二度目の作戦開始
「一体、一人で何やってたんですか!」
はい、予想通り怒られております。
「いや、だからな、なるべくリスクを減らそうと思って、魔物の大軍に魔力砲を撃ち込んできた」
「そういうことを言ってるんじゃありません!何であんな危険なことをしたのかって言ってるんです」
そ、そんなこと言われても……。
俺が怒られていると、誰かがドアをノックする。
どうぞと言うとクールな感じの女の子が部屋に入ってきた。
「リリーシャ様、差し出がましいようですが、もう少し声を抑えていただけると嬉しいです。声が外まで漏れてますから、お休みになられてる方が起きてしまわれるといけませんので、お願いしますね」
はー、しっかりした子だなぁ。まだ中二ぐらいだろうに、年上に意見できるとは立派だ。
「ご、ごめんなさい、レイシア様!気を付けます!」
「いえ、では私はこれで」
俺はレイシアちゃんが行ったことを確認すると皆に話を聞いてもらう。
「……あの船の話なんだがな、あれが不可視化できたり、砲撃できたりするのは人に言わない方がいいと思うんだ。それにどうやらあの船には自動で操縦してくれる機能があるみたいで、そのことも出来る限り言わない方がいいと思う」
「それはまたどうしてですか?」
刀香も察しが悪いな。少し考えたら分かることだろう。
「あの船は空を誰にも探知されず、自由に泳ぎ回ることが出来る物だぞ?この世界には対空兵器はないから、いつでも制空権を握ることが出来るとんでも兵器だ。それに空からの砲撃もできるときた、そんなことを国が知ればどうなる?」
「船を手に入れようと、遺跡探索を多く行うようになる?」
「それよりもっと手っ取り早く手に入れる方法があるだろ?」
「私たちに直接手を加えて、手に入れる、だね」
俺は静かに頷く。
流石ミル、頭がいい。
船の件はもう少し被害妄想を激しくすれば、襲ってくるって可能性もある。
「念のため聞いておくが、まだ誰にもこの事を言ってないだろうな?」
「それは大丈夫だと思うよ。船に乗ってた人たちはただ、それを飛べる船としか思ってないよ」
なら、一先ずは大丈夫か。もしこの事が外に漏れていれば、俺たちはヒットマンに狙われ続ける日々を送らなくてはならないところだった。
「兄さん、自動で操縦してくれる機能っていうのは何ですか?」
「何でも、あの船を作った天才技術者の思考をコピーして作られたエリスっていうシステムらしい。話すことも可能みたいだ」
とは言え、どこまで会話が出来るのかは定かではないが。
「無人でも操縦は可能なのでしょうか?」
ユリシアさん流石だぜ。船を戦力にしようとしているな。
「エリスに聞いてみないと分からないが、多分できると思う」
「無人で操縦できるなら作戦に組み込めるよう、今回の指揮官に頼んでおきましょう」
ユリシアさんが言ってくれれば、怪しい兵器でも大丈夫だろう。
「よし。じゃあ、皆明日頑張ろうな!」
「「「「おー!」」」」
「……ハヤトさん、巧妙に話を変えているようですけど、話はまだ終わってませんからね」
バレている、だと!?
この後、俺はこってりしぼられた。
次の日になると、戦闘に参加する人間は皆スイッチが入っていた。そこは流石プロといったところか。
俺もそんな雰囲気に当てられて惰眠を貪るようなことは出来なかった。
昼ごろになると部隊編成がされ、各隊のリーダーは作戦会議に参加し、隊員に作戦を伝えるという事が行われた。
今回はパーティーごとや騎士団ごとに隊が組まれたが、これは隊内での連携を重視しているという事だ。この方が俺たちはやりやすくていい。
とは言っても、ミルやエリナ、エリスなどは作戦の根幹になっているからうちの隊はほとんど前衛職となっている。
何でもオルクス直伝のヤバい魔法が使えるそうで、今回のような大規模作戦には持ってこいらしい。
リリーのような貴重な回復魔法が使える人員はベースキャンプで搬送されてきた負傷者を回復するということに徹するらしい。
今回の作戦に参加する人数はおよそ三千人。国の危機とあってメルシャの冒険者はかなり集結している。
まぁ、潔く逃げた冒険者もいるようだが、これも冒険者としてはいい判断だ。
土地にあまり執着しない冒険者はそもそもこんな事をする必要はない。俺たちのような強制参加の冒険者は別としてだが。
俺たちのような冒険者は意外といるようで有名な冒険者を何人も見た。
アストレアスの勇者であるユリシアさん(最近知った)を始めとした勇者もユリシアさんも含め、三人いる。
魔物の大軍による被害は既にかなり出ているが、これだけの腕利きがいれば、十二分に対処可能だろうというのが作戦部の判断らしい。
作戦指揮官はメルシャの騎士団のトップである、聖騎士団長ラインハルト・ブリュードだ。
俺とエリナにとっちゃ、天敵だ、話したくないどころか視界に入れたくないし、入りたくない。
奴の視界に入った途端、悪即斬で殺されそうだ。マジで聖騎士に殺られると洒落にならないので近寄りたくない。
そんなこんなで作戦開始の運びになった。
戦場は国内一の広さを誇る、平原で行われるという。何でもミルとエリナの大規模魔法が関与しているらしい。
いきなり突撃かな、と思っていたが、違うらしい。
ミルとエリナが最前線に立つと、魔法を詠唱しだす。流石に無詠唱での発動は危ないようだ。
しばらくすると詠唱が終了し、魔法が放たれる。
そして俺たちは『地獄』を見た。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。
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