家族になろう
「どうしたのじゃ?……えっ!?」
俺はまず叫んだ。
「こんな種族名があるかぁぁぁ!!」
これはもう後戻りできないんじゃないか!?
だってもどきって、こんなのってあるか!?
しかし、ここで俺はある事を思い出した。
エリナが俺に行ったのは食事の方のはずだ、眷属づくりの方じゃない。
「おい!!エリナ!こりゃどういうことなんだ!お前がしたのは食事じゃなかったのか!?」
「いや……食事だったはずじゃ。だがお前が人間ではなくなりかけているのも事実……」
そこで俺はある考えが思い浮かんだ。
「……エリナ、お前どれくらい家族と会ってないんだ?いや家族じゃなくてもいい。同族の吸血鬼と最後にいつ会った?」
「……だいたい五年前じゃ。それがどうかしたか?」
やっぱりだ。そして多分俺の予想が正しければ……。
「お前が最後に家族と会ったときって、親が死んだときだろ?」
「なぜそれを知っている!?」
エリナがとても驚いた顔をする。
こいつが両親の話をしたときなんだか暗い感じがした。
俺は母さんが小さい頃に亡くなっていて、なんだか妹が母さんの話をするときの顔に似ていた。
そして俺は気づいた。
「お前、家族が欲しかったんだろ?だから俺を眷属にしようとした。途中で邪魔されて眷属にしきれないと分かっていて。そうだろ?」
「……」
「お前が両親の話をしたときなんだか、暗かった。俺も母さんを亡くしていてな。母さんの話をするときの妹と同じ顔をしてたよ」
こいつはただ寂しかっただけなんだろう。純粋に家族が欲しかった。
俺も母さんがいなくて寂しいと思ったことが何回もあった。
別に表面的なところで言えば食事のつもりだったのだろう。
だが、心の深いところではきっと家族を欲しがっていた。
そして、うってつけだったのが眷属づくりだった。
エリナは言った。
「……自殺じゃった。吸血鬼は……吸血鬼という種族は大きな呪いとも言うべきものにかかっておる……それが不死じゃ。不死故に吸血鬼のほとんどは五百年ほどで生きるのに飽きてしまうそうじゃ。それに今の世の中は吸血鬼にとって生きづらい。だから母上は六芒星の儀をかけた聖水を飲んで死んだらしい」
自殺か。らしいということは多分母親の最期には立ち会えなかったのだろう。
眷属にされるのは堪ったもんじゃない。
それでも、それ故に俺はエリナの気持ちが分かっている。同情出来過ぎてしまっている。
それなら俺のできることはもうひとつしかない。
「その……なんだ、俺も母親を亡くしているし、その気持ちがわかるんだ。だから……俺たちは家族みたいになれるんじゃないか?眷属にはなりたくないし、親密になるのにも時間が掛かる。それにわかり合えないところもあるだろう。だけど俺たちなりに家族になろう」
きっとミルもなってくれるしな、と付け加えた。
「すまなかった……あと、その……ありがとう!」
そう言ってエリナは涙を流しながら笑った。
しかし本当にこの体、どうしよう。これって治るもんなのかな?また問題が一つ増えた。
なんだかとんでもなく恥ずかしい発言をしてしまった気がするが、この体質のことも含めてミルに相談しよう。
話が済んだ俺たちはとりあえず倒れている五人に例の魔法をかけて影の中に入れた。
その他には特に何もなかったので奥の部屋を後にした。
大きな部屋に戻るとミルが姫様を起こしていた。
こっちもまだ起きないらしい。
「おいミル、やっぱり姫様起きないか?」
「やっぱりってことはハヤトの方も起きてくれなかったんだね」
俺はここでエリナが姫様を影に収納できることを話した。そうするとミルはその手があったか、と言って影収納案に賛成した。
姫様一行に目立った外傷はなかったが、中身がどうなっているか分かったものではないので、姫様を影に入れると帰路を急いだ。
具体的には人間もどきの俺よりステータスの高いエリナがミルをおんぶするという方法だ。
今やミルは三人の中じゃ、ダントツでステータスが低いので進行速度に差が出てしまうからだ。
