俺の春が来た
急な来客だったが、客が客なので全員集合した。
「え、えーと、今回はどのような御用向きで?」
確かに以前また来てくれ、と言ったが本当に来てくれるとは思わなかったぞ?
「そ、その……ってあれ?ユリシア姉様!何故いらっしゃるのですか!?」
「ね、姉様!?ユリシアさん、アストレアスの王女様だったんですか!?」
いや、でもそれはおかしい。アレス王は勇者パーティーの一員だからありえないぞ?
「違いますよ、ハヤト。アレスさんと私は親交がありますから、その関係でリリーちゃんとは顔見知りなんです。それでこの子が私を姉様と呼んでくれたんですよ」
確かにおばさんと言うには若すぎるからな。
「そんな事より姉様、私の質問に答えてください!もしかして姉様もハヤトさんの事が……!?」
この人、何言ってるんだ?
「……?ハヤトは私の子ですよ?」
この人もややこしくなる事を!何か皆が訝しげな目を向けてくるんだが!
「そ、そんな……それじゃあハヤトさんは私の甥っ子……?」
「ちょっと待ってくださいって!何か勘違いなさっているようですけど、俺はユリシアさんの養子みたいなものですよ?直接の血縁ではありません」
あー、話が大きく逸れた。
「話を戻しますけど、どうして姫様はここにいらしたんですか?」
「それは、ですね……私……ハヤトさんが好きです!婚約してください!」
「「「「……は!?」」」」
脈絡がなさ過ぎる!というかマジなのか?
それとユリシアさん、あんたはもっと驚け!
「ひ、姫様、何かの間違いではないんですか?」
「まずはそれです、姫様というのをやめてください!私、言ったじゃないですか!リリーと呼んでくださいって!あと敬語もやめてください!」
この人、さっきのでかなり混乱してる。
「じゃ、じゃあリリー、俺とはそんなに接点ないのに何でそうなる?」
「話せば長くなるのですが……」
これかよ、長い話!
「私、ハヤトさんがお見舞いに来てくれたとき、とても嬉しかったんです。そしてハヤトさんが帰ってしまうのがとても寂しかった。それでお父様とお母様に聞いたのです!何故私はこんなにも嬉しくなったり、寂しくなったりするのかと。そうしたらお母様が答えてくださったのです、それは恋だと!そして私は気付きました、私を王子様のように助けてくださったハヤトさんが好きだと!大丈夫です、三ヶ月もかかってしまったのは公務を全て兄様と姉様に押し付けて来たからです。お父様とお母様には好きにしなさい、と許可ももらいました!ハヤトさんの気持ちさえ良ければいつでも婚約出来ます!」
確か、アレス王って勇者パーティーの回復役と結婚してたよな?
誰だか知らないけどあんた何言ってくれてんだよ!
まぁ結果オーライですけど!
そういえば以前、刀香に二十歳までに誰とも付き合えなかったら結婚するって言っちゃったからな。
ここらで芽を摘んでおこう。
それにこんな美少女と婚約できるのだ、俺はもう人生勝ち組決定だな。
「わかった。俺もお前に命を救ってもらったときからお前の事が忘れられなかった。俺もリリーが好きだ、婚約しよう!」
「ハヤトさんも!?……それじゃあ、私たち両想いですね……」
あれ?これもしかして本当にとんとん拍子に進んじゃうんじゃないの?
「あ、それともう一つ。皆さんには私を助けていただいた御恩があるので一週間以内に王都から騎士が来ます。そして皆さんにはわずかばかりではありますが、白金貨十枚が贈呈されます。お父様は『王女救出の旨、大儀であった。娘はそちらに同居したいと言うので、養育費の足しにして欲しい』と言ってました。今言ったように私も今日からここに住まわせていただきますので、皆さん、何卒よろしくお願いします!」
白金貨十枚か、マジに遊んで暮らせるな。
「ちょ、ちょっと待ってください、姫様!ほ、本当にハヤトでいいんですか!?」
ミル、お前そういう事言っちゃう?
