作戦開始
俺たちは集合時間になるまで会議をする事にした。
もちろん戦闘開始前に全体の作戦会議も行われるのたが、それでも吸血鬼の対処法について具体的に教わった方が楽に対処出来ると思ったからだ。
「吸血鬼の対処法は至って簡単じゃ。頭と心臓を同時に潰せば良い。この同時というのは片方が再生するまでに両方潰せれば同時じゃ。今の吸血鬼は弱っておる、昔ならまだしも今の下級から中級吸血鬼ならこれで絶命必至じゃ。上級からはかなり厄介になる、『六芒星の儀』を受けた聖騎士でなければ滅殺は困難じゃろう」
『六芒星の儀』の話をここでしておこう。
『六芒星の儀』とは簡単に説明すると体に聖なる力を宿す儀式だ。この儀式を受ければ、剣に聖なる力を宿す事も出来るようになる。
その剣で吸血鬼の体を斬りつければ、再生を防げるという寸法だ。
「じゃあ、どうすればいいんだよ?」
そのまま戦ったんじゃ、いずれこっちがやられる。
「一番手取り早いのは『石化』か『封印』じゃ。しかしこれがどちらも専門の魔法でのう。『石化』は最近滅多に見なくなった黒魔術のじゃし、今回の場合は一瞬で全身を『石化』させる事が要求される。これはオルクスでも習得しておらんかった。次に『封印』じゃが、これを使えるのは教会の大司教クラスじゃ、これも……リリー、一応聞いておくが『封印』を使えたりしないじゃろうな?」
そうか、リリーは最高位の神官だ。使えてもおかしい事はない。
「一応、使えはしますけど、無詠唱が難しい魔法なので発動までに時間がかかります。それにこの魔法は単体に対しての物ですから効率はかなり悪いです」
話が最初に戻ってしまった。一体どうしたらいいのか。『次元斬』だって連発出来る魔法ではない、つまり吸血鬼王のために温存しなくてはならない。
「皆さっきから何か忘れてませんか?私、これでも勇者ですよ?」
「でも勇者は聖騎士ではないだろ?」
「何を言ってるんですか、ハヤト。聖騎士如きに出来て、勇者に出来ないわけないでしょう?勇者は魔を断つ者です、吸血鬼も魔物ですからこの『聖剣フェアリアル』は効果抜群ですよ」
勇者が聖騎士如きとか言っちゃうのは失言だろ。
まぁそれは置いておくとして、この情報に俺たちは光明を見いだした。
というか俺たちはユリシアさんが眼中になかった。なぜならこの人が魔物と戦っているところを見た事がなかったからだ。
だから俺たちは無意識にユリシアさんを戦力から外してしまっていた。
だが、よくよく考えればレベルだってユリシアさんの方が上だし、経験も圧倒的に豊富だ。俺たちが束になってやればわけないが、この中で一番強いのは確かだろう。
「そうじゃった!ユリシア殿は勇者じゃったな!これならば行けるかも知れん」
これで懸案事項であった上級吸血鬼と吸血鬼王の再生を防げる。
「よし、目処はたった!後はギルドが立てる作戦通りに動こう!」
こうして時間が経っていき、最後の全体の作戦確認に入った。
『皆、改めて義務とはいえこの戦いに参加してくれる事、嬉しく思う。それでは早速作戦会議に移る。今回は人数が四十人と少ないが、三つのグループに分ける事にした。まずA班のリーダーはハヤトだ』
そしてゲイルさんが次々と総勢十名のメンバーを呼んでいく。
ふっ、俺か。ここは士気を上げてやるとするか。
「おいおい、俺たちの頭はハヤトかよ!」
「可愛い女の子だったら士気も上がったってのによ」
「本当だな、あー嫌だ、嫌だ」
こいつら、俺がこんな性格だから舐めてやがんな?
「うっせえ!だが、安心しろ、俺の班からは犠牲者を出さないと約束してやるよ」
『仲がいいのもいいが、しっかりやってくれよ。次のB班リーダーはハヤトの実の妹、トウカだ』
この班も総勢十名だ。
「俺たちはハヤトの班と違って勝ち組だな」
「そうだな!しかしあんな性格クズの妹がこんなに可愛い子ってのは未だに信じられないな」
「実の妹じゃねえんじゃねえの?」
「あり得るな」
あいつらも好き勝手言いやがって!
俺は後で灸を据えてやると心に誓った。
『最後のC班は今作戦の本隊だ!一番危険ではあるが、リーダーは魔王討伐の英雄ユリシアだ!』
ここでとんでもない歓声があがる。俺のときとは真逆だな。残りの二十人は全てこの班に配属される。
「この剣に誓って、私が居るからには皆さんとこの街には一切手出しさせません!」
流石勇者、耳をつんざくような大歓声がまたあがる。
『では具体的な作戦説明に入る。A班とB班は主に下級吸血鬼と中級吸血鬼を倒してもらう。C班は上級吸血鬼と吸血鬼王の相手を頼む。A班とB班もあらかた倒し終わったらC班の遊撃に向かってくれ』
この後は俺たちが共有した吸血鬼の倒し方などが説明され、十分後には作戦開始となった。
ちなみに俺の班にはエリナ、刀香の班にはミル、ユリシアさんの班にはリリーが配属された。
「ハヤト、まさかアンタがここまで登り詰めてくるとはね。驚いたよ」
「ガネットさん、俺の班でしたね。今回はよろしくお願いします」
ガネットさんはBランク冒険者だそうで、今回の戦いにも参加している。
こんな感じに知り合いの冒険者と他愛もない話をしていると時間が来た。
『皆、準備はいいな?ここにいる全員がこの街の最後の砦だ。もう一度言うが、この街の事、頼んだ。では、作戦開始!』
その掛け声とともにA班とB班が突撃する。
そしてとうとう戦いが始まった。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。
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