私の義姉さん
今回は刀香視点です。
どうやら私には新しい義姉さんが出来るらしい。
昨日私は兄さんを試したけど、まさか本当にキスするとは思わなかった。
最初は言い訳して逃れようとしていた兄さんだったが、結局キスしていた。
そのとき私の中の何かが傷付いた。
私は兄さんが好きだけど、兄さんが本当に誰かを好きになったときは譲る気でいた。
だが今回の兄さんは半分くらいしか本気ではなかった。
この間二人でデートしたときは二十歳までに彼女が出来なかったら結婚してくれるとまだ言ってくれていたのに……そんなに私が嫌なんだろうか?
自分で言うのもなんだが私は結構可愛い方だと思っている。
告白された事もあるし、男女問わず仲良くなってくれる人はたくさんいた。
それなのに何故兄さんはこの気持ちを受け止めてくれないのだろう……私はこんなにも思っているのに。
ここで一つ言っておくと私は別にリリーさんを恨んではいない。
リリーさんは多分本物の善人で兄さんの曲がった性格を変えてくれるかも知れないと思っているし、リリーさんの性格はとても好きだ。
今日はミルさんが親睦を深めるのも兼ねて私とリリーさんも含めた三人でクエストに行くと言っていた。
ユリシアさんは子どもの中に混ざるのもあれだからと辞退していた。仲間外れにしたわけではない。
リリーさんは優秀な神官らしく、回復魔法や支援魔法などの神官魔法は超一流だという。
ミルさんが言うには魔法使いの魔法とは攻撃魔法の事で回復魔法や支援魔法などの神官魔法は苦手らしい。
というわけでウチのパーティーには回復役がいなかったので私のような普通の人間にとってはありがたい話なのだ。
そんな事を考えていると出発の時間になった。
私たちは談笑しながらギルドに向かう。
私たちは兄さんを中心にした集まりだが、とても仲がいいと思っている。
理由は簡単だ、みんな性格がいいのだ。
ミルさんは気遣いが出来て、私をまとめてくれる女子の中のリーダーみたいな感じ。
エリナさんは面倒くさがりだけど、結局面倒見がいいお人好しだ。
リリーさんは前に言った通りだし、ユリシアさんは優しいお母さん的な存在だ。
……この中だともしかして一番性格が悪いのって私なのかも知れない。兄さんと私の事しか考えてない、そんな気がする。
ギルドでBランクの魔物討伐の依頼を受ける。
それにしてもリリーさんはすごい人気だ。街であった人はほとんど声を掛けてくる。流石は王女様だ。
今回の目的地は森だ。そして討伐する魔物はフォレストウルフだ。
前にウィンドウルフというのを討伐したが、それに似た種類の魔物らしい。
今回のフォレストウルフは森を使った多彩な攻めをしてくるそうで、ウィンドウルフよりも少し危険らしい。
「そういえば、ミルさんはハヤトさんが出会った経緯ってどんな感じなんですか?」
まぁリリーさんだし私たちがこの世界の人間ではないと言っても大丈夫だと思うが、一体どんな反応をするのだろう?
「うーん……私とハヤトとトウカちゃんってこの世界の人間じゃないんだよね」
「えっ!?そうなんですか!?」
「私は天使で訳あってハヤトと一緒にこの世界に来たんだよ」
「ミルさん、天使様だったんですね、驚きです。私たちと全然変わらないのに」
驚きですって言う割には驚かなすぎだと思いますけど?
「私はもうほとんど人間みたいなものだよ。ただ年を取らないだけの、それ以外は普通の人間と変わらないよ」
「そうなんですね。でもいつか私もハヤトさんや皆さんとお別れする日が来てしまうんですね。そんな日が来たらハヤトさんはどう思うんでしょう?」
「兄さんは多分泣いちゃうと思いますよ?それで百年ぐらいずっと塞ぎ込んでそうです」
「ふふ、そうですね。でもハヤトさんはすぐに立ち直ると思いますよ」
「それはまたどうしてですか?」
「はっきりとはまだ分からないですけど、なんだがハヤトさんからは強い意志を感じます。それがどんな意思かは分かりませんけど、何故だかすぐに立ち直ると思うんです」
その意思って多分一生遊んで過ごしたいとかそういう類のものだと思います。
「リリーもそう思う?私も感じるよ、そういうの。トウカちゃんは何か感じない?」
「……私も感じますけど、多分ダメな方向性の意思ですよ?」
「そうかな?まぁハヤトにはそういうところがあるけど、それでも私たちの事を大切にしよう思ってくれてると思うけどなぁ」
「あっ、ミルさん、トウカさん、無駄話もしてられないみたいですよ?」
言われて前を見ると森に近付いていた。
このぐらいになるともうミルさんの探知範囲に入る。
「リリー、ちょっと待ってね。今、森の中を探知して魔物の位置を掴むから」
ミルさんは風属性の魔法の応用で広大な森半分までを探知出来る探知魔法を使う。
「森に入ってすぐのところに対象のフォレストウルフがいるみたい。数は……十、これでもう討伐数に届くね」
私は刀を抜き、前に立つ。
「前衛は私がやります。お二人は後衛を頼みます」
普通は兄さんのような剣士が前衛をやるのだが、今日は兄さんがいないので私が代わりだ。
私がそう言った瞬間、力が体の底から湧いてきた。
「今、強化魔法と恐怖を薄れさせる魔法をかけました。私はあまり攻撃出来ませんから皆さんよろしくお願いします」
それにしても強化魔法はすごいものだ。身体中から力が湧いてくる。
私たちが森に入って少しするとフォレストウルフに会敵した。
私たちは順調に一体、二体と倒していく。
やはり私たちは十分強くなっている。前はウィンドウルフにあれほど苦戦していたのに。
そんな油断が仇となったのだろう。
「トウカちゃん、後ろ!」
しまった、油断して身代わりを出すのを忘れていた。
「『光の壁』よ」
リリーさんの声が聞こえると同時に私とフォレストウルフの間に透明な壁が出来る。
そして壁に弾かれたフォレストウルフをリリーさんが剣で斬る……って剣!?
「私だってアストレアス家の娘です。剣術ぐらいそれなりに出来ますよ。この剣は仕込み杖のものです」
リリーさんはそう言いながらもう一匹倒す。
今はリリーさんの事を気にしている場合ではなかった。
私たちは続けて魔物を狩っていった。
「ふぅ……終わりましたね」
「そうですね。リリーさん、さっきは助かりました。でもまさかリリーさんが剣術を使えるとは思いませんでしたよ」
「ごめんなさい。予め言っておけば良かったですね。使う事になるとは思わなかったので」
「す、すいません」
「違います、違います!そういう意味で言ったわけじゃないんです。それに私の大事な義妹になる方なんだから義姉として守るのは当然です。お気になさらないでください」
ああ、やっぱり私が思った通りの人だ。
「……はい、ありがとうございました……義姉さん」
義姉さんという言葉は自然に出てきた。
「嬉しいです!これからはそう呼んでください、トウカさん!」
抱き締めてくるリリーさん……これ、すごく落ち着く。兄さんもこんな気持ちだったんでしょうか?
「……流石にそれは難しいです」
「えぇ〜」
か、可愛すぎる!!
「二人が仲良くなってくれて良かったよ。しばらくこの三人で行動する事も増えると思うから仲良くしようね!」
「「はい、ミルさん!」」
なんだか、私は上手くやって行けそうな気がしていた。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。
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