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これは死ぬ

 貨幣の価値を変える事に致しました。

 銀貨百枚で金貨一枚から銀貨千枚で金貨一枚に変更です。

 ご承知な程、よろしくお願いします。

 次の朝


 朝ご飯を食べ終えるとオルクスが今日は全員で修業だと言い出した。

 別に俺はもともと修業の日だったので何の問題もない。


「じゃあ、修業を始めようと思うんだけど、今日はというか今日から僕の知り合いにも先生をやったもらう事にしました」


「で、その人はいつ来るんだよ?」


「もう、ここにいますよ」


 そう声が聞こえた瞬間、オルクスの隣に人が現れた。


「な、なんだ!?」


「皆さん、こんにちは。先代勇者のユリシアです」


 せ、先代勇者だと!?俺は勇者は男とどこかで決めつけていたが、女性もあり得るよな。

 それにしてもすごい美人だ。茶髪でなんか大人の色気がある。


「それで師匠、私はどの子を鍛えればいいんですか?」


「その真ん中の男の子だよ」


「ふーん……分かりました。じゃあ師匠、早速『部屋』を貸していただけますか?」


「え?あれ使うの?別に急いでるわけじゃないし、使わなくてもいいと思うけど」


「私は別に最初から本気ででやるつもりはないですよ?でも時間は有効に活用しないと」


「さっきから話してますけど、何を使うんですか?」


「ん?師匠言ってなかったんですか?えーとですね、この世界で一日進む間に一ヶ月進む空間を師匠に作ってもらって、そこで修業するんです」


 おいおい、何でもありだな大賢者!


「……分かったよ。そんなに言うならいってらっしゃい」


 オルクスがそう言った瞬間に俺は一面真っ白な空間に飛ばされた。


「なんだ、師匠だってその気だったんじゃないですか……まだ君の自己紹介聞いてませんでしたね」


「ああ、ハヤトです。これからよろしくお願いします」


「うん、よろしくね。早速だけどカード見せてもらっていいですか?」


 俺は頷いて、ユリシアさんにカードを渡す。


「……ん?この人間もどきっていう種族は何ですか?」


「それは半分吸血鬼になりかけていて、体とスキルだけ吸血鬼の状態になっているみたいです」


「へぇ、それって意外に便利な体ですね。それで人間の特性まで使えるんだから」


 そう言いながらカードを返してくれるユリシアさん。


「まぁそうですね。不便は今のところないですよ。それよりユリシアさんはオルクスとどういう関係何ですか?」


 師匠って言うくらいだから教えを受けていたんだろうけど。


「師匠は私たち勇者パーティーの指導者なんです。私たちは皆、師匠に鍛えてもらっていたんですよ。師匠はほとんど素人の私たちを三ヶ月で完全に鍛え上げる、正真正銘のバケモノです。だって少なくとも私はあの頃からあまり技術的な部分では変わってないんですから。私からも君に最後の質問をさせてもらうますね……君が強くなりたい理由を教えていただけませんか?」


 強くなりたい理由か。考えた事なかったな。

 オルクスが剣術を教えてくれるって言うから手っ取り早く強くなって、金を稼ごうと思っていたけど、今となっちゃオルクスのレアアイテムを売って暮らせば多分、金は手に入る。

 あれ?何で俺は修業してるんだ?


「……答えが出ないか。それはまぁいいです、私たちが世界を平和にした証拠ですから。だけど、そんな心意気で師匠の教えを乞おうとは思わない方がいいと思いますよ?死ぬほどきつい修業ですから」


「まぁでも理由ならありますよ。俺は楽しく生きたいんですよ、そのためにはある程度の強さは必要でしょ?それに冒険者で豪遊して暮らすならもっと強くなる必要がある……あとは……そうですね、あいつらには絶対に苦労させたくないってところですかね?」