エリナは最後までめんどくさがっていたが人助けということで頑張ってもらうことにした。
そんな感じでダンジョンを出ると日が暮れかけていた。これ以上、森にいると暗くなって動けなくなるので俺たちは急いで街まで走った。
ここで俺は不覚にもこの体を便利だと感じてしまった。だって全然疲れないし、速度だって前より上がっている。
ここで俺はエリナが街に入れるか気になったので聞く事にした。
一応魔物だしその辺どうなのかなと思ったからだ。
すると果たして答えは『普通に入れるんじゃが、民衆の理解はそこまでないようで嫌そうな顔をされる』らしい。
街に着くともう日が暮れてしまっていた。
俺たちはギルドに駆け込む。
そして俺とエリナは地球で言えば十数キロ走り続けていて流石に息が切れかかっているのでミルが受付嬢に頼んで応接室に通してもらうよう頼んだ。
俺とエリナが息を切らしたいるのを見てただ事ではないと感じ取ってくれたようで簡単に通してくれた。
「一体どうしたんですか?そんなに息を切らして」
この人はいつもの受付嬢さんだ。
今まで気にした事がなかったがミレットさんと言うらしい。
ミルが一連の騒動を要約して説明する。
しかし、ミレットさんは最初は驚いた感じだったが、だんだん呆れたような顔をし始めた。
ミルが話を終えるとミレットさんがため息をついて言った。
「はっきり申し上げてしまうと私はこのお話を信じる事ができません。『五素の悪魔』だの、吸血鬼王だの、果てには王女殿下を助けたと仰るんですから。第一、先に挙げた方の誰もいないじゃないですか。あと、最後の王女殿下の話、下手したら不敬罪ですよ?注意して下さいね」
ミレットさんは言いたい事だけ言って、ではこれで、と帰ってしまいそうになる。
証拠がないって……あ、そうかミルは影に全員しまってあること言ってなかったからだ。
抜けてるところあるよな、こいつ。
「待って下さい!証拠ならあります!」
そう言って俺はエリナを促す。
めんどくさいのう、とか言いながら影の中に手を突っ込み出す。
「まだ言うんですか?これでも結構いそが……は?」
エリナがぽいぽいと人を出しては並べていく。部屋が倒れた人で狭くなる。
ミレットさんは絶句している。
そりゃあそうだろう、影の中から人が出てくるんだから。
「ひ、人を呼んできます!!」
ミレットさんはしばらくすると正気に戻ったようで、そう言って外へ出て行ってしまった。
しかしどうなるのだろう。
現金な話をすると多分エギルには懸賞金などがかかっていて結構な収入になるだろう。
それに姫様一行を助けたことに対する褒賞金も出るかもしれない。
そうすると当初の目的である装備を揃えるどころか、家とかまで買える可能性まで出てきた。
「本当にどうすっかな」
「なんじゃ?体のことが?」
声に出ちゃってたか?
「違う違う。ほら今回エギル倒したり、姫様助けたりしたろ?そうなるとお金が入ってくるんじゃないかなと」
そういえばエリナには何でダンジョンに来てたかを話してなかったな。
というわけで装備などを買い揃えるためにダンジョン探索の依頼を受けたことをエリナに話しておく。
「なるほどな、ハヤトたちは金が欲しかったのか」
「まぁそういうこと。で、だ。ぶっちゃけ懸賞金とかってどれくらい貰えるか分かるか?」
この辺のことは俺やミルは分からない。
そんなに長くこの世界で暮らしてないからな。
「そうじゃなぁ……わしにも詳しくは分からんが魔王軍じゃったら幹部級……そうなると金貨数十枚から百枚くらいかのう?」
そんな話をしているとドアをノックする音が聞こえてくる。それからすぐに三十代くらいの男性が入ってきた。
「はい、お待たせしました。ここのギルドマスターのゲイルです。よろしく」
この度は「異世界転生したのに魔王がいません!」を読んで頂きありがとうございます。
趣味で初めて書く小説ですので、拙い部分がかなりあると思います。
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