俺はハヤト軍曹
「ハ、ハヤトさん、お話があるんですが……」
「ん?どうした?」
「その、流石にその体勢では……いえ、何でもありません。国からハヤトさんへ依頼が来ているのですが、どうしますか?」
「どんな依頼だ?国から来る依頼なんてよっぽどのものだよな?」
「実はですね、軍の訓練教官が大怪我をして、休養しているんです。それでハヤトさんが代わりに教官をやってくれないか、と」
「何で俺に白羽の矢が立ったんだ?」
「アイゼナッハ流の教官が他に居ないからだそうです。ちなみに報酬は二週間の教習で金貨五枚です。どうでしょうか?」
教官か……これは楽しそうな話が入ってきた!
「その話、受けよう」
「……そのセリフ、布団を出てから言ってくださると嬉しいです」
というわけで俺はリリーと共にアストレアス王国の王都アレスティアに来ていた。
何気に初の王都訪問で色々驚いていた。
訓練所は王城の敷地内にあるようでそのまま一直線に向かう。
王城に着くとリリーは王様に挨拶をしてくるそうなので入り口で別れた。
それにしても広大な敷地だ。訓練所がいくつもある。
「あれ?貴方はハヤトさんではありませんか!どうしてこのような場所に?」
この人は……ああ、第一副騎士団長ルイスさんか。
俺は短期間だが教官をする事なった旨を伝える。
「ハヤトさんが教官に……それならうちの生意気な新兵も黙ることでしょう。では、私も仕事があるので、失礼します!」
なるほど、生意気な新兵か。これは鍛え甲斐がありそうだな。
俺は所定の訓練所に着くと、すぐに訓練兵を召集した。
「俺は貴様らの教官殿に代わり、派遣された臨時の教官だ。最初に一つ言っておく、俺への返事で許されらのはサー、イエッサーのみだ。分かったか!」
『サ、サー、イエッサー!』
くぅぅぅ、一回はやってみたかった、なりきり鬼軍曹!まさかここで叶うとは!
「よし、良い返事だ!それともう一つ、貴様らはウジ虫だ、人間ではない。これから二週間の訓練をクリアして初めて貴様らは人間になる、心しろ!」
『……サ、サー、イエッサー!』
「よし、まずは王城の外周を十周だ!」
『サー、イエッサー!』
そして、俺の鬼軍曹訓練が始まった。
「ちんたら走るんじゃない!俺は貴様らウジ虫より年下だぞ、体力で負けてどうする!」
『……』
「走るのを止めるな、このウジ虫が!俺の母親は五十周など余裕だぞ!貴様らに○マはついてるのか!」
『…………』
「この訓練所では貴族も平民も裕福も貧乏もない!俺は貴様ら全てに平等だ!何故なら貴様らは全員無価値だからだ!そこ、もっとしっかり剣を振れ!」
『………………』
「貴様らは俺が嫌いだろう。ガキのくせに上からものを言ってんじゃねえ、と思っているだろう。大いに結構!ならば貴様らは俺より強くなり、俺を殺してみせろ!俺を殺すことを許可する、遺書にも書いてやる!俺を殺すために俺について来い!」
『ならば、今殺してやる!!!』
「いいだろう、だが、少し待て。全員これより十分間休憩とする。もしものときのために遺書を書いてやる」
「よし!貴様ら全員でかかって来い!ウジ虫と人間の差を分らせてやる!!」
「分かったか、これが貴様らウジ虫と人間の差だ!今、貴様らは猛烈に悔しいだろう。ならばそれを糧とし俺について来い!俺は貴様らウジ虫を一人前の兵士にするために呼ばれた男だ!さぁ、行くぞ、もう十周だ!」
『サー、イエッサー!!』
「……ウジ虫共、二週間よく頑張った!これで俺からの訓練は終了だ!貴様らは今、これよりウジ虫を卒業し、一人前の人間となる。しかし、最終訓練として俺から魔物討伐作戦を提案する!どうだ、貴様らに行ってみる気はあるか!?」
『サー、イエッサー!!!』
「良い返事だ、これより作戦を説明する!」
俺がこの二週間で鍛え上げた訓練兵の練度はおそらく、一般兵を上回る。俺はそれだけのことをしたつもりだ。
今回の作戦一体どうなるか楽しみだ。
「アルファ隊は右から、ブラボー隊は後ろから、チャーリー隊は左から対象を囲め!」
これは俺が言ったのではない。俺が担当した訓練兵たちの隊長的存在の指示だ。
今回の対象はクレイジーベア、簡単に言えば巨大で凶暴な魔熊だ。
ギルドによる討伐ランクはA。この人数で行けば難易度はBに下がるだろうが、人数が多い分しっかりと統率が取れてなければ、簡単に全滅する。
「各隊の弓手は一斉に攻撃しろ!」
通常弓如きでは、魔熊の体に矢が突き刺さる事はないが、数を打って目などに当たれば話は別だ。
「対象が暴れるぞ、前にいる隊は下がれ!背後を取れる隊はこの隙に足を攻撃だ!」
まぁこういう兵法とかは俺には分らないのでほとんど任せっきりだが。
「チャーリー隊が足の攻撃に成功!進行が止まったぞ!各隊長は『グレネード』を投げろ!」
『グレネード』、そのままの意味だ。
俺は『グレネード』を開発したのだ!数はたったの五つしかないが、威力はかなり高いと自負している。
この世界にもニトロみたいなものがあったので作るのは簡単だった。
腹に響くような爆発音、成功だ。
「教官、対象を撃破!これより戦利品を回収して帰投します!」
「貴様ら、今日までよくついて来てくれた!ここでの飲み代は俺が全て持つ、好きなだけ飲み食いしろ!」
『サー、イエッサー!』
「教官って一体何者何ですか?教官って多分成人したばっかですよね?」
「前半については秘密だ。後半については十六だよ」
俺がカッコつけて話していると貸し切りにしているはずの店のドアが開く。
「ハヤトさん、ノリノリですね。私を放っておいて」
「あれ?……王女殿下!?それに教官、ハヤトって……あんたもしかして、エドナの英雄か!?」
なんだ、俺にもとうとう通り名が付いたのか?
「いいなぁ、教官はこんなに可愛い婚約者がいて。俺も可愛い嫁さんが欲しい」
「ハハハ、フィン、酔いすぎだぞ」
「皆さんは黙っていて下さい」
『イ、イエスマム!』
あ、やべ。なんか声のトーンがガチじゃん。
「ハヤトさん、私たち、婚約者ですよね。なのに私には何もしてくれない。もしかしてハヤトさんは男性の方がお好きなんですか?」
「ひ、否定であります!」
「あら、そうなんですか?では、私のこと、愛してますか?」
「こ、肯定であります!」
「声が小さい!」
「肯定であります!!」
「そうですか。では明日九時王城前に来てください」
そう言って、店から出て行くリリー曹長。
「きょ、教官、中々パワフルな婚約者さんですね」
「……まぁいい!とりあえず今日は飲みまくって忘れるぞ!総員食って飲め!」
『サー、イエッサー!』
こうして夜は更けていった。
ちなみに今夜の飲み代は全部で金貨五枚。三十人でこれは飲み過ぎだ。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。
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