「……そうですね、確かに楽しく生きるには強くあらなくちゃいけませんね。じゃあその理由がどこまでのものか見せてもらうとします!」


 抜いてくるとは思っていたが、結構いきなりだな。それにこの人は俺のステータスやスキルを知っている。

 これは大きな痛手だ。この人、何気に卑怯だな。


「ほらほら!守ってるばかりじゃいつまで経っても勝てませんよッ!」


 しかし、流石勇者だ。剣速は刀香と同じぐらいだし、ステータスのお陰か力強い。

 特性で見切って受け流すのが精一杯だ。

 このままだと本当に防戦一方でいつかは崩される。

 それなら一か八か『限界突破』を使って、逆転を狙うか?あれはカードにも書かれていないしな。

 どちらにしても俺は一旦距離を取る。


「甘いッ!」


 そう言ってユリシアさんは『ファイアーボール』を撃ってくる。

 だが、これは好都合だ。着弾音がした瞬間に『限界突破』をすれば声でバレる事はない。

 『ファイアーボール』が凄まじい音を立てて、俺の剣に命中する。

 その瞬間俺は『限界突破』を発動する。


「『限界突破』!」


 出来た!

 さらに俺はこれも出来るかどうかは分からないが『明鏡止水の境地』を使う。

 俺は爆発の煙に紛れて高速移動をして、ユリシアさんに肉薄する。

 ユリシアさんは気付くのが遅れたようだが、もう遅い!

 そして俺の一閃はユリシアさんに命中した……はずだった。

 俺の剣はユリシアさんの体に当たったが、ユリシアさんの体は煙のようになくなっていく。


「今のは危なかったです。やる気あるじゃないですか!」


 しまった、後ろを取られた!

 だが、この位置なら剣で受けられる。最悪、腕で受ける!

 よし、剣で受け切った!


「さっきの技は何ですか?」


 俺はユリシアさんと斬り結びながら話す。


「あれは気の操作ですよ。君もやっていたでしょう?」


「気って気配とか存在感の事ですか?」


「そうです。上手く使えば、さっきみたいに残像を作る事も出来ますよ」


 じゃあ刀香の技も出来るようになるって事か。

 しばらく剣戟を繰り広げていると、俺の『限界突破』が切れてくる。

 すると身体中が痛くなり始めて、疲労でぶっ倒れそうになる。


「いいですよ、無理しなくても。『限界突破』使った後ってキツいですよね」


「気付いてたんですか」


「一旦休憩にしましょう。でもまさか一代の間に勇者が二人いるとは驚きです」


「俺は勇者じゃないですよ。俺には勇者が使えるスキルはないんです。その証拠に俺の特性は『剣士のセンス』でしょ?」


 勇者になった人間は特性に『勇者』と表記されるのだ。だから俺は勇者というわけじゃない。

 これはオルクスも言っていたので信憑性はかなり高い。


「そういえば、そうですね。じゃあ何でハヤト君は『限界突破』が使えるんですか?」


「まぁ色々な事情があるんですよ。それより、俺はオルクスの修業を受ける資格はありますか?」


「ええ、もちろんです。だってほら、私の服が破れてる。生半可な力では私に刃を届かせる事は出来ませんよ。ハヤト君はレベル差を覆したんですよ?……それに、私なんだか楽しくなっちゃいました。突然ですけど、私としばらくここで修業しましょう!」


 面倒くさい事になったぞ。

 まぁでもオルクスに教わるよりは、美人のお姉さんに教えてもらった方がやる気も出るというもの


「その前に俺の妹も呼んでくれませんか?俺の隣にいた黒髪の奴、あいつも剣術専門なんですよ」


「分かりました。では一回出ましょうか。師匠〜!」


 ユリシアさんがオルクスを呼んだ瞬間に俺たちは元の世界に戻された。


「ユリシア、ハヤトはどうだった?」


「才能溢れる人材ですね。真面目に剣術を学べば、剣だけなら私以上は確実ですよ」


 まぁそりゃそうだわな。

 そもそもステータスの限界が人間の二倍なんだからな。


「そうかい、君もそう思うか!ハヤトの吸血鬼と人間の良いところを合わせ持った点は素晴らしいものだ。剣術では僕を軽々上回るだろうと思っていたが、君までもとなると、本物だ!」


「それじゃあ、ハヤト君と妹ちゃんは私と一緒に行きましょう!それじゃあ、師匠またお願いしますね」


「是非ともハヤトと刀香ちゃんを強くしてやってくれよ、ユリシア」


「もちろんです!ここに次帰ってくるときは見違えると思いますよ?」


 そうユリシアさんが言うと転移が始まる。


「よし、着きましたね。じゃあとりあえずハヤト君は私がいいと言うまで走ってくださいね。まずは体力作りです。レベルが上がって、ステータスが上がるのは生物としての位階が上がったと思ってください。つまりは自分で鍛えれば鍛えただけ、レベルとは別に体力などは鍛えられるという事です。幸いハヤト君は吸血鬼なので、高速再生で体が筋肉痛になる事はありません。だから私からこの疲れないお薬を渡します。師匠からもらったお薬で効果は一日続きます、これを飲んで走ればハヤト君は実質永遠に走り続ける事が出来ます。頑張ってくださいね!」


 この人、鬼だ!俺を殺す気か!?

