私は考える
今回はリリー目線です。
目を開けるとそこは以前の遺跡とは同様に洞窟のようになっていた。
しかし、以前と違うところを挙げるなら、メンバーが私とトウカさんとオルクスさん、ということだろう。
分断は予想の範囲内、落ち着いて対処して行けば大丈夫だろう。
「見事に分断されたね。他がどうなってるかは分からないけど、とりあえず進んでみよう」
と、オルクスさんが歩き出した瞬間、罠が発動したようで、鋭い矢が左右の壁から放たれる。
しかし、それはトウカさんの刀に阻まれる。
「守ってくれてありがとう。だけど、次からは守らなくていいよ。今君達にも物理障壁と魔法障壁を張ったからね」
そう言って、さっさと歩いて行くオルクスさん。
手のひら大の魔力弾、剣などが凄まじい速さで飛んでくるが、障壁はそれらを一切通さない。
落とし穴の罠に全員が掛かってしまった時も、オルクスさんの飛行魔法で切り抜けた。
もうこの人が居れば、私なんて要らないんじゃないかと思えてくる。
「貴方達が侵入者ですね。ここから先は一歩も通しません」
第五層、そこは大広間になっており、その中央に堂々と立っているのが、今喋った女性だ。
恐らく『黎明人類』だろう。
「そうも行きません。貴女達のやっていることは私達からしたら不都合なんです。ですから大人しく引き下がるか、ここで殺されてください」
この兄妹はどうしてこう、悪人のように振る舞うのか。
トウカさんの言葉を聞いた女性は突然笑い出す。
「お父様に聞き及んでいた通りの傲慢さですね。ここまでくると笑えてきます」
「ええ、少なくとも私は自分の傲慢で貴女を殺そうとしています。しかし、それは貴女達がやろうとしていることと何が違うんですか?」
すると今度は怒りに顔を歪ませて、叫ぶように言う。
「私達がやろうとしているのは、自分達の世界を取り戻すという正当な理由があっての物だ!貴女達と一緒にしないで頂きたい!」
「しかし、残念ながら私達にも自分達の世界を守るという正当な理由がある。ほら、水掛け論でしょう?結局、どちらが傲慢かなんて話はとうの昔に意味が無くなってるんですよ。ここにあるのは貴女が死ぬか、私達が死ぬか。大局的に見れば、貴女達『黎明人類』が支配階級を根絶やしにするか、私達が貴女達『黎明人類』を根絶やしにするかのどちらかなんですよ」
女性の怒りはピークに達したようで、もう何も言わずに剣を抜いている。
剣のタイプは細剣、スピードタイプだろう。
「最後に何か遺言はありま――」
ぼとっ、という大きめの物が落ちる音。
「僕もここに来るまでにある程度の覚悟をして来ている。こうして話の流れをぶった斬って、相手に呪われるような殺し方をする覚悟をね。次の階層に移ろう。時間が惜しい」
私はさっきまで喋っていた女性の亡骸を見て、何とも言えない気持ちになる。
支配階級を滅ぼそうとして起きた革命。
その怨嗟は現在にまで続き、こうして私達の目の前に現れている。
彼女達も分かっているのだ。
直接追いやられた先祖ももう居なければ、先祖を追いやった人間達の先祖ももう居ないのだと。
しかし、行き場のない怒り、憎しみを何代にも渡って継承し、その思いをぶつける機会を得た彼女達を平和的に止める手立てはない。
皮肉なことに、私達側、彼女達側、どちらの目的を達成するのにも、先祖達がやったことを繰り返さなければならないのだ。
巡り巡る怨嗟の果て。
それはどちらかが完全に根絶やしにされること。
今、私達はそれを果たそうとしている。
損な役回りだとは思わない。
私だって支配階級の一員だから。果たさなければならない義務なのだ。
後世にこんな事を起こさせないようにする為に、私は彼女の亡骸を見て、考えるのだ。
最後に私は彼女の亡骸を弔う。
それを見たオルクスさんは地獄の炎を放つ。
炎は全てを焼き尽くし、残った物は何もなかった。
最下層では三人の『黎明人類』が待ち受けていたが、同じような話をした末、オルクスさんが一瞬で殺してしまった。
私は結局、彼等と言葉を交わすことさえ出来なかった。
ハヤトさんに会いたい――今はただそれだけだった。




