まるでDQN
城塞都市レイゼルを出て今日で四日目。今日俺たちはレガリア帝国の帝都レガリアに到着する予定となっている。
レガリア帝国は大陸で一二を争うほどの広さを誇っていて、帝都の大きさはとんでもないらしい。
中心に近ければ近いほど身分の良い人間が住むという街の作りをしていて、街を囲う外壁はおよそ五十メートル、おまけに厳しい検問。緊張する事、間違いなしだ。
そんな事を考えながらエリナが御者をする馬車に揺られていると帝都が見えてきた。ここからでも分かる、バカ高い外壁だ。
もう時刻は夕方に差し掛かろうとしていて急がなければ、門が閉まって街に入れなくなってしまう。
「エリナ、ちょっと急げよ?」
「分かっておるわ!リリーよ、馬に支援魔法をかけてやってくれんかの?」
いや、そこまで急げとは言ってねえよ!しかもそんな荒技があるのか!?
「分かりました!」
俺が止める間もなくリリーは無詠唱で馬に魔法をかける。
ああ、すげえ。確実に速くなってる。かなりしょうもない魔法の使い方だけどな。
支援魔法の甲斐あってか、少し余裕を持って街に入る事が出来た。
今日は商会が経営している宿屋に泊めてもらえる手筈になっているためそのままボルドーさんの馬車について行けばこの依頼の片道はクリアだ。
魔物と出会う事がたまにあったが、魔法組がすぐに倒してしまうため俺たち物理組の出番はなかった。
ついて行くだけで金がもらえるなんて楽な依頼だぜ。
このまま宿屋の下で晩飯を食って寝ようかと思ったが、小さなアクシデントというか驚きがあった。
なんと、ユリシアさんが勇者だと一般市民の中に分かった人がいたのだ。流石に俺はこの顔の広さには驚かされた。
まぁこの事が仇となって面倒事が舞い込んでくるのを知るのはもう少し後になるのだが。
次の朝
今日はボルドーさんから好きにしていい、と言われているので俺は朝食もそこそこに宿を出て観光でもしようと思い、外に向かうそのときだった。
「おっさん、ここに勇者ユリシアがいるってのは本当か?」
宿屋の受付の人にユリシアさんの事を聞く声が聞こえた。少し気になったので聞いていく事にした。
「申し訳ございません。お客様の情報についてはお聞かせ出来ない規則となっておりますので」
「いいじゃんかよ、おっさん。俺はレガリアの勇者だぜ?少しぐらい融通効かないもんかね?」
勇者だと!?勇者はユリシアさんのはず、ならば何故勇者が二人もいるんだ?
「彼が言う勇者というのは称号のような物ですよ」
「ユリシアさん、いたのか。それより称号ってどういう事だ?」
「私の勇者というのはいわば職業、魔王を倒すための力を宿した人間です。対して彼は国が一名称号として勇者と名乗らせている冒険者です。言ってしまえばパチモンですよ」
パチモンとはまた辛辣な……国が出す称号って事はアストレアスにもいたりするのだろうか。というかユリシアさん、アンタ本当にキャラ崩れてるぞ?
「いえ、ですから……」
「あっそ、それならこれでどうだ?」
パチモン勇者は剣を受付のおじさんに突きつける。
なるほどね、エリノアさんが言ってたゴミはこういうのを言っていたのか。
俺はおじさんに目配せして言うように指示する。
「あちらの席の方です……」
あ、こっち来た。
「アンタが勇者ユリシアか?単刀直入に言う。俺と戦え、勇者」
まぁ、なんて失礼な子なんでしょう!ここは礼儀という物を叩き込んで差し上げないと!
「母さん、こんな奴と戦う必要ないよ」
「なんだ、お前。俺は今勇者と話してんだよ、口挟むんじゃねえ」
「てめえみてえなゴミと母さんが戦ったら、母さんが汚れるっつってんだよ。分かんねえのか?」
「何だと?お前、覚悟は出来てるんだろうな?」
はい、予想通り食いついてきました。この高い鼻をどうへし折ろうか。
「覚悟だぁ?そんなもん要らねえだろ。おっと、そうかっかすんなよ。俺が言いたいのは母さんと戦いたいならまずは俺を倒してからにしろって事だ……そうだな、街の外に出て、そこで勝負しないか?なんならパーティーメンバーも呼んどけよ、まとめて俺が相手してやる」
「……分かった。昼ごろ南門集合だ、分かってると思うが、逃げたら一生お前は笑い者だからな?」
俺は無言で頷き、羽虫を払うかのように勇者に手を振る。
おお、おお、すごい殺気。こりゃ負けたら間違いなく殺されるな。まぁ死なないけど。
別に俺は勇者の態度に腹が立ってああ行動したわけではない。俺の力がどこまで通用するか、それが知りたかったのだ。まぁそれでも少し気分は悪かったが。
レガリアの勇者なんて呼ばれるぐらいなんだから弱いはずがない。そんな奴に勝てれば間違いなく俺は強いと自分に自信が持てるはずだ。
「私はあなたが認めてくれて嬉しいです!」
いや、そういう部分が全くなかったといえば嘘になるけど別にそういうわけじゃ……。
「じゃあ、俺も色々準備があるからもう行くよ」
俺がそう言って立ち上がろうとするとそのまま抱きしめてくれるユリシアさん。
「ありがとう、ハヤト」
この感触やはりいい!これのために戦っても悔いはない!
俺は早速準備を始めた。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。
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