勇者とは
結局俺は外に転がされて、一時間、目一杯ぼこぼこにされた。服もボロボロで色々見えちゃいそうだ。
聖女様は俺にガチの浄化魔法を、魔法使いさんは火の上級魔法を当ててくる。
ここまで来るとかなり痛みに慣れてくる。元々吸血鬼に備わっている性質のようなものなので、すぐにスイッチが入ったようだ。
一時間経つと流石に奴等も疲れたようで、肩で息をしている。
途中で愛しのリリーが起きて、必死に説得しているようだったが、効果は出なかったようだ。
今回の事に関しちゃ俺が十割悪い。
物理的にも精神的にも身に染みました。あれは俺の悪癖だ、封印するべきなのだろう。
自由気ままに生きたいと思っていたが、こういう事は控えよう、そう心に決めた。
しばらくするとまた勇者たちが復活してきたようで第二ラウンドが始まるらしい。
まぁ、もう慣れちゃったから、痛がるフリをすれば良いだけなんだけどね。
「おい、お主ら、そろそろ勘弁してやってはくれんかのう?今回はハヤト殿が悪い、後先考えずにああいう事をするからこうなる」
「ふーん。あんた意外と分かってんじゃん。でもやめない、こいつはそれだけの事をしてんだよ。こっちも面子を潰されちゃ黙ってられない。何せ俺たちは『勇者パーティー』なもんでね、それに泥を塗られたんじゃ、国の沽券に関わる。だからしっかりシメとかなきゃなんねえんだよ」
「そうか……ならば力づくで止めるまでじゃ」
エリノアさん、そんな事できるのか?
「ハッ!やれるものなら……何だ!?体が動かないぞ!」
んん!?俺の体まで動かないぞ?
「びくともせんじゃろう?これは『魔王の重圧』という特殊スキルでのう、簡単に言えば五十レベル以下の生物は無条件に体が動かなくなるのじゃ。最初から使っても良かったんじゃが、ハヤト殿は少々浮かれておるようじゃからお主らに灸を据えさせたのじゃ。ハヤト殿、今回の事、身に染みたじゃろう?」
と言われても体をぴくりとも動かせないのだから反応のしようがない。
「しかし、じゃ。儂は貴様らのような人間は大嫌いじゃ!ハヤト殿は百歩譲って、まだ許せる。しかし、貴様らは勝負に負けて、その腹いせに無関係な人間をさらい、人質に取った!これは向上心のカケラもない、卑怯者の行いじゃ!何故儂がこんな腑が煮え繰り返る思いしているか貴様らに分かるか?それはな、儂が元勇者で、貴様らが曲がりなりにも勇者じゃからじゃ!勇者は人々に希望を与える者のことを言う。それがこの体たらく、これは貴様らの先人たちへの侮辱じゃ!この面汚しが!!恥を知れ!……ハヤト殿、お主はユリシア殿の御子息じゃ、振る舞いには気を付けられよ。今後あのような軽率な行動は控えると良いじゃろう……尤も、お主はもう十分理解しているようじゃが」
か、かっけえ!この方こそ真の勇者かも知れんな。
この後、動ける状態にある、ユリシアさんとエリノアさんが勇者マグナ一行を縛り、俺たちを助けてくれた。
ユリシアさんによると確かに俺に対して暴行した事はレガリアの法では裁けないらしい。
しかし、リリーを誘拐した事は立派な犯罪行為であり、通常の市民であれば、揉み消される可能性もあったが、リリーは身分が身分なだけあって、アストレアスにしっかり報告すれば、然るべき対応をしてくれるとの事だ。
俺たちはマグナ一行を放置したまま自宅への『テレポート』を開始した。
あれから一週間が経った。
銀行の口座にはなんと、白金貨二百枚が振り込まれていた。もう驚かなかったが、伝言によるとこれは売価の二割らしい。流石辺境伯、太っ腹だぜ。
事件については、ユリシアさんがアレス王に報告してくれたらしい。俺に対してはお咎めなしのようだ。
そして、エリノアさんは今日にでも旧魔王領に向かう事になっていた。
「ハヤト殿、儂を居候させてくれた事、感謝する。魔王選が終わったら、また遊びにくる。そのときはまたよろしく頼むぞ」
「イエス、マム!」
「そ、その言葉の意味はよく分からんが、良い返事じゃな……エリナもまたどこかで会おう、待ちきれなくなったら魔王領に遊びにくるといい……では、さらばじゃ!」
そう言って、すぐに消えてしまった。
何だか少し停滞する台風のような人だったな。
さーてと、これからどうすっかな。面倒事もなくなって、本当にやることがなくなっちまった。
そして、俺は自堕落な生活を送ることを決めた。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。
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