開戦
とうとう戦闘が始まった。
俺は部隊長ながら一番槍をやらされていたので、一番最初に敵と会敵した。
吸血鬼は下級であってもCランクとかなり高い討伐ランクだ。
しかし俺たちの部隊は一応Bランク以上の冒険者しかいないとあって下級吸血鬼は楽々倒せた。
だんだんと混戦になってくると中級吸血鬼が前に出てきて進行が止まってしまう。
「このままじゃ、本隊が前に切り込めない!」
そして俺はある作戦を咄嗟に思い付いた。
吸血鬼のほとんどは言語を理解出来る。そして吸血鬼はおそろしくプライドが高く、自分勝手だ。現に今もまともな集団行動など全くとっていない。
俺は大きく息を吸い、気配と殺気を最大限に解放する。
「聞け、吸血鬼の雑魚ども!聞けばお前らは血に困ってるそうだな?俺はどうやらお前らが大好きな月の血らしいぞ?てめえらの様な雑魚に俺が倒されるわけがねえが、もし倒せれば月の血が飲み放題ってわけだ。殺されたい脳なしから掛かって来やがれ!」
俺の気配は場の全てに届いた様で、しばらく沈黙に包まれる。あー今までの人生で一番大声出した。
「……我らを愚弄したあの愚か者を殺せぇぇぇ!!」
俺は走り出す。そしてもう一度言おう、吸血鬼はプライドが高く、自分勝手で、バカだ。
流石に上級吸血鬼にはこんな安い挑発は効かなかったが、中級以下には効果絶大だ。
文字通り鬼の形相で俺を追いかけてくる。
「さっさと止まってまともに勝負しやがれ!」
「負けるわけねえんだろ!?」
「ハッ、バカが!勝負ってもんはな、始まる前から勝負がついてんだよ!そんな事も分かんねえからてめえらは脳なしなんだよ」
こんな感じに俺は中級吸血鬼以下をごっそりさらって、隊列から離脱する。
まぁもちろん負けるつもりはない。
下級、中級吸血鬼をぶっ殺すなんざ、朝飯前よ。
「愚か者が!もらった!」
剣で斬られた俺は煙のように消えていく。
勝ち急いで、前に出て来た一匹を、
「死ね」
俺は一瞬のうちに頭と心臓を二連突きして葬り去る。
それにしても骨と肉を斬る感覚は今でも気持ち悪いねえ。
仲間を殺された吸血鬼はさらに怒り狂って追いかけてくる。これで本隊は確実に上級吸血鬼と交戦出来るだろう。
しかし俺はどうしたらいいのだろう。
正直に言うと俺は一対一は得意でも一対多に対応出来る技がない。
まぁでもそれならば一匹一匹倒して行くべきだよなぁ!
俺は『限界突破』を発動する。
俺が引き連れて来た敵の数はおよそ百二十。
そして限界突破が続くのがおよそ十分、一分間に十二匹殺さなければならない。
余裕だな、五秒に一匹殺すなんて造作もない。
「よし、行くぞ!」
「この人数をどうに」
まず一匹、目にも留まらぬ速さで吸血鬼を倒す。というか魔力で剣を隠してるから本当に目には留まらないんだけど。
俺はその後も手を止める事なく延々と剣を振る。
「一体、何が起きて」
今のでちょうど百匹目。順調、順調。
久しぶりに『限界突破』を使ったけど、以前よりも格段に強く、速くなっている。
レベルもそうだが、オルクスとユリシアさんの教えの賜物だろう。
というか今思ったんだが、俺を誰も支援してこないってどういう事だよ。信用があるのか、それとも人望がないのか。
そんなどうにもならない?事を考えながらも俺は着々と敵の数を減らしていき、とうとう途中から逃げ出した最後の一匹を仕留めた。
ここまで大体八分ちょい、重畳だ。
これ以上の物を求めるとさらに大変な修業を重ねなければならなくなる。それは嫌だ、そういう事をやるのは刀香に任せる。
俺はもう満足なのだ。十分無双状態だと考えていい。
もしこれで誰かに負けるような事があっても俺は努力したりしないだろう……なんて、勝利に酔いしれてるうちに『限界突破』が切れてその場にへたり込んでしまう。
本隊の方を見ると魔法が激しく飛び交っていて、よろしくやっているのが分かった……それにしても俺ってつくづく人望ないんだな。
目を背けられないレベルの事実に気付いてしまった俺だった。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。
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