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旅行に行こう

 リリーに封印を解いてもらってから一週間が経った。

 季節は冬に近づいており、寒い日が続いている。

 そんな中、俺は皆にある提案をした。


「明々後日からの一週間、俺たちで旅行に行かないか?」


「うん、たまにはそういうのもいいかもね。皆はどう思う?」


「私は兄さんの案に賛成です。たまには思いっきり羽を伸ばした方がいいです。特にリリーさんは最近事後処理で忙しかったみたいですから、絶対に休んだ方がいいです!」


 おお、刀香がここまで言うとは珍しい。これは未来の姉さんになると意識してくれている証拠かな?

 まぁそれを抜きにしてもリリーは最近働き過ぎてきたからな、主に俺がまともに働けないせいで。


「そうじゃな、確かにリリーは働き過ぎじゃ。それでハヤト、旅行とは具体的にどこに行くんじゃ?」


「ふふふ、聞いて驚け!場所はメルシャ神聖国の南にある観光都市サイトリアだ!ちなみに今回は宿に泊まらない」


「それでは、どうやって一週間もそこで過ごすんですか?勇者時代にも行ったことのない場所なのでよく分からないんですが」


「まだ、分からないんですか、ユリシアさん?皆、耳の穴かっぽじって、よ〜く聞けよ?この度、私、キリュウ公爵はあまりに高過ぎて買い手がつかなかった豪邸を買い上げました。さて、ここで問題です。その別荘、一体いくらしたでしょうか?」


「私は白金貨二十枚だと思う」


「わしは白金貨十枚じゃな」


「私には想像つきません。家の相場を知りませんから」


 まぁ刀香はこの家を買ったときにいなかったからな。


「そんなに安くないと見ました。白金貨五十枚ですね、ハヤト?」


「私はハヤトさんの馬鹿さ加減をよく知ってますから分かりますよ。答えは白金貨百枚ですね」


「な、何故分かった!?」


 しかも馬鹿さ加減ってセリフはキャラに合ってないぞ!

 この間はデレッデレだったのに落差激し過ぎないか!?


「え?本当に白金貨百枚で買ったの?たかが別荘一件に?」


 ミルがこいつ正気か?って顔で見てくる。


「しょうがないだろ。観光都市は下手すると王都より土地の値段が高い。全ての土地が一等地みたいなもんなんだから」


「お前、馬鹿じゃろ?」


 お前にだけは言われたかねえよ。


「まぁ皆、安心しろ。高いだけあって、下見のときは、すごい良い家だったぞ。あそこに行ったら、絶対に住み着きたくなるな。地上四階、地下一階の構造で、一フロア丸々使ったプールと温泉の沸く風呂がある。プールと風呂はもちろん別々のフロアで三階と四階な。地下一階には訳が分からんが、訓練場があるし、庭はキャンプが出来るほど広い。あ、屋上には風呂のフロアとは別で露天風呂があったな、眺めは絶景だぞ。残りは二階が寝室とリビングのフロアで、一階がダイニングルームとキッチンのフロアだ。それとカーミラ、今回はお前の歓迎会を兼ねたものとなっているから随伴必須だ」


「はい、了解しました。マスター」


「……やっぱり、兄さんが風呂好きなだけでは?」


「あ、もちろん風呂には仕切りがついてない。そもそも家族用だからな。刀香、久しぶりに一緒に入るか?」


「え、いいんですか!?」


「冗談に決まってんだろ……はいリリー、怖い顔しない」


 俺たちが話し合っていると、闖入者が現れた。


「呼び鈴が鳴らなかったので勝手に入りました、すいません!それより、キリュウ公爵、緊急の依頼です!王都南西部よりエンシェントドラゴンが接近中とのことです!至急応援を、とギルド本部から連絡です!」


「ていうか、アレスさん伝えてないのかよ……俺たちは今回行きませんよ、それに続報を待ってみて下さい。すごいことを聞くと思いますから」


「それでは困ります!至急応援に向かって下さい!」


 ミレットさん、頭固いなぁ……しょうがない、人員を割いてやるか。


「ミルとエリナと刀香は至急向かってくれ。何、準備はこっちでやっておく。それにすぐに引き返すことになるだろうから、王様の元にいた方がいいぞ。じゃあ、よろしく!」


「「「「なっ!?」」」」


 三人プラスミレットさんが声を上げる。


「キリュウ公爵は向かって頂けないんですか!?」


「じゃあ、一応説明します。エンシェントドラゴンって空飛んでるんでしょ?俺は対空の攻撃手段を持ってないんですよ。だから今回の件にはどちらにしろ役に立てませんよ。それに冒険者ギルドの人なら分かってるでしょ?剣士より魔法使いの方が強いってことを」


 これは公然の秘密というか、皆が意図して言わないことだが、基本的に魔法使いは最強だ。

 少し考えてみると分かることだが、例えばミルが剣術を覚えたとする。その状態で身体強化の魔法を掛けまくれば、俺といい勝負が出来るはずだ。

 そうでなくてもミルとエリナには『次元斬』があるわけだから、相手が初見なら絶対に倒せる。

 まぁそういうわけで、この間のような大規模戦闘にでもならない限り、魔法使いは一番の火力役として活躍できるのだ。

 『魔法使いのセンス』持ちは生まれながらに勝ち組なのだ。


「た、確かにそうですが……」


「まぁ、安心して下さいよ。そもそも今回は俺たち冒険者が出る幕ではないんですから」


「それはどういう意味ですか?」


「じゃあ、三人を連れてギルドに戻ってみて下さい。今頃、王都から通信用の魔道具か何かで連絡が来てるんじゃないんですかね?さ、俺たちは引き続き荷物とかの準備だ。リリーには申し訳ないが、仕事に励んでくれ」


 ミレットさんは俺の言ってることに納得がいってない様子だったが、まぁもう直、飛空艇のことが分かるだろう。

 それに飛空艇だけでエンシェントドラゴンを落とせなくても、他の冒険者が頑張ってくれる。


 どこまで情報を開示するのか分からなかったから俺は何も言わなかったが、あんな物があるってことぐらいは知られることになるだろうから、それぐらいは言っても良かったかも知れないな。


 まぁ今更何を言ったってしょうがない。さっさと準備するのが三人を行かせた俺の責任だろう。

 この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。


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