物件巡り
まずは一件目、大商人が不況により売り払った別荘、二階建てで元の価格は金貨百枚。街の中心部にあり。
内装はほとんど良く12LDKだが、持ち主だった商人が浴槽に浸かるタイプではなかったらしく浴槽がない。
風呂付きの日本人である俺にとっては大きなマイナス点だ。
よってここはダメ。
次は二件目、隣のレガリア帝国の貴族の別荘として使われていたらしいが、かなりの汚職が発覚、お取り潰しになった。
地上二階、地下一階建てで元の価格は金貨九十五枚。街の郊外にあり。
ここの内装は完璧で9LDK。周りも人がほとんどいない静かな立地。
しかし、何故だか分からないが地下室に取り外し不可能な風呂を覗ける魔法の空間歪曲鏡があったらしく女性陣から大ブーイング。
鋭い目で睨まれるが俺は知らなかった。
知らないものは知らないのだ。本当だよ?
しかしまぁ汚職するだけはあるオヤジである事はここからでも想像に難くない。
よってここも没。
最後の三件目、隣のメルシャ神聖国の大貴族の別荘だったが、アストレアス王国の建国を機に手放したらしい。二階建てで元の価格は百五枚。ここも街の郊外にあり。
大貴族というだけあって装飾もいいし、もちろん内装は完璧の10LDKだ。見た所、二件目のような残念な部分もなく、俺はここでいいんじゃないかなと思ったが女性陣がまださっきのような事がないかと部屋をあら探ししまくっている。
ここの元の持ち主は女主人だったためそんな事はないと思う。
それに他とは群を抜いて優れている箇所がある。
それは魔力炉の燃費が圧倒的に他よりもいいという点だった。
魔力炉というのは大なり小なりどんな家にでもあるものなんだが、ここのは本当にすごい。
俺のような普通の人間が一日の魔力を空っぽにすれば光源などのエネルギーが一週間も持つという。これは普通の家の魔力炉の数十倍の変換効率だ。水もこの魔力炉で生成可能だ。
あら探しの結果何もない事を確認してもらえたため購入するのは三件目で決定した。全てとても良い物件だったが小さな差で優劣がついてしまった。そう小さな差だ、気にすることはない。
「わしのような貴族が住むにはちと小さすぎる気もするが立派な家じゃな」
こいつ会ったときは『もう貴族じゃないようなもんじゃ』とか言ってたくせに姫様に気付いてもらえたからって調子に乗りやがった。
「こんな大きな家を買うのはいいけどさ、これってフラグにならない?」
フラグとはまた妙な事を言う。
「フラグだぁ?一体なんのフラグになるっていうんだ?」
「新しい同居人が増えるフラグだよ!私は別に構わないけど……」
俺は思わず大笑いしてしまった。
「何言ってんだよ。天界にゲームがあるのか知らないが現実と混同するなよ?そういうのが更に酷くなると中二病になるんだぞ?」
まったく何を考えているんだか。これは現実なんだからそんな事あるわけないのに。
「いやいや、フラグっていうのは本当にあるんだよ?それをお互いに立てたり、折ったりしながら過ごしているのが人間でしょ?ゲームと現実の違いはそれが分かりやすいか分かりにくいかの問題だよ。天界から人間界を覗いているとそんな事ばっかりだよ?」
まぁ確かにそういう言い方をされれば納得できない事もないが、じゃあ俺にそういう事があったかと聞かれれば全くないと答えざるをおえない。
俺の中での結論としてはやっぱりフラグなんてないのだ。というかない方が結末が分かりにくくて楽しいだろう。
「わかった、わかりました。じゃあそうなるとあの家には誰が住みつきそうなんだ?」
「それは分からないけど……ゲイルさんとかアルフレッドさんとかかな?」
何考えてんのか全く分からん。実はミルって頭悪いんじゃないか?
「お前いいセンスしてるよ。じゃあそうだな。賭けをしよう、最初にここに住みついたのがゲイルさんかアルフレッドさんだったらお前の勝ち、それ以外だったら引き分け、誰も住みつかなかったら俺の勝ちだ。勝った方は負けた方になんでもひとつだけ命令できる」
「いいね、それ!でもいいの?天使の予言は当たっちゃうよ?」
こいつ本当に言ってんのか?
これで当たったらこれこそどうかしてる。天地がひっくり返ったってそんな事にはなりやしない。だってゲイルさんとアルフレッドさんだぜ?あり得ないな。
そんなくだらない会話をしていると不動産屋に着いた。
「おっさんー、戻ったぞ……って!うお!?」
そこにはおっさんが土下座していた。
「あんちゃん様、どうかお願いでございます。一律金貨八十枚というのはやめて、金貨二十枚引きというのはダメでしょうか?ぞうじないど……死んでじばいまずぅぅぅぅ!!」
み、惨めだ!いい年こいたおっさんが泣いて土下座している!
それにあんちゃん様ってなんだよ。
そ、そんなに経営厳しいのかな?
「わかった、わかったっておっさん!金貨十五枚引きでいいよ!頼むから早く起き上がって涙を拭いてくれ」
一応譲歩したが俺にも譲れないものがあるのだ。
しかし本当な酷い。あの慈悲深いミルが若干引いている。
一刻も早くここから逃げたかった俺たちはおっさんを起こし、手早く手続きを済ませて帰った。
お役所への申請とかは全ておっさんの方でやってくれるという事なのでそこはありがたかった。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。
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