問題ありの入居者
ギルドで式が行われてからさらに三日経った。
ここまでの生活で俺はリリーがどういう人間か分かった。
この前リリーが料理を振る舞いたいと言い出したので昼ご飯を作ってもらった。
見た目はすごく美味しそうで流石王女様だな、と皆が思っただろう。そして皆一斉に一口食べた瞬間、リリーを抜いた全員が気絶した。
しかもリリーの太刀が悪いところは自分の殺人料理を当たり前のように食べる事だ。そのくせして普通の料理も美味しく食べる。
ここまでならまだいい。料理を今後リリーにさせなければいいだけの事だからな。
だがこれよりももっとヤバい事があるのだ。
リリーはどうやらびっくりすると魔力が暴走するようで最高位の浄化魔法を屋敷全体に使った事があった。
その結果俺とエリナが死にかけた。特に純粋な吸血鬼であるエリナは重症だった。まぁすぐに再生するのだが。
このようにリリーの両親が何故大事な娘をこうも簡単に外に出したかが分かった。要するに家に置いとくと何をしでかすか分からなかったのだ。
「というわけで話し合いを始めよう」
「というわけってどういうわけ?」
ミル、お前分かってるだろ?
「じゃあ単刀直入に聞く、リリーがここに住むのは賛成か反対か」
この結果によってリリーが傷付いたらどうしようかな?
「私は前にも言ったように賛成ですよ。リリーちゃんは一生懸命でハヤトの事を一途に思ってくれていますからね」
とりあえず賛成に一票。
「わしは反対じゃ。理由は……色々じゃ」
こいつは生活している内にボロが出て結局元の口調に戻った。
リリーは敬語を使わないぐらいでいちいち何か言う性格でもないのに面倒くさい事をするよな。
「私は歓迎するよ。リリーは一生懸命で私たちの信頼を得ようとしていたからね」
ミルは意見が変わったな。
敬語を使わなくなったところを見るとかなり心を開いてくれたと見ていいだろう。
「申し訳ないですけど、私は反対です。理由はリリーさんの方ではなくて兄さんの方にあります。私は兄さんがリリーさんを本当に愛していると信じられません」
長年一緒にいるだけあって中々鋭い。
「だから私は考えました。妹にキスできる兄さんなら愛してる人とはもちろんキス出来ますよね?もしキスが出来きないなら妹の方を愛してるという事になりますからね?」
俺の退路を塞ぎながら自分に話が有利になるようにも差し向けて来た!中々やるじゃないか。
「俺が良くてもリリーが無理だろ?」
「いえ、私は大丈夫ですよ?さぁ、どうぞ」
そう言って目を閉じるリリー。俺が思った以上にリリーは本気だ!
俺はゆっくりとリリーに顔を近づける。
これ、すっげえ恥ずかしい!
しかしここをやり過ごさなければ明日からシスコンの汚名を被って生きていかなければならない。
この優しいリリーから冷たい目で見られたら軽く死ねる(死ねないけど)。
俺は覚悟を決めて、キスをした。
「流石私の息子です!」
これ超恥ずい!多分顔が真っ赤になっている。
「と、刀香これでいいだろう……ま、まぁ色々あったが……リリー、お前にエリナを代弁して言わせてもらう」
ごめんな、リリー。これは家で全ての人が円滑に生活出来るようにするためなんだ。
「一つ目、お前は料理がとても下手で、人を殺しかけるレベルだ。だから二度と一人で台所に立たない事。二つ目、びっくりしたときに魔法を暴発させない事。特に神官魔法は俺とエリナが浄化されるからやめろ」
リリーのうっとりとしていた顔がキョトンとした顔に変わり、俺の方を見てくる。現実が理解できていないようだ。
「じゃあ皆さんが食事のときに倒れたのは……!?」
そんなに察しは悪くないらしい。
「……というかハヤトさんは魔物だったんですか!?」
「言ってなかったっけ?俺は半分吸血鬼なんだ」
もしかして流石に魔物は無理!って断られるヤツか!?
「……そうだったんですか。ハヤトさんは秘密にする気はなかったんでしょうけど、こういう事はなるべく言ってくださいね」
やっぱりさっきまでのはなしでってヤツか。ヤバい泣きそう。
「じゃないと……ちょっと寂しいです」
あっ泣くわ。
「ありがとな。ここには気にする奴はいないけどリリーはどうなのか分からなかったから……少し、心配で……」
リリーは俺をそっと抱きしめてくれた。
「気にするわけないじゃないですか。見くびらないでください」
最近涙もろいなぁ。泣いてばっかだ。
「なんかいい感じに終わったみたいな感じになってますけど、そういうのは二人だけのときにしてください」
「そうじゃな。鬱陶しいからな」
エリナと刀香の辛辣な意見。
確かに俺が目の前でやられたら舌打ちしてたかもな。
「もう、お二人とも!ハヤトさんが可哀想じゃないですか」
そうだそうだ、もっと言ってやれ。
「……兄さん、もう泣き止んでるんでしょう?」
「チッ!」
「あっ、今此奴舌打ちしたぞ!なんて男じゃ!」
「お前らが邪魔するからいけないんだろうが!大体エリナ、お前は俺の自称配下なんだからここは空気読めよ!」
「何故わしがキレられなければならんのじゃ!?ええい、トウカやってしまえ!少し刺したぐらいでは死なないから大丈夫じゃ!」
「……おい、待て!お前本気でやる気かよ!?やめ、ろ……」
こいつガチでやりやがった!
いってぇぇぇ!!再生はしても痛いものは痛いんだからな!?
「……お、お前、実の兄を刺すとか正気かよ!?マジで痛えんだからな!?」
クッソぉぉぉ……俺、お前に悪い事したか?
そんな事を考えているともう傷が治ってきた。
しかしここで思わぬ攻撃が加わった。
「大丈夫です、ハヤトさん、今治しますね!『ハイヒール』!」
「痛い、痛い!リリー、吸血鬼に回復魔法は毒だ!」
「そ、そうでした!す、すいません、ハヤトさん大丈夫ですか!?」
流石神官の回復魔法。再生が遅くなっている。
「ふぅ……話を戻すがエリナ、刀香、そういう事だからリリーがこの家に住む事を認めてやってくれ」
「私も認めていただけないと困ります。私、お父様からここに帰ってくるときは本当に困ったときだけにしなさいって言われてるんです。なんでもアストレアス家にはこのぐらいの年になると外に出して修業させるという習慣があるそうで、今回はそれを兼ねての物だと言われました。だからどうか認めていただけませんでしょうか?」
ここにいる全員が思っただろう。お父さん、実の娘にそんな嘘つくなよ、と。
そこまでして家に帰って来て欲しくないか。
まぁリリーもリリーで抜けている、自分の兄と姉は出て行ったない事に気付くべきだからな。
「そ、そこまで言われると住ませないわけにはいかんな。第一わしには意見を言う権利がないしのう」
リリーに憐みの視線を向けた後、俺の方を憎そうに睨んでくるエリナ。
お前が最初に配下になるとか言ったんじゃん。
「私は兄さんとの約束ですから構いません」
紆余曲折あったが、これでこの家の全員の了承を得た!
「ここにいる皆を代表して改めて歓迎する。リリー、これから楽しくやっていこうな!」
「はい、ハヤトさん!改めて皆さんよろしくお願いします!」
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。
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