「王女殿下、私もミルと同意見でございます」
はい、そこエリナ。猫被らない。
「兄さんは本気なのですか?」
「え!?あなた、ハヤトさんの妹君なんですか!?」
話がまた拗れるぅぅぅ!
「はい、そうです。ですから私は兄の真意を確かめねばなりません!」
そうでしたね、本気じゃなきゃ結婚させてくれないんでしたね。
でも俺、割りかし本気なんだよなぁ。
姫様……じゃなかった、リリーには命を救ってもらったし、その後に俺が逆に助けるっていうのは運命的なものも感じるしな。
「刀香、俺は本気だぞ?この際、皆にも言っておくが、俺はリリーに恩がある。それが今回の決断に何の影響もないかと言われればそんな事もないが、その事を抜きにしても俺はリリーの性格が好きだし、守れるものなら守ってやりたいとも思っている」
どうよ、俺の名演技。まぁ半分は演技じゃないけど。
意外な程に俺はリリーに惹かれていた事を認めざるを得ない。
「まぁでも私はハヤトに賛成です。それでも皆さんにも思うところがあるでしょうから、まずは一週間お試し期間としませんか?リリーちゃん、ちょうど私たちも一週間自由に過ごす予定だったんです。だからこの間にハヤトと一緒に住んでみて、それから色々考えてみませんか?」
おお!流石ユリシアさん、話を上手く纏めてくれた!
「ユリシア姉様の言う通りですね!では皆さんとりあえず、一週間よろしくお願いしますね!」
このまま何の問題もなく婚約出来るといいんだが。
そんな事を考えながら一日を終えた。
その後三日間は何事もなく時間が過ぎていった。
そして四日目に騎士団が街に到着した。
ギルドで感謝状が読み上げられるそうで、俺たちもギルドに向かう事になった。
「おお、結構人が集まってるな」
ギルドの中は昼間だというのに酒場の席が埋まっていた。冒険者もいるが、一般人もかなり多い。
「騎士団が街に来たのが珍しいんですよ。しかも今回街に来たのは我が国が誇る近衛騎士団の次に強い第一騎士団ですからね、民衆も盛り上がるわけです」
流石リリー。自分の兵隊には詳しいな。しかしここまで人が集まるとは思わなかった。
なんだか恥ずかしい。
「これは姫様!いらしていたのですね……では、もしかしてこちらが私たちが助けていただいたハヤトさんですか?」
「ええ、そうですよ。あなたもお礼を言っておきなさい」
「もちろんです。ハヤトさん、私の事を覚えておいでですか?私は第一副騎士団長のルイス・アイゼナッハと申します!先日は助けていただきありがとうございました。ご挨拶に伺うのが遅くなって申し訳ございません。いずれ伺うつもりでしたが、この様な形になってしまいました……」
この人は執事の人と一緒にいた人だ。
それにアイゼナッハって事はオルクスの子孫にあたる人か。
「いえいえ、気にしないでください。俺はハヤトって言います。よろしくお願いします、ルイスさん!」
……ってしまった!いきなり貴族相手に名前呼びしてしまった!
「そう言っていただけると助かります!こちらこそよろしくお願いします、ハヤトさん!もう少しで式が始まりますのでお待ちください。では、姫様もまた」
それなら程なくして式が始まった。
「『感謝状、ハヤト御一行殿。貴公らは我が国の姫であるリリーシャ姫を救出し、『五素の悪魔』を拘束した。この功績を称え、貴公らには白金貨十枚が贈呈される。また、この功績は貴公らがSランク冒険者になる条件として相応しいものである。よってハヤト殿、ミル殿、エリナ・ブラッド殿は一定以上のクエストを完了する事により、Sランク冒険者に昇格出来るよう冒険者ギルドに追って通達を出す』、以上です。我が国へのご協力感謝します」
感謝状なんかはっきり言ってどうでもいいが、白金貨が入った袋がとても重い。
帰りに銀行に入れよう。
俺はそんな事を考えながら一礼するとギルド内が一気に盛り上がる。
こうして式は無事に終了し、俺たちは銀行で刀香とリリーの講座を作り、白金貨十枚を預けて帰った。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。
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