 こんなの気が狂っちまう!


「流石にそれだけ走らされたらおかしくなっちゃいませんか?」


「う〜ん……そうですね……じゃあ、修業が全て終わったらいい事をしてあげます!」


 いい事とな?


「いい事って何ですか?」


「今はナイショです。修業が終わってからのお楽しみという事でお願いします」


 何してくれんだろうな?……なんかやる気が湧いてきたわ。


「……ユリシアさん、でしたよね?私は何をすればいいんですか?」


「刀香ちゃんはしっかりと体力がついているようですから、少しだけ走ってそれから私と修業しましょう」


「……はい、よろしくお願いします」


 あ、こいつ隙あらばユリシアさんの首を取ろうとしてるな?まぁ無理だろうな。ユリシアさんめちゃくちゃ強いし。

 俺と戦ったときだって全く勇者の力を使ってなかったからな。


「じゃあハヤト君は始めてくださいね」


 俺はユリシアさんの合図とともに薬を飲んで、走り出す。



「……くん!……ハヤト君!」


「はっ!……俺は……」


 あ、そうだ。

 途中から走るのがつまらなくなって、それならいっその事、何も考えないで走ったら勝手に時間が過ぎるんじゃね?と思って意識を遮断したんだった。


「ハヤト君、良く頑張りましたね!君は十日間ずっと走り続けていました、立派ですよ!」


「ハ、ハハハ、そうですか……」


 これはアカン。いつか絶対に死ぬ。主に精神が。

 水は本能的に飲んでいたみたいだが、食事はしなかったようなので、超ストイックなダイエットをしたみたいに俺は痩せていた。


「刀香はどうしました?」


「刀香ちゃんは五日目に一旦帰りましたよ。私たちも帰りましょうか」


 それから俺たちは以前と同じ方法で帰還した。


「お帰り。すっかりもやしっ子じゃなくなったね、ハヤト。前の十倍は体力があるね」


「あの体力作りは私もやりましたけど、ハヤト君は本当に上手かったですよ」


「あれに上手いもクソもあるんですか?」


「ありますよ!私は師匠に回復魔法で筋肉痛を治してもらいながら、三日しか続かないかったんですよ?ハヤト君はまるで悟りを開いたかのように心が乱れていませんでした。それにハヤト君は気付いていないと思いますが、君は気を操って腹を満たしたように体を騙していたようですよ?まだまだ甘いところもありましたが、教えを受けないであそこまで出来るのはすごいですよ!」


 別にそんなつもりはなかったが、俺にそんな才能があったとは。


「まぁでも、ハヤト。今はたくさん食べた方がいいよ。十日間ぶっ通しで走るなんて常軌を逸している。ユリシアももう少し早く止めてあげるようにしなさい」


 家では刀香が料理を用意してくれていて、俺は腹が破裂しそうになるまで食べ続けた。


「ハヤト君は今日と明日ゆっくり休んでください。私も少し無理をさせ過ぎたと反省しています。ごめんなさい。でも私は君の限界を見たかったんです。どうか許してください」


「いえいえ、そんな頭をあげてくださいよ!お陰で今の体力はユリシアさん並みになっているんでしょう?それならやった甲斐もありました」


「そう言ってくれると私もありがたいです。頑張って強くなりましょうね!」


 結局ユリシアさんが来た事で変わった事と言えば、『修業部屋』が使えるようになった事とユリシアさんが家に住み始めた事だろう。

 しかし一番変わった事は俺の楽だと思っていた修業は終わりを告げた事だろう。

 地獄の日々の始まりだ。

 この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。


 趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。

 御意見、御感想、御評価を頂ければ幸いです。


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