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決戦

 今回はユリシア視点です。

 とうとう戦闘が開始しました。

 私は今回の戦闘で犠牲者をゼロにしたいと考えています。そのためにはリリーちゃんの支援はもちろん私も本気で挑まなければなりません。

 私が率いる本隊は上級吸血以上を撃破するためのグループなので、中級吸血鬼以下の相手はハヤトとトウカちゃんのグループに任せています。


 しかし、突然ハヤトが吸血鬼を侮辱した結果、中級吸血鬼以下はハヤトが全て引き連れて行ってしまいました。

 お陰でほぼ全ての人員を上級吸血鬼以上に割けるのですからありがたい事です。

 それにしてもハヤトは大丈夫かしら?まぁでも私が手塩にかけて育てた息子ですから、大丈夫でしょう。


 そんな事を考えてる間も私は上級吸血鬼を倒していきます。

 吸血鬼王は手合わせした事ない未知の相手、極力体力は温存したいところですが、残念な事に上級吸血鬼は回復速度が速く、普通に倒すなら一瞬もずらさずに頭と心臓を潰さなければなりません。

 だから私の聖剣の力で回復不能にして倒すのが手っ取り早いのです。


 吸血鬼王は前線に出る気が全く無いようで、私たちとの戦闘を上級吸血鬼に任せています。


「皆さん、あともう少しです!これを倒せば吸血鬼王に辿り着けます!」


 私たちはダメージをもらいながらも、どうにか最後の上級吸血鬼を倒します。


「中々やるようでは無いか。特にそこの人間は凄まじいのう、その手に持っているのは聖剣じゃろう。お主は勇者というわけじゃな」


「ええ、私はユリシアです。ここで投降するのなら、牢屋行きで済むでしょう。そうでなければここで滅殺します!」


 私が言うと、吸血鬼王は笑う。


「当代の勇者はいきがいいのう。試しに儂と手合せしてみぬか?」


 普通、吸血鬼如きが聖剣に触れでもすればかなりのダメージを受けるはず。

 何か策があるのでしょうか?

 どちらにしてもやるだけですが。


「いいでしょう。そのまま滅殺して差し上げます」


 私はそう言うや否や、一気に吸血鬼王との距離を詰めます。そのまま相手の腕に剣を振り下ろします。

 吸血鬼王は異空間から鎌を取り出し、剣を受けます。

 ですが、こちらは聖剣、並の武器ではそのままへし折れますよ!

 しかし、相手の鎌は折れる事なく聖剣と何度も斬り結びます。

 魔剣であっても普通は何合か斬り結べば折れるはずなのに!


「ハハハ、驚いておるな、勇者?儂も驚いておる、まさか聖剣と斬り結べる魔剣が存在するとは思わなんだ」


「あなた、ただの吸血鬼王ではありませんね?」


 いくら強い魔剣でも刃こぼれぐらいするはずですが、吸血鬼王の鎌は刃こぼれさえ、していません。


「おっと、自己紹介を忘れておったな。すまんな、なにぶん昔の知識しか持ち合わせていないものでのう。儂は元勇者で冥界から蘇った吸血鬼王。次代の魔王候補じゃ、名前は……忘れてしもうた」


 ま、魔王候補!?先代の魔王を倒してからまだ十年も経っていないのに!

 この場全体にどよめきが広がる。


「勇者と戦士たちよ、そう身構えるのをやめてくれ。儂はその街を襲う気は全く無いのじゃ。ただこの街に勇者の気配を感じて参った次第じゃ。お主らが戦っておった吸血鬼はこの街に進軍するようじゃったから、頭のおかしい魔族だけを殺して、ここまで連れて来たのじゃ。こんな大群でなければ、お主もここに出てはこなかったじゃろう?それに此奴らも血に飢えていたようじゃったからどちらにしろ放っておけば人を襲う、それは避けたかったのじゃ。ユリシア殿、儂はお主を試すつもりじゃった」


 もしかしてこの人はいい人なのではないでしょうか?過去の魔王の中には人間と戦う事を選ばなかった魔王も存在したと聞きますし。


「儂の次代の勇者はそれはそれは酷いものじゃった。勇者ならば何をしてもいいと考えておる外道でのう。宿代や食事代を払わないのは当たり前、酷いときには暴力もふるったそうじゃ。儂は儂の他にそんな勇者しか知らない、だからユリシア殿はどのような人間か確かめたかったのじゃ。今回の非礼を詫びよう、すまなかった……そういえば大半の吸血鬼を引き連れて行った男がおったじゃろう、大丈夫かのう?」


 この人はすまなかったで、済むと思っているのでしょうか?いや、思っているのでしょう。

 それよりハヤトはどうしたのでしょうか?『限界突破』を使ったとしてもすぐに筋肉を再生してくるはずなのに。


「ユリシアさん……ハヤトさんならあそこで蹲ってるみたいです……」


 リリーちゃんの指差す方を見ると、だいぶ遠いですが何かがあるのが分かります。

 吸血鬼は全部倒しているのに、一体どうしたのでしょう?想定外の事が起こったのでしょうか?

 とりあえずリリーちゃんにはハヤトのいる方へ向かってもらう事にしました。

 無事だといいのですが……。

 この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。


 趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。

 御意見、御感想、御評価を頂ければ幸いです。


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