マッチポンプなお見舞い
ここでギルドについて話しておこう。
そもそもギルドと言うのは各々の職業を円滑に進めるための組織だ。ハローワークに色々詰め込んだ感じと言っていい。
そういう意味では銀行ギルドは少し機能が違う。ミルが言うには銀行ギルドは銀行の機能を持っていて、銀行ギルド以外には銀行の機能を持つ機関は存在しないらしい。
俺たちが日頃ギルドギルド言ってるのは冒険者ギルドのことだ。他にもたくさんのギルドがあるらしいのだが、俺は冒険者ギルドにしか行った事がない。
エドナは大きめの街なので商人ギルドや建築関係のギルドなど数多くのギルドがある。
冒険者ギルドは役所のある街になら必ず存在する。魔物などの外敵から街を守るためだ。
こんな感じでギルドは個人や業者などの橋渡し役になっているというわけだ。
「ここが銀行ギルドだよ」
外観は冒険者ギルドと同じようなものだ。
「それじゃあ、入るよ?」
中に入るとそこは俺が思い浮かべた通りの様子だった。違うところといえばATMがないところぐらいのものだ。
「いらっしゃいませ……失礼ながらハヤトさんではございませんか?」
びっくりした!なんで名前知ってるんだろう?
「ええ、そうですが、どうして俺の名前を?」
「冒険者ギルドマスターのゲイルさんからお話を聞いております。こちらへどうぞ」
あのおっさんが話を通してくれていたんだな。腐ってもギルドマスターだな。よく頭が回るようだ。
銀行ギルドの応接室は冒険者ギルドと違って少し高級感があった。
「申し遅れました。わたくしここのギルドマスターをさせて頂いているアルフレッドと申します。どうぞよろしくお願いします」
すごく丁寧な人だな。ゲイルさんとは大違いだ。ギルドマスターといっても色々いるな。
「こちらこそよろしくお願いします」
「では早速話に移っていきましょう。今回はお金のお預かりということでよろしいですね?」
「はい、金貨を百枚ほど預けたいと思います」
残りの十枚は自分で持っておく事にした。
「かしこまりました。では会員登録に移らせて頂きます」
冒険者ギルドみたいにステータスを登録する必要はないよな?
俺のカードはあんなんだから見せられない。
「当ギルドではお客様の資産を確実に守るため、本人確認が確実にできる魔力認証システムを採用しております。このシステムはお客様のお名前と魔力をセットで記録して本人確認できるようにしたものです」
魔力は指紋や氷の結晶のように同じものがひとつとしてない。それを利用したシステムという事だろう。
「こちらの記録結晶に魔力を流してください」
記録結晶は一度流した魔力以外は受け付けないというクセの強い鉱物で使い道があまりない事で有名な鉱物らしいのだが、こういう使い方もあるんだな。
俺たち3人はそれぞれの記録結晶に魔力を流した。
「これで登録は完了です。それでは金貨百枚お預かりしますがよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします」
俺はエリナに頼んで影からお金を出してもらう。
エリナの話もゲイルさんから聞いているようで、アルフレッドさんは驚かない。
「確かにお預かりしました。御三方の口座は共用としておくのでどなたがいらっしゃってもお使いになれます」
「わかりました。今日はありがとうございました」
「はい、またのご利用をお待ちしております」
俺たちは応接室から出て銀行ギルドを後にする。
最後まで礼儀正しい人だったな、アルフレッドさん。
ああいう人が人の上に立つのは分かるんだが、ゲイルさんが人の上に立つってのはやっぱり違和感があるんだよな。
あの若さでギルドマスターやってるってことは多分かなりの実力者だと思うんだがな。
「次はお役所の近くの高級宿屋だね。そこに行けばお姫様に会えるんだよね?」
「ああ、そうだ。だけど行く前に花を買って行こう。お見舞いの品が何もないと流石にまずいし」
俺の圧に当てられて姫様たちは倒れたから俺たちの責任と言えなくもないんだが、そこは人助けをしようという気持ちが根底にあるからいいだろう。
しかし罪の意識が無いわけでもないので俺たちは花屋でお見舞い用に花束を作ってもらってから姫様がいる宿屋に向かう事した。
宿屋に入ると俺は受付で姫様がいる部屋に通してくれるようにお願いした。
案の定、疑われたがミレットさんからもらった地図と一緒にゲイルさん直筆の手紙があったのでそれを渡すと簡単に通してくれた。
姫様の部屋についたのでノックする。
「はーい、空いてますからどうぞ」
姫様からお許しを頂いたので俺たちは中に入る。
「姫様こんにちは。お体はもう大丈夫ですか?」
「ハヤトさんとミルさん、来てくださったのですね!あら?もう一人方はどなたですか?」
