チャリティー武闘会
お陰様で第五十部です。
『地獄』、それを俺たちは地上にいながら見ることが出来た。
目の前の大地はマグマのようなものに変わって、魔物を飲み込み、溶かしていく。
魔物の大軍の後方は前の状況が分からないようで、前の魔物がどんどん押し出され、次々とマグマに浸かっていく。
このときに流れる魔物の悲鳴にもならないような声を上げる様は聞いていて吐き気がする。数々の魔物を屠ってきた歴戦の戦士でさえ、だ。
俺たちは恥ずかしながら、竦み上がっていた。それは使用した本人である、ミルとエリナも同様だ。
しかし、マグマのような物なので地表の温度によって、数分で固まり始めてしまう。
こうなると俺たちも呆然としていられなくなり、正気に戻る。
こうして俺たちは敵の数を大きく減らして、戦闘に入った。
戦いは二日間両軍共に不眠不休で行われていた。
このような持久戦になってくると、戦場での一番の火力源である魔法使いが徐々に魔力切れになっていき、火力源は魔法攻撃から物理攻撃となる。
最初はかなり強力な援護射撃であった、エリスも今は魔力切れだ。
前衛職は怪我をしやすい職業であるため、前線に出る兵は大体しばらくすると交代せざるを得なくなる。
そんな中、俺、刀香、ユリシアさんは前線に居座っていた。
ユリシアさんに鍛えられた俺たちは無尽蔵と言えるぐらいの体力があった。しかし、俺たちも流石にアドレナリンが切れ、睡眠不足も影響して、前線を離脱することになった。
二日間休まず戦っただけあって、敵の数は残すところ二割程となった。その分こちらにも甚大な被害が出ていて、戦死者は全体の二割にも上っている。
ベースキャンプにいる回復職もすでに魔力切れで、治療器具でどうにか治療を行なっているようだった。
こんな状況では回復いらずの俺とエリナのような存在は貴重で、エリナは一応前衛も出来るので、今は前線に出ている。
俺たちは二時間だけ睡眠を摂るとすぐに前線に向かう。しかし、その途中で俺たちはこの行為が徒労であることが分かった。
前線に出ていた戦士が戻ってきたのだ。
そう、俺たちは今回の戦いに勝利したのだった。
戦闘終了から三日後
街の至るところに火が灯り、街に来たばかりのおれでも、いつになく活気付いているんじゃないかと思うほど、盛り上がっていた。
俺は酒を片手に今回知り合った冒険者と野球拳をしたりして遊んでいた。こういうのだけはあいつらと出来ないことだからな。
ちなみに野球拳はもちろん俺が広めた。
「おい、ハヤトぉ!酒は足りてるかぁ!?」
「今、空になったわ!ついでくれ!」
「じゃあ、これを試してみろ。なんでも、この国一番の酔える酒らしいぞ」
それは興味深い。
俺はどうやら、というか薄々気付いていたのだが、かなり酒に強い方だったらしく、アホみたいに飲んでいた。
しかも、戦った後の酒が最高だということに気付いてしまった。正直これだけのために戦える可能性もある。
『イッキ、イッキ、イッキ、イッキ!』
このコールに答えられない男は漢じゃねえ!
俺は一気にアルコール度数の高い酒を飲み干す。
俺が飲み干すと歓声が上がる。しかし突如その歓声は止まってしまう。
誰だ、俺のイッキを邪魔する不貞の輩は?
「ハヤト、今日のところはサヨナラだ。また生きて会えたら俺は嬉しい」
何言ってんだ?そもそも俺は死なない。
「ハヤトさん、前にあれだけ言ったのにまたこれですか?しかも服まで脱いで……これは徹底的な教育的指導が必要ですね?そうですよね、皆さん?」
ま、まさか、ここで仲間を裏切るようなことはしないよな?
『…………』
クソ野郎共がぁぁぁ!!!
「沈黙は肯定ですね。では行きましょうか」
これは死んだかも。
この後、またもやこってりしぼられた俺はこれ以上飲んでも二日酔いが酷くなりそうなので、大人しく寝ることにした。
次の朝
俺はなんだか異様に温かい、というか暑い感じがして自分で起きてしまった。やはり頭痛がする。そして、何か柔らかい感触を感じて、布団をめくる。
次の瞬間、俺の頭痛は吹き飛んだ。俺の隣にはミルが寝ていたのだ。
まさか俺、やってしまったのか……!?待て待て、これは冗談抜きで洒落にならないぞ!?俺が着てるの下着だけだし。
こんなところをリリーに見られようものなら、昨日とは比べ物にならない大惨事になること間違いなしだ。
そして、嫌な予想は当たるものでリリーがドアを開けて起こしに来る。
「ハヤトさん、昨日はごめんなさい。最近強く当たり過ぎてました……って、まだ寝てる……か……?」
「ま、待て!これは誤解だ!いや、誤解じゃないかも知れないが、話せば分かる。まずは話し合おう、な?」
「……ん……あ、ハヤト、昨日は急に来ちゃってごめんね。なんだか寝たくなちゃって」
その言い方は捉えようなよっちゃ誤解を生む!誤解じゃないのかも知れないけど!
「……ひぐっ、うぅ……ハ、ハヤトさん、ごめんなさい、最近構ってくれなかったから……き、きつく当たっちゃって……!謝りますから、捨てないでください!」
その言い方も酷い誤解を生むからな!?
「兄さん、ミルさん知りませんか?昨日帰ってきてない……みたい、で……」
終わった。今日は誤解を解くので一日費やされそうだ。というか、誤解であって欲しい。
結局今回も誤解だったようで、俺は身の潔白を証明できた。嬉しいような、嬉しくないような、よく分からない気分だ。
そんな中、来訪者が現れた。この間のよく出来た中学生だ。
話によると、チャリティーの武闘会をやるそうで俺とユリシアさんに解説をやってもらいとのことだった。
正直乗り気ではなかったが、こんな可愛い子の頼みを突っぱねるのも気が引けたので俺は了承した。
「ありがとうございます。この国の姫としてお礼申し上げます」
……ヒメ、ひめかぁ……姫だと!?
「も、申し訳ございません!姫様とは知らず、とんだご無礼を!」
「いえ、お気になさらず。それでは明日はよろしくお願いします」
そう言って部屋を出ていく姫様。
あの人はリリーとは違った感じで、姫様という感じはするんだが、あの年頃にしては少し冷め過ぎてる気がしないでもない。
まぁ、とりあえず明日は頑張ろう。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。
御意見、御感想、御評価を頂ければ幸いです。
下にスクロールしていくと手軽に評価できるのでお願いします。




