超弩級大型強襲飛空艇
「……マ……マスター、起きて下さい!」
目が覚めると隣にはカーミラがいた。
そうだ、俺は添い寝してもらってたんだ。
「その……反対側を向いてみて下さい」
そこには果たして皆の姿があった。
皆も眠かったのだろう。
道中は石畳の上で寝てばっかりだったから寝てもほとんど体は休まらなかった。それは皆も一緒なのだろう。
「マスターがお休みになって二時間経った頃においでになられました。その後は溶けるようにお眠りになられました。皆さんが回収出来るものは回収したようなので、後はここから出るだけですね」
そうだなぁ……かれこれ二週間ぐらい地上には戻ってないわけで、流石にゲイルさんも死んじゃったと思ってるかな?
「皆さんが起きられる前に私たちで出航の準備をしてしまいましょう。マスター、こちらです」
俺はベッドから出て、カーミラについて行く。行き先は格納庫のようだ。
「マスターと皆さんは本当に大きな魔法の袋をお持ちですね。今だと飛空艇が入る規模の袋はいくらぐらい何ですか?」
「国宝だよ。俺たちが持ってるのはミルの自作だ」
「それは本当ですか!?ミル様は本当に素晴らしい魔法使いですね。前のマスターの時代でもミル様ほどの魔法使いは指の数もいませんでしたよ」
流石古代、何人かはいるのか。今の時代じゃ、ミルに匹敵する魔法使いなんていないだろうな。
そもそもミルは天使だし。
「流石にこの飛空艇は入らなかったようですね。他にも普通飛空艇が入り切ってませんね。これは収容しちゃいましょう」
確かにこの飛空艇は入らないよな。大型でさえやっとなんだからな。
「超弩級は飛空艇の収容なんて出来るのか?」
確かに大きさ的には収容できそうだが、もう次元が違うな、色々と。
「もちろんです。強襲飛空艇までのサイズなら収容可能です」
なるほどな。超弩級は攻撃兼輸送艦ってことだな。
空母に強力な装備をつけたみたいな感じだ。
まぁ燃費はクソ悪そうだがな。一体どれくらいの魔力炉が使われているんだか。
「では、収容を始めましょう。マスターはエリスシステムをご存知ですか?」
「俺たちは大型強襲飛空艇で来たからな、知ってるよ」
「そうでしたか。ここ飛空艇は特別製でして、初回の起動には指輪が不可欠です。発令所で指輪をかざす場所があるので、そこに行って頂ければシステムの起動が可能です。手分けして収容しましょう」
俺はとりあえず、普通飛空艇に乗ると発令所と言うには小さめな操縦室に入って、それらしい装置に指輪をかざす。
『エリスシステム起動。マスター、ご命令を』
俺たちが乗ってきた大型のエリスとは随分違うな。
より冷淡な気がする。
「近くの超弩級飛空艇にこの船を収容しろ」
『了解。これより自動操縦に入ります』
やっぱり何か違う。アイ、サーとも言ってくれないし。
皆がここを漁ったときに超弩級は起動済みのようで、収容口がすでに空いていた。
俺とカーミラは飛空艇を収容していく。
普通飛空艇を二機、強襲飛空艇を二機収容すると全ての飛空艇が収容出来た。
俺は俺たちの大型強襲飛空艇のエリスシステムの事が気になったのでカーミラに聞いてみることにした。
「おそらく、それはオリジナルに近いエリスが搭載されているからだと思います。初期のシステムは感情が少し入っているんです。飛空艇の量産が可能になってくると感情がなくなって、単純な操縦システムになります。ここにある飛空艇に搭載されているものは全て後者ですね」
へぇ〜、そんな違いがあるのか。
「では、私はこの飛空艇の調整をしておくので、マスターは皆さんを起こしてきて下さいますか?」
「ん?これでここから出るのか?じいさんは俺たちが入ってきた入り口に繋げてあるからテレポートで帰れって言ってただろ?」
「ああ、いいんですよ。ここの上を開けて、そのまま地上に出れますから。それとも何か置いてきたものでもあるんですか?」
「いや、そういうわけじゃないんだが、また録音があるんじゃないかって」
俺が言うとカーミラは笑い出す。
「そうですよね、そう考える人もいますよね。前のマスターはどうせこれを見たら絶対上から出たくなるからって言って、本当は転移魔法陣なんて作ってないんですよ」
な、なんで適当さだ!あそこに飛空艇を置いてきてたら終わってたな。
「そ、そうなのか。じゃあ、俺はあいつらを起こしに行ってくるよ」
それにしても、今回俺たちはとんでもない成果を上げてしまった。
俺の予感は俺たちは並ぶ者のない、億万長者になれるんじゃないかと言っている。
アホみたいな量のミスリルにこの飛空艇の数、それに膨大な情報。
幾らかは俺たちがそのまま貰うとしても、他を全て売り払えば、一体いくら貰えてしまうんだろうか?
白金貨千枚?それとも二千枚?そもそも飛空艇に値はつけられるのか?よだれが出てしまいそうだ。
寝室に入ると皆はまだだらしない顔で寝ていた。
本当にこいつらには今回無理をさせてしまった。
俺とエリナなんかは吸血鬼だから割と睡眠については大丈夫だったりするのだが、その俺たちでさえ、すごい疲労感があったのだ、普通の人間であるリリーや刀香が大丈夫なはずがない。
ミルはどうなのか知らないが、かなり魔力を使わせてしまったし、ユリシアさんもいくら勇者と言ってもあれだけのキツい環境は経験が少ないだろう。
『ごめん皆、それとありがとう』
こんなセリフ、口には出来ないけど、領地の事がひと段落したら、旅行でもするかな。
「……ほら皆、起きろ!出発の準備が出来たぞ!」
「……あ、ハヤトさん!なんでカーミラさんと寝てたんですか!?私というものがありながら!」
リリー、お前だんだんキャラが変わってきてるから。
「いいから、いいから。今は家に帰ることを優先しようぜ?ゲイルさんも心配してるだろうからさ」
「むぅ……確かにそうですね。帰りましょう、私たちの愛の巣に」
二度目は突っ込まない。
「カーミラ、準備は整ってるか?」
「いつでも発進できますよ」
「よし、発進だ!」
「了解です。これより頭上の隔壁を開きます……完了。上昇を開始、およそ三十秒で地上に出ます」
カーミラが言い終えるとまた聞き覚えのある声が流れる。
『やはり、ワシと予想は当たったのう!細かい挨拶は省く。ワシが話したいのは孫娘の事じゃ。孫娘の遺跡の完成予定地の地図のデータを入れておくから気が向いたら行ってみることじゃ。では、カーミラのこと頼んだぞ、さらばじゃ!』
うん、これは他の人に任せよう。もうこんなのは懲り懲りだ。
「地上に出ます……それと大変申し上げにくいのですが、この船には最新の位置データが入っていませんので地図を見せて頂けると嬉しいです」
刀香が地図を持っているようでカーミラに見せてくれるようだ。
「なるほど、山脈がここですから……はい、ありがとうございます。ご自宅に到着までおよそ二時間です」
「ねえ、ハヤト。私たちのまだカーミラさんに自己紹介もしてないからさ、今やっちゃおうよ」
「そういえばそうだったな、じゃあやろうか」
こうして俺たちは街に着くまで団欒するのだった。
街が今、どんな状況になっているとも知らずに。
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