「王女殿下、お初にお目にかかります。エリナ・ブラッドと申します、どうぞよろしくお願いします」
こいつ丁寧な言い方も出来るんじゃねえか。いつも普通にしてりゃいいのに。
「まあ!北の吸血鬼王の御息女様だったんですね。これは失礼しました、リリーシャ・フォン・アストレアスです。こちらこそどうぞよろしくお願いします」
「エリナはたまたまあのダンジョンに来たみたいで、俺たちを助けてくれたんですよ」
「そうなんですか!皆さんありがとうございました。お陰様でもう体は大丈夫そうです。今日中に王都に出発できるそうです」
「そうなんですか。これ、花束です」
「ありがとうございます。やはりハヤトさんを助けて良かったです……巡り巡って自分に返ってくる。これは父の教えなんですよ」
流石アレス王、いいこと言う人だ。
「今までも今回みたいな事、あったんですか?」
姫様は笑い出した。
「こんな事何回もあるわけないじゃないですか。しかも今回のはたまたま遭遇しちゃっただけですよ?狙われたわけじゃありません」
じゃあエギルは偶然会った王女様を誘拐したって事か。なんて計画性のない奴だ。
何かもっと大きな計画が背景にあってそれを解決していくって感じなら少しはやる気も出るのになぁ。
「じゃあ俺たちはこれで帰ります。長居しても姫様によくないでしょう?」
俺が言うと姫様が急に顔を赤くした。
「ま、待ってください!……そ、そのまた来てもいいでしょうか?皆さんと仲良くなりたいんです。私あまり友達がいなくて……」
この国の全土は王家が一括で管理している。つまり貴族がいない。
だから同年代の女の子と言えば他国の御令嬢という事になる。
「ええ、もちろんです。今度この街に来たときにはぜひ会いに来てください!」
「本当ですか!ありがとうございます!絶対遊びにいきますから!」
俺たちはさよならを言って部屋を後にする。
姫様も年相応の女の子というわけか。
ミルやエリナのような女友達が欲しかったんだろう……あれ?俺いらなくね?
次は待ちに待った買い物だ。
実はこの街に来てから俺だけで不動産屋にはいたが一回行った事がある。
そのときにもう何件か目星を付けてある。だから今回は実際には家を見せてもらえればいいという事だ。
不動産屋に着いた。
「おっさん!今日は家を見せてもらいに来たぜ」
「いらっしゃい!……って、この間のあんちゃんかよ……それでお金は貯まったのか?もし貯まってるなら特別に金貨八十枚でどんな高い物件でも買わせてやるよ」
この野郎、俺の足元見てニヤニヤしやがって!
どうせこんな若造が金貨八十枚も持ってるわけないと思っているのだろう。
しかし今の俺は違うぞ?
「今、言質取ったからな?」
「あんちゃん、ハッタリはよせよ?女の子を連れてるからって見栄を張らなくてもいいんだぜ?」
完全に勝った!俺は思わず笑ってしまった。
「な、なんだよ?……ま、まさか本当に金貨八十枚あんのかよ!?」
「そのまさかだよ、おっさん!俺の総資産は約金貨百十枚だ!」
「な、ななな、なんだとぉぉぉ!!?」
「どうやって稼いだのかは秘密だが、銀行に行けば分かるぞ?さぁ今すぐ行こうか?」
本当なら俺が買おうとしていた物件は金貨百枚くらいするものなんだが20%引きだ!
「……いや待てよ、あんちゃん。この短期間でそんなに稼げるわけねぇだろ?今なら笑い話で許してやる。本当の事を話せよ」
まぁ普通信じないよな。お金預けなきゃ良かった。
これじゃあとんぼ返りになるが、まぁいい。それで激安価格で買えるんだから。
「じゃあ銀行まで来てもらおうか?」
「わかった、わかった。その茶番付き合ってやるよ。だが、本当にお金がなかったら今夜一食分なんか奢ってもらうからな?」
「おっさん、後で泣くなよ?」
というわけで俺たちは銀行へとんぼ返り。ミルとエリナは茶番に付き合わされてうんざりしていたが金のために我慢してもらった。
そして銀行で引き出した金貨を見せるとおっさんは号泣した。『今年は赤字になるぅぅぅ!!』とガチで泣いていた。
いい年した大人が号泣というのは中々に酷いもので周りの人はドン引きしていた。
しかし!他の人の評価はともかく約束を守ってくれるいいおっさんだったので、俺の中での株は急上昇中である。
おっさんと店に戻ると心の準備をするからと俺が見たいと言った該当物件の鍵だけ渡して奥の部屋に行ってしまった。なんか本当にすまん。
何はともあれ物件巡りスタートだ。
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。
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