持っています。いくらマスターでも今発言は撤回して頂きたいです!」


「そ、そうだったのか……す、すまん、今のはプロに対する侮辱だな」


「あ、いえ、私なんて事を……!」


「いやいや、いいんだよ、本当にごめんな。じゃあ、この話はもうやめにして、飯食いに行こうぜ。いい店を知ってるんだよ」


「……分かりました、お供させて頂きます」


 こうして、サイトリア最後の晩餐は俺とカーミラだけのものとなった。

 只今立て込んでおりまして、更新が二日おきになることがありますが、ご了承下さい。


 この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。


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