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失格

『とうとうやって参りました、チャリティー武闘会!

今大会はメルシャ神聖国の復興支援をするための興行となっており、今大会の売上金の全てが支援金になります。尚、実況は神都闘技場専属実況者の私、ルリが務めさせて頂きます。解説には魔王討伐の大英雄ユリシアさんとそのご子息である、エドナの英雄ハヤトさんにお越し頂いております!』


 魔導マイク、使い慣れてるなぁ。


『『よろしくお願いします』』


『まずは今大会のルール説明から行かせて頂きます!今回の武闘会はどんな武器を使って頂いても構いません、もちろん素手でも大丈夫です。そのかわり、魔力の使用は全面禁止となっております。魔力を使用された方は即失格となりますのでご注意下さい。外部からは優秀な魔法使いが目を光らせております。決着はどちらかが気絶するか、致命傷前での寸止めとなっております。以上のルールを守って頂ければ後は何でもアリです!』


 派手な出血シーンは無しということか。まぁ見たところ子供もいるみたいだから、あんまりグロいのは情操教育には悪いだろうからな。


『ユリシアさん、ズバリ注目の選手は誰でしょう?』


『そうですね、やはり私と槍使いの勇者さんは強敵でしょうね』


『いきなり自分が強敵宣言ですか?しかし、聞くところによりますと、ユリシアさんは魔法を交えた戦いを好んでいるとの事ですが、これは大きなハンデとなるのでは?』


『確かに勇者の魔法が使えないのは痛手ですが、剣の腕でも十分行けます』


『ハヤトさんは如何でしょう?』


『俺は拳闘神グレイルと剣神エリアスから目が離さないと思いますよ。拳闘士は普通拳に魔力を込めて戦うんですが、拳闘神は滅多な事でないと魔力を込めないという話で有名なんですよ。彼はこのルールにかなり慣れてると思います。剣神はあまり戦いでは主流じゃないんですが、細剣を使うんですよ。彼の細剣から繰り出される素早い攻撃は動きが見えないほどらしいです』


 事前に調べてきて良かった。恥かくところだった。


『なるほど、なるほど……では皆さん、お待たせしました!準備が整ったようなので始めさせて頂きます。第一試合は聖騎士レオ対勇者ローレンスです!試合スタート!』


 こんな感じにどんどん試合は進んでいき、ついに決勝戦になった。


『とうとう決勝戦となりました。最後の対戦カードは大英雄ユリシアと剣神エリアスです。ハヤトさん、この試合どうなるでしょう?』


『両者一歩も譲らない戦いになるんじゃないですかね。剣神は魔力量が少ない中、周りの環境に折れずに剣術を磨きに磨いてきた、剣術のプロですし、勇者は剣聖賢者から直々に叩き込まれたアイゼナッハ流がありますからね。試合の行方は全く予想がつきません』


『流石に勝ち残ってきただけはあるということですね。では準備が整ったようなので始めさせて頂きます!試合スタート!』


 まず飛び出したのはユリシアさんだ。魔力は使用厳禁なので目で追えないほどではない。

 ユリシアさんは下から剣を振り上げるが剣神はひらりとかわし、鋭い突きを放つ。

 その突きは弾き返されるが、剣神は何度も鋭い突きを放つ。


 しかし、最後の突きが弾かれたところで俺は異変を感じた。ユリシアさんが一瞬消えたのだ。

 恐らく、俺が使っているような気配を遮断する技を使ったのだろうが、あの技は基本的に相手が気を抜いていなければ通用しないものだ。

 俺はかなり集中しているし、ここまで勝ち残ってきた剣神が集中力を欠くとは思えない。

 そんな状況で何故ユリシアさんは技を成功出来たんだ?


『おおっと、勇者が一瞬消えて、剣神に一撃加えます!しかし、魔力を使ったわけではないようです。これはどういう事なんでしょう、ハヤトさん!』


『分かりません。彼女は気配を遮断する術を持っていたはずですが、あれは集中している相手には通じないはずなんですよ。俺にもさっぱり……いや、逆なのか!?』


『それはどういうことでしょう?』


『人間はあまりに強大な存在を感じると無意識にそれを意識から除外するという話があります。絶対に敵わない相手をわざと認識しないことでその場をやり過ごそうとするという原理です。過去にもこの方法が使われたことがあると言われていて、代表的なのは魔王城です。魔王城は魔力の塊ですから凄まじい存在感を持っていて普通の人の目には留まらないんです』


『つまり、勇者は周囲を持ち前の存在感で威圧して、一瞬消えた、ということでしょうか?』


『普通の人間には絶対無理でしょうがね。まぁ恐らく、聖剣も存在感に一役買っているんだろうとは思いますけど……』


『なるほど、そういうことでしたか……ん?ハヤトさん、今、聖剣とおっしゃいましたか?聖剣は確か、魔剣の聖なる力を纏ったバージョンみたいなもので、つまり魔力を纏っているのと同じようなもの、ですよね?』


『はい、そういうことになります……あ』


『大英雄ユリシア、まさかの失格です!よって今大会の優勝者は剣神エリアスです!』


 そして、武闘会はまさかの結末を迎えた。

 この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。


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