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復興作業

 今回はリリー目線です。

 私はハヤトさんに生まれたしまった裏人格みたいなものとその時の記憶を封印した後、ハヤトさんを背負って飛空艇に戻った。

 私だってそこそこのレベルなので成人男性ぐらいは楽々運べる。


 ミルさんが降らせた雨は、街で暴れていた炎を鎮めてくれる。

 詳しいことは調査しなければ分かりませんが、住民にも被害が出たようです。幸いにも住人の死人は今のところ見ていません。


「リリー、ハヤトは大丈夫なの?」


 ミルさんが心配そうな顔で聞いてくる。


「はい、この通り無事ですが、皆さんにはハヤトさんについて話があります」


「そうか、ついに出てしまったんじゃな?」


「はい……エリナさんが以前に言っていた通り、ハヤトさんの中の吸血鬼が人格として出てきました。今は記憶と共に封印していますが、『限界突破』を使って無理をしたり、過度に吸血鬼の回復力を頼ったりすれば間違いなく、封印が解けて裏の人格が出てきます」


「根本的な解決法は……なかったんでしたね」


 刀香さんは残念そうな顔をする。

 それはそうですよね。自分の兄が訳の分からない事態に陥っているんですから。


「とりあえず、今は住民の皆さんの救出が最優先です。裏のハヤトさんがあらかた片付けたようですが、まだ兵が残っているかもしれませんから気を付けて行きましょう!」


 私はハヤトさんを飛空艇の中に寝かせて、カーミラさんにお世話お願いして、仕事に取り掛かった。


 次の朝


 徹夜で作業しただけあって全ての住民の安否が確認できた。

 怪我人多数、死者十二名という結果だ。正直言って奇跡的だ。何でも冒険者の皆さんが避難誘導をしてくれたお陰らしい。


 ハヤトさんはまだ起きない……ということもなかった。

 ケロッとした顔で私たちの前に現れて、復興作業を手伝ってくれた。

 街の修復という意味での復興は一週間もあれば可能だ。

 こればかりは大して魔法も役に立たないし、汗水流して働くしかないので、街全体で一丸となって進めるしかない。


 昼ごろになると王都に救援要請をしに行ってくれたユリシア姉様が飛空艇で帰ってきた。

 王都の手の空いていた大工さんたちを根こそぎ雇ってきたようだ。

 これならより早いペースで作業を進められる。


 ユリシア姉様は騎士たちも連れてきてくれたようで状況報告をする。


「では自分たちはこれで失礼します!」


「はい、国への報告お願いしますね」


「はっ!」


 そんなに硬くならなくてもいいのに。


 それにしても最近レガリアはおかしい。

 アストレアスとレガリアは袂を分かった国同士、国としてはアストレアスが弱くとも、平等な立場だったはず。


 帝はこんな愚かな判断をするようなお方ではなかったはずだから、勇者の独断か、それともこれを裏で操った奴がいるかのどちらかだ。

 しかし、レガリアの兵士が動いている……軍部に何かがいる?それとも勇者のコネ?

 まぁ考えてもしょうがない。今は復興を優先しないと。



 皆の頑張りがあって、予定よりかなり早い五日で街の再建が出来た。


 私たちはお金だけはあるので、住人一人当たり銀貨百枚の給付を行った。

 死者が出てしまった家庭にはハヤトさん自らが出向いて金貨十枚を慰謝料として支払った。

 ハヤトさんはこんな事じゃ、何の代わりにも謝罪にもならないけど、と言っていたが、正直ここまでする領主は普通はいない。というか謝罪さえしないだろう。

 街を自分のお金で全て建て直すのもやり過ぎぐらいだ。


 何というかまぁ常識がない。

 私は止めようとも思ったけど、これはこれでハヤトさんらしい気がしたのでやめた。


 斯くして、今までの人生で一番肉体労働をしたと思われる三週間が終わった。


「あー、疲れたな。久しぶりに家に帰れるな」


 いつもの私の旦那様。


「マスターのご自宅、楽しみです」


 カーミラさんはメイドになってくれるのでしょうか?


「そうですね。この一週間ずっと飛空艇の中で寝たり、人様の家で寝たりと全く家に帰ってませんでしたからね。私も楽しみになってきました」


 ユリシア姉様にはあちこちに行ってもらいましたからね。


「そうだね。本当に久しぶりの家だよ」


 次はミルさん。


「わしは早く自分のベッドで寝たくてしょうがないぞ」


 エリナさんはいつでもマイペースですね。


「ダメですよ。ちゃんとお風呂に入ってから寝て下さい。私たちは今日も働いたんだから汗臭いですよ?」


 真面目な義妹。私もお風呂に入りたい。

 そして、私はあることに気付く。


「あ、あの皆さん……すごく言いにくいんですが、前方をご覧下さい……」


『あっ』


 そうです。私たちの家は砲撃の爆風で色々な箇所が損壊しているです。


「じゃ、じゃあ、急いで直しましょうかね?」


「……はぁ、やるか、とりあえず。もし今日完全に直らなくても寝ることぐらいは出来るだろう。よし、皆やるぞ!」


『お〜……』


 何故なのか本当に締まりませんよね、私たち。

 この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。


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