王族ということ
武闘会が無事(?)に終わった後は参加者全員で食事会が行われた。
解説をやっていた一応俺は呼ばれることとなった。
会場は既に人が集まっていて、姫様の姿もあった。
「ハヤト、その服似合ってないですね」
そこは嘘でも似合ってるって言ってよ。
「ユリシアさんはそのドレスすごい似合ってるよ」
特に胸元の部分がエグい。TPOに合っているか怪しいぐらいだ。
「ありがとうございます。私は昔馴染みに挨拶してきますから」
始まって早々に連れを失ってしまった。
さて、自由に飲み食いするとするか。マナーなど知らん。
しかし、俺たちよく頑張ったよな。これで『五素の悪魔』は全て倒した。
結局生きているのはエギルだけか。
ちなみに今回の『五素の悪魔』討伐で得られる賞金は全てメルシャに寄付されるそうだ。
全く、お人好しの冒険者はかなりいるようだな。
「キリュウ様、お一人ですか?」
「あ、姫様。ええ、ユリシアさんに放られちゃって。少し寂しいです」
「そうですか。今回は解説をお受け頂きありがとうございました」
冷たい……やっぱり俺はこんな小さい子がこんな表情がないのは間違っていると思う。
ここはお兄さんが抜群の推察力でお悩み相談と行こう。
「いえいえ、気にしないでください。でも俺に少しでも感謝しているならお願いを聞いていただけませんか?」
「……私に出来ることならなんなりと」
「何か悩み事があるなら俺に言ってくれませんか?」
「それは叶えられない事ですね。私には悩み事がありませんから」
ふむ、中々強情な子だ。
「じゃあ、今から聞く質問に答えて下さい。何故ここには王様とそのお妃様、つまりは貴女のお父さんとお母さんがいないのか教えて下さい」
「……お父様とお母様はお逃げになりました、国を捨てて」
はい、暗い顔になりました。これは何かある。
「じゃあ何で姫様は逃げなかったんですか?」
「私も王族です、国を守っていく責任があります。そんな王族が逃げていては示しがつきません。ただそれだけです」
「それだけって……貴女みたいな女の子が逃げたって誰も文句は言いませんよ。それに逃げたって言っても一時的な避難でしょう?何が悪いと言うんですか?」
「別に私は悪いとは言ってません。ただ誰かはその場に残らないといけない、それが私だっただけです」
「俺はそれが間違ってるって言ってんだ!あんたみたいな女の子は自分のやりたいようにすればいいんだよ。あんたにも王族っていう立場があるんだろうけど、それでも女の子に殿みたいなことをさせるのは周りの大人が絶対間違ってる!」
「……私は貴方が何を言っているのか分かりません。では、私はこれで失礼します」
ペコリと頭を下げ、何事もなかったのように立ち去る姫様。俺は何も言えずに後ろ姿を見ることしか出来なかった。
「キリュウ殿も気付かれましたか」
この人は……ああ、聖騎士団長のブリュードさんか。
「あんたはどっち側の人間だ?」
「私はキリュウ殿の側ですよ。私も姫様には後は任せてお早く避難するように申し上げたのですが、一向に聞き入れてもらえませんでした」
「……貴方は何か知ってるんですか?」
「恐らくは。姫様は陛下と第二夫人との間に生まれた子供なのです。それで王宮では冷遇されがちで……多分これが理由だと思います」
「……ブリュードさん、俺がやった事はお節介だったか?」
「いえ、キリュウ殿のようにはっきりおっしゃる方は初めてです。いい方向に転がればいいんですが」
「俺は明日この国を出ます。だから後は任せました。俺じゃ、多分どうにも出来ないし、時間もない。だけど俺はやっぱり、ああいうのは間違ってると思います」
「ええ、そうですね、私もそう思います。では私もこれで。是非楽しんで帰って下さいね」
勢いでブリュードさんにあんたとか言っちゃったが、俺は内心ビクビクしてた。
ここで首を切られてたら一発アウトだったからだ。
まぁでもいい人そうで良かった。
つつがなく食事会は終わり、解散の運びとなった。
今日は飲んでいくつもりはなかったので大人しく部屋に帰った。
そして、この後は特に何事もなく一日が終わった。
次の朝
今日、俺たちはアストレアスに帰ることになるわけだが、出航は昼前となっているため、まだメルシャンに残っている冒険者で昼間から飲むことにしていた。
「おお、ハヤト!名解説だったな、それにずいぶん俺を推してくれたな」
こいつが拳闘神グレイル。筋骨隆々としているが、中身は気の良い中年だ。
「だって、お前、ステゴロ最強を地で行ってるだろ?あの大会にゃ、ピッタリの人材じゃねえか」
「ガハハ!それもそうだな、俺以上にあの大会にマッチする人間はいない。しっかし、武器のリーチってのはやっぱりバカになんねえな。そのせいで俺は負けちまったし」
「そりゃしょうがねえよ。しかもお前が負けたのってユリシアさんだろ?あれは次元が違えよ」
「確かに次元が違かった。俺もまだまだだってことを思い知ったよ。それより、いつここを出てくんだ?」
「昼前に出てく。そうしないと到着が遅くなるからな」
「それにしてもあの船はすごいよな。とんでもねえ火力だった」
「俺も驚いてるよ。まさかあんな火力が出るとは思わなかった」
そんな話をしながら時間を潰しているとあっといく間に出航の時刻がこようとしていた。
「それじゃ、またどこかでな」
「お前こそ、死ぬなよ。俺は死なねえけど」
「クソガキが抜かしてんじゃねえよ」
街を出て、魔物と戦った平原に行くと船の準備が出来ているようだった。
「ハヤト、お客さんが来てるよ……それとちょっとお酒臭いよ」
酒臭いのはともかくとして、お客って誰だ?
「キリュウ様、こちらです」
この声は姫様か。それにブリュードさんもいる。
どうやら上手くやったようだ。
「昨日は失礼しました。ラインハルトに言われて分かりました。これからは自分のやりたいことを正直に言うようにします」
「そりゃ、良かった。これで俺も心置きなく、国に戻れるよ」
「本当にありがとうございました。いつかまた遊びに来て下さい。もしかしたら私から遊びに行くかも知れません」
「ああ、そのときは歓迎しますよ。いつでも遊びに来て下さいね」
この国に残すはずだった唯一の懸案事項が解決されて本当に良かった。
そして、とうとう出航の時間が来た。
俺たちは姫様と聖騎士団長に見送られて神都メルシャンを後にした。
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