ご挨拶
俺は約束通り、王城前に来ていた。
「あ、おはようございます。それでは行きましょうか」
昨日のこともあったので、どこへとは聞かなかった。
「はい、着きましたよ」
「え?ここって……」
俺が言うと門の前の兵士が巨大な扉を開けてくれる。
「王女殿下、ご入室〜〜〜!」
こ、ここは謁見の間だ!
リリーと俺は楽器の音と兵士の鋭い眼差しに囲まれて中央を進む。
リリーは王の隣へ、俺は王の前に跪く。こういう作法もオルクスとユリシアさんから習った。
「冒険者ハヤト、面を上げよ」
うわー、すげえプレッシャー。変な動きをしたら一瞬で首を落とされそうだ。
「何、そう堅くなることはない。俺は、じゃなかった、私はこれでも武人なのだ。礼儀作法などを面倒臭いと思う側の人間だ。少し話そう、ついて来い」
なるほど、自分の子供を追い出すぐらいには普通の人間というわけか。この人とは話が合うかも。
「ふぅ、疲れた。お前も見ただろ?俺が少しいい間違っただけで睨んでくる、大臣たちを!こういう面倒なことになるから騎士になったってのに、今じゃ、一国の王だ……ああ、済まない、言っても仕方ない無いことを言った。改めて、俺はアストレアス・ファン・アレスだ、この国の王のであり、リリーの父だ。よろしく頼む」
「ハヤトです、こ、こちらこそよろしくお願いします」
「だからそう堅くなるなって。俺はハヤト、お前の義父になるかもしれない男だぞ?もうちょい、フランクに接してくれよ」
「じゃあ、よろしくアレスさん」
「急にフランクになったな!?……まぁいい、それよりリリーは粗相をしたりしてないか?俺はリリーが送り返されて来るのではないかと心配で心配で……いや、協力感謝する」
俺の目でどういう事が起こったか理解できたようだ。
「それよりリリー、今日はどんな用でここに来たんだ?」
え?アレス王も知らないのか?
「ご挨拶です」
「「え?」」
「いえ、ですから、私とハヤトさんでお父様にご挨拶しようと思って」
アレス王は俺に近くに寄るように指示を出す。
そして、小声で、
「リリーとはどこまで行った?恥ずかしがることはない、正直に言え」
「え、えっとキスまで」
「やっぱり、そうだよな!ハヤト、お前としてはどうだ?娘と身を固めるつもりはあるのか?正直俺はお前にもらって欲しい。こいつは他の家に出せるような女じゃない。だから貴族じゃあまりないが、恋愛結婚をさせてやろうと思ってる」
「好きですよ、リリーのこと。だから婚約したんだし」
「よし、お前意外と男前だな。リリー、いい男を捕まえて来たな!俺はお前たちの婚約を全面的に後押しするぞ!好きなようにやれ」
「やりましたね、ハヤトさん!これで私たちは正式に婚約者ですよ!」
「あ、ああ。俺も嬉しいよ」
こんなんで、本当にいいのか?
「ちなみに浮気したり、妾をつくったりしてもいいですけど、私が一番ですからね」
この国、重婚ありなんだ。
「そういえば、レガリアでは災難だったな。ユリシアから聞いだぞ。どちらも無事なようで何よりだ」
まぁ、俺が悪くて、リリーを巻き込んだんだけどね。
「それと、お前今日から貴族だから。領地はエドナとかその辺一帯だ。領地経営に関しては気にしなくていい。行政官をこちらから送るし、その辺はリリーが上手くやるだろう。そうだ、お前が鍛えた新兵を持ってけ、好きに使っていいぞ。後は姓だな……」
「ちょ、ちょっと!そんなの勝手に決められても困りますよ!」
「お前も分かってるだろ?うちの国は貴族がいないんだ。こういう風に増やしていくしかないんだよ」
な、なるほど、一理ある。
「わ、分かりました……姓でしたらキリュウでお願いします。ハヤト・キリュウ、これでいきます」
「変な姓だな。まぁいい、じゃあそういうことでよろしく。俺も忙しいからな、失礼する」
「お母様にもご挨拶しないといけませんね。では行きましょう」
これ、まだやんのか……。
「お母様、失礼します」
「あら、リリーちゃん。そちらの方は……ああ、婚約者のハヤトくんね。リリーの母です、娘がお世話になっています」
「いえ、こちらこそお世話になってます」
リリーはお母さん似だな。纏う雰囲気とかそういうのがそっくりだ。
「ここに来たってことはアレスさんと面倒臭い話は片付けてきたのでしょうから、私からはリリーちゃんの話をしましょうか」
「お、お母様!やめて下さい!」
「うふふ、恥ずかしがらなくてもいいのよ。もう気付いていると思うけどリリーは昔からおっちょこちょいでね、いつもお皿を割ったりして、大変だったわ。でもね、その行動の原因はいつも善意なのよ、だからある意味じゃ、すごい太刀が悪いわよね」
「お母様、酷い!」
「だけど、私はこれでいいと思ってるわ。だってとても一生懸命なんですもの、大抵のことなら許してあげたくなっちゃう。貴方もそうでしょう、ハヤトさん?」
「ええ……本当に、そう思います」
「その言葉と顔が見れただけで十分よ。二人とも幸せにね。結婚式はもう少し後にしましょうね」
なんだが、終始手玉に取られてた感じだ。
まぁでもいい人そうではあったので邪険に扱われたりはしなそうで良かった。
「あの、ハヤトさん、出発は明日ですよね?」
「ああ、そうだな。今日ここを出たら色々面倒臭そうだからな」
「じゃあ、今日は外の宿屋に泊まりませんか?いい宿屋を知ってるんです」
確かにそういうのもいいかもな。金をアホみたいに稼いできたが、案外贅沢はしていないから、たまには金を使ったってバチは当たらないだろう。
「じゃあ、今日はそうするか」
俺は今はなって思う、これってそういう事だよね!?
ゴーサイン出てるって事でいいよね!?
向こうから誘って来たんだ、これで何もないはずがない。とうとう、俺も大人の階段を上るのか。
「ハヤトさん、じゃあ……」
来る!
「おやすみのキスを下さい……!」
はい、分かってました。平常運転ご苦労様です。
しかし、これを残念がっているということは俺もこういうことに慣れてきたということ。確実に俺のレベルは上がっている!
あー、このキス待ちの顔、もうこれゴーサインじゃん。もういいけど。
「……はい、これでいいか?」
「……はい……ありがとうござい、ます……!」
お前が照れてんじゃねえ!ああもう、可愛いなぁ!
「じゃ、じゃあ、もう寝るか!明日は早いしな!」
「そ、そうですね、早く寝ましょう!……それと、もう一つお願いなんですけど……」
「な、なんだ!?俺に出来ることならなんでもするぞ!」
「そ、その……手を繋ぎながら寝ませんか!?」
だからお前が照れんなって!やりにくくなるじゃん!
「な、なんだそんなことか!は、はい、これでいいか?」
「は、はい、ハヤトさんの手、ひんやりしてて気持ちいいです」
「……そうかよ」
温度なんてあんまり感じられない手だけど、あったかくて気持ちいい、そんな気がした。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。
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