念願成就?
クッソぉぉぉ!何で誰も来ないんだよ!?
吸血鬼百二十体討伐って、かなりの功績じゃん!
誰か俺を迎えに来たりだとかさ、そういうのってないわけ?
あれから体の再生は終わったが、再生が終わると同時にまたこみ上げてきた。
だってさ、流石に誰もフォローに来ないのってなくね?
確かに俺は損得で決める事の多い自己中ですけど、それでもちゃんと街のために戦ったじゃん!
「ハヤトさん、大丈夫ですか?何か問題でもあったんですか?」
ああ、ついにリリーの優しい声の幻聴までする。
でもこれなら一生幻聴が聞こえる世界にいたい。その方が幸せな気がする……。
「ハヤトさん?……ハヤトさん!?本当に大丈夫ですか!?」
さらに幻覚までするようになったか……これで一生生きてけるわ。
「なんだ、起きてるんじゃないですか。さぁ立ってください!今、すごい事が起きてるんですよ!」
ん?これは現実か?
結局一番に駆けつけてくれたのはリリーか。
俺に優しくしてくれるのはリリーとミルとユリシアさんぐらいだよ……これって結構多いんじゃないか?
「どうしたんだ?見たところ戦闘も上手くいったよたし、後は帰るだけだろ?」
俺が言うとリリーは本隊の方を指差す。
特性で視力を上げて……何でユリシアさんと吸血鬼王が仲良さげに話してるんだ!?
「おいリリー、ありゃどういう事だ!?」
「それが……」
俺はリリーから何が起こったかを全て聞いた……俺のいないところで急展開を迎えているぞ!?
しかし、いい事を聞いた。『魔王候補』がいると言うじゃないか。
所詮魔王候補になるような者、心の底では欲に満ちた外道に決まっている。
ならばここらで芽を摘んでおくのが賢明な判断というもの。
俺は身体強化の魔法をフルパワーでかけて走り出す。俺がここで首を取れば大英雄、その礎となってもらおう!
「魔王候補、覚悟ぉぉぉ!!」
俺の剣は背後から狙い過たず、心臓を貫く。
フフフ……アーハッハッハッ!やった、俺はやっぞ!
最初は魔王のいない世界なんて、と思っていたが、想定外の復活でそれも問題なくなった。その上討伐までしたのだ、俺の人生は大金星だ!
「痛いのう……誰じゃ、儂の胸にこんな物を突き刺した奴は……お主は……英雄殿ではないか!」
何故生きている!?……ああっ!こいつ吸血鬼だった……それに英雄殿ってなんだよ。
そして外す事の出来ない超重要な要素がこの魔王候補にはあった。
この魔王候補、とんでもない胸をした美女なのだ。
さっきは戦闘中で全く見ていなかったが、これはヤバイ。
俺の知ってる中でこれに敵う胸を持っているのは姉さんぐらいのものだ。
「……いや〜、すまんな。お前が魔王候補だって聞いたからついつい攻撃してしまった」
「ハハハ、そうか、そうか。儂はこの通り吸血鬼じゃから問題ない。それよりお主はどうやら吸血鬼が混じっているようじゃな、それにお主からは儂と同じ匂いがする……」
こいつチョロいわ。このチョロさ、誰かに似ている気がしないでもない。
「そ、そうですかね?さっき戦った吸血鬼の返り血を浴びてるからですかね?」
おそらくこいつを殺すのは無理だ。勇者パーティーでも怪しいところだろう。
「は、母上……?母上ではないのか!?」
今度は何だ?急に焦ったような声を出して。
「お主は……もしや儂の子孫か?……いや、この匂い、間違いない!そうか、この時代にもまだ儂の子孫がおったとは驚きじゃ。そなた、名前は何と言う?」
エリナの祖先は伝説の吸血鬼王の勇者だったという事か。
この吸血鬼王が現代に蘇った事について、俺は全くと言っていいほど驚いていない。天界で俺を転生させられるんだから冥界にも同じような事が出来るはずだ。
「エ、エリナです」
「そうか。ではエリナよ、儂に名前を付けてはもらえんかのう?現世に戻ってくるのも久しぶりで儂は名前を忘れてしもうた、じゃから新たな名前をお主からもらいたい」
そんな事、急に言われったって困るに決まってる。
「では……エリノア、という名前はどうでしょうか?」
なるほど、エリノアねえ。
俺はこの名前に聞き覚えがある、エリナの母親の名前だ。
それにしても自分の母親の名前を付けるとはな。それほど魔王候補が母親に似ていたという事かもな。
「うむ……エリノアか、良い名じゃ。儂は今日よりエリノアと名乗る事にする。エリナよ、感謝する。素敵な名前をありがとう」
「い、いえ!もったいないお言葉ありがとうございます!」
そんなにガチガチの敬語使わなくても……いやでもご先祖は敬うべきなのか?
俺はこんな事を考えるレベルにはエリノアさんを殺そうだとかそういう気はすっかり失せてしまっていた。
こんな感動の再会(再会じゃないけど)を見せられたら誰だってぶち壊そうとは思わないだろう。
それから俺たちは街に撤収した。
エリノアさんはかなり怒られていたが、道中で殺した魔族が五素の悪魔だったようで、これに免じて一連の騒ぎについての処罰はなしとなったようだ。
まぁこれも勇者であるユリシアさんの口添えと私が責任持って預かるというわけの分からない事を言ったお陰だろう。
というわけで俺たちの家には今、魔王候補がいる。
国としてもどうせ魔王が出て来るなら温厚な方がいいと判断したようで、国からもお咎めはないようだった。
「で、詳しい話を聞かせてくれるんだよな?」
「もちろんじゃ。そもそもの発端は……」
から始まったとても長い話だったので所々、端折ってまとめさせてもらう。
ある時、冥界の王ハデスに呼び寄せられこう言われたらしい。
『最近さぁ、僕たちの子供みたいな立場であるところの君の世界の魔族がピンチなんだよね。最近の魔王は弱っちぃくせに勇者と戦って、こてんぱんにされるから、魔族の勢力はどんどん小さくなるばかり。だから僕は魔族に信託を出して、魔王を決める選挙を開くように指示したんだ。それでさ、僕が元の世界に復活させてあげるから全時代の中でも最高峰の力を誇る君に『冥界神特別推薦枠』として出馬してほしいんだよ。なぁに、大丈夫、大丈夫。推薦枠の力は強いから多分君が当選する、他のはどうせ君に比べればボンクラもいいところだからさ。ね?頼むよ。別に魔王になっても人間と戦えとは言わないよ、君なりのやり方で魔族を盛り立ててくれればいいんだ』
こう言われたエリノアさんは快諾し現世に蘇った。
現在魔族の政府は信託に従い、急ピッチで選挙の準備を進めているそうだ。
急ピッチといっても一ヶ月は掛かるそうで時期が近づくまではここで過ごすとの事だ。
こうして俺の元にまた一つ面倒くさい事が舞い込んで来たのだった。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。
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