大型強襲飛空艇
エドナに戻った俺とリリーは早速、行動に移っていた。
そうは言っても俺に出来ることなど、金を出すぐらいなので、リリーに白金貨を五枚ほど渡して、諸々の準備をしてもらっている。
例えば、俺の私兵となるあの新兵共の兵舎を確保したり、お役所に行って、形としての就任祝いに便乗して手続きをしたり、だ。
そういう難しいことを全てリリーに任せて俺は何をやっているかというと、
「ハヤト!お主、いつまで寝てるつもりじゃ!もう昼前じゃ、飯を作れ!」
まぁつまり、寝ている。
「あ、そうだな。昼ご飯作らないと」
「……まぁ、わしも色々言える立場ではないが、そのままだと、いつか廃人になるぞ?」
お前だって、ミルに起こされなきゃ、いつまででも寝てるだろ。
「だが、確かに何もないのう……いや、今までが異常じゃったのか。こうも人生というのは退屈なものだったかのう?」
「何言ってんだ、人生に劇的なものを求めるな。普通はこうなんだよ。いや、違うな、この状況も十分おかしい。普通の人はこんなに寝てられない、必死に働いてんだよ。冒険者だったら命をかけて、な。俺たちは運がいいんだよ、それをゆめゆめ忘れるなよ?」
「それはどういうことじゃ?」
「そのままの意味だ。金があるからこんなに自由な生活が出来る。それが貴族でもないんだから……あ、貴族になったんだったな。まぁ貴族でないならもっと自由度は高かったな。それでも領地経営は役所とか行政官がやってくれるらしいから、俺は書類にハンコを押すだけなんだがな」
「本当に現金な奴じゃな……しかし、それはそれとして、本当にどうする気じゃ?一生寝たまま人生を終える気か?」
と言われてもやる事がないのは確かだからな。
「じゃあ、逆にお前はどうした方がいいと思う?」
「お前も忘れたわけではあるまい。つい先日、吸血鬼討伐の件でまた表彰があったじゃろう、それでパーティーの全員がSランク冒険者になったのじゃぞ?Sランク冒険者にはギルドから特別任務が出る可能性がある。それで今日、連絡が来た」
ギルドの依頼はだいたいロクなものがない。どうせ、面倒なヤツなんだろう。
「説明はギルドでしてくれるらしいから早く着替えるのじゃ」
「よく来てくれた。さぁ、入ってくれ」
朝食というか昼食を終え、俺たちはギルドに向かった。
ゲイルさんが外で待っているとは相当だ。これはかなり大きな事件らしい。ギルド内も慌ただしい。
「一昨日、隣国のメルシャ神聖国が魔物の大軍に襲われたそうだ。大軍は今も進行中で三日後には神都メルシャンに到達する、これを受けてメルシャは隣国に支援を求めてきた。本来こういう支援は騎士の役目なんだが、今回の魔物の軍勢の規模はおよそ数千から一万とされている。この間の吸血鬼の大軍と戦った君たちなら分かると思うが、はっきり言って異常だ。各国は『五素の悪魔』の残りの三人が特攻をかけているのが原因と見ている、現にそれらしき目撃情報もある。まぁ、こういう特別な理由でSランク冒険者である君たちは今回駆り出される事となった。ユリシアさん、今回は貴女にもご協力をお願いします」
ユリシアさんにも正式に協力をお願いするってことは相当やばいんだな。
「今回は前回と違って、各所から戦闘員が派遣される。前回ほどは不利な状況にはならないだろう」
「ゲイルさん、一つ質問があります」
「なんでしょう、ユリシアさん」
「ここからメルシャにはどう行っても三日では到着できません。どうするつもりですか?」
「その事に関しては、遅れて行くしかありません。騎士団は五日前に出発済みですが、ギルドの各支部に連絡が来るのが遅かったようで……こちらの不手際です」
それじゃあ、俺がまだ王都にいたときってことになるな。アレス王も言ってくれればいいのに。
「だろうと思いました……そこで私に名案があります」
そして半日で準備を終えた俺たちは出発する段階に入っていた。
「魔力炉の魔力充填率100%!いつでも発進出来ます、ユリシア艦長!」
「よろしい、本艦はこれより神都メルシャンに向かいます、前進微速!」
「アイマム、前進微速!」
ちょ、ミルさん。
「取舵一杯、九十度変針!最大戦速!」
「取舵一杯、九十度変針!針路、100!」
リリーまで……。
「最大戦速!」
いやいやいやいや、何この海軍みたいな状況。
「それにしてもすごいのう。本当に空を飛んでいるようじゃ」
「勇者時代に遺跡から持ち出しておいて良かったですね。まさか魔力を注ぐと説明が聞けるとは思いませんでした」
「……いや、確かにすごいんだけどさ、これ何?」
「ハヤトさん、さっきの説明もう忘れちゃったんですか?これは大型強襲飛空艇だって説明してたじゃないですか」
いきなり話が飛んだが、こんなものが一体どこのにあったのかというと、ユリシアさんの魔法の袋の中だ。
普通はいくら魔法の袋といえどもこんなデカい物は入らないのだが、そこは流石勇者というところ、国宝級の容量を誇る魔法の袋を持っていらっしゃったようだ。
音声説明によると、この船は全長百メートル、全幅二十メートルの大型強襲飛空艇で、強襲とつくだけあって、魔法による不可視化、砲撃なども出来るようだ。最大戦速はヘリと同じ程度。
この技術は今じゃ、完全にロストテクノロジーだ。軽微な損傷なら修復も出来るようだが、致命傷を受けた場合は絶対に直らないらしい。
今、この船はエドナからメルシャンに向かっていて、到着までは一日かからない程度だそうだが、エドナはかなりレガリアに寄っているので馬車でいこうと思ったら、二週間強はかかるらしい。
到着までに一日かからないなら、ということで俺たちはアストレアスの主要都市で作戦に参加するメンバーを拾っていくこととなっている。
予定では全ての街を経由しても二日で到着とのことだ。
それまで暫しの休息をとるとしよう。